Menu
(0)

Search

【『ローグ・ワン』最速レビュー】皆安心してくれ!ローグ・ワンは史上最高のスター・ウォーズだぞ!【ネタバレ無し】

2016年12月16日(金)、ついにスター・ウォーズ シリーズ最新作となる『ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー』が全国公開される。
『エピソード3 シスの復讐』と『エピソード4 新たなる希望』の中間を描く本作は、『新たなる希望』オープニング・クロールにあった、

反乱軍のスパイは帝国の究極兵器に関する秘密の設計図を盗み出すことに成功した。

というたったの一文の間に、どのような壮絶な物語があったかが明かされる作品だ。2015年末公開の『エピソード7 フォースの覚醒』とは異なり、往年のスター・ウォーズ・ファンが馴染みの世界観で新たに語られる新エピソードとして、全スター・ウォーズ・ファンがずっと公開を待ち焦がれてきたとても特別な作品だ。

そんなありとあらゆる人間の愛と情熱を一身に集めるこの超話題作を、筆者はいち早く試写会にて全編を鑑賞する機会に恵まれた。この興奮を、この素晴らしさを皆さんに伝えなければならない。今回は、『ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー』のレビューを日本最速でお届けする。

なお、当然ながらいかなるネタバレ描写も一切含んでいない。スター・ウォーズともなる超大作だ。こんなところでうかつにネタバレしてしまっては命の危険さえありうる。登場人物やシーンの内容には一切触れず、ただただローグ・ワンの期待感をより高めるためだけのレビュー内容となっているので、安心してお読みいただければと思う。

過去最高にスター・ウォーズをやっていた

これは筆者がずっと思っていたことだが、日本でのマーケティングにおいて本作は『もう一つのスター・ウォーズ』と謳われていたが、本作を鑑賞して改めてその想いを強めたのが、このキャッチコピーはとんでもないミスリードであるということだ。
『ローグ・ワン』は決して『もう一つの』扱いするものでも、ましてや『アナザー・ストーリー』などでもない。めちゃくちゃスター・ウォーズだった。

それは、『新たなる希望』直前という、クラシック三部作と地続きの世界観であることや、予告編にも出現するダース・ベイダーなど馴染みのキャラクターが登場するからといった理由もあるが、プリクエル三部作と『フォースの覚醒』以上に『スター・ウォーズのお作法』とも言える要素がふんだんに、かつ丁寧に盛り込まれていたからである。予告編にもある南国の惑星スカリフでの地上戦やその上空でのX-ウイングらが飛び回るドッグファイトなどは、「これだよ!俺たちが観たかったスター・ウォーズは!」と思わず劇場で握り拳を突き上げたくなるほどに、あっぱれな映像であった。

『ローグ・ワン』は、往年のスター・ウォーズ・ファンたちが持つノスタルジアを、最新鋭の技術と最大限の愛を持ってこの2016年に蘇らせている。スター・ウォーズにはさまざまな強いこだわりと思想を持ったコアなファンが大勢いるが、そんな方たちにとっても間違いなく今作は『スター・ウォーズ史上トップスリー』には余裕で仲間入りをすることをここに保証したい。

ファンにとって『フォースの覚醒』を越える満足度であることは間違いない

『エピソード7 フォースの覚醒』は、エピソード1から6までの流れを踏襲しながら、新たなサーガを生み出し、壮大なロマンを次世代に受け継ぐという点においてはこの上なく成功していた作品だと思う。一方で、『同窓会映画』と揶揄されてしまったり、レイやカイロ・レン、BB-8など『あぁ、スター・ウォーズもディズニー傘下となるとこんな感じに収まるんだなぁ』と思ってしまうような、少々『少年少女向け』な部分があったのも否めない。(もちろん、それはそれで素晴らしいことだと思うが。)

だが、『ローグ・ワン』は違う。製作段階から『世界観がダークすぎてディズニーが大部分の取り直しを命じた』という噂が世界的に広まったことからわかるように、ハードに洗練された大人向けの映画としての表情が強い。あのスター・ウォーズの世界観を、ただひたすら戦争映画の文脈で映像化したらこうなるよ、というようなテイストに仕上がっている。筆者が『過去最高にスター・ウォーズをやっていた』と主張するのはそういう意味である。スター・ウォーズの”ウォーズ(戦争)”の部分を、遠い昔の遥か彼方の銀河系の上で、とにかく観客の胸が熱くなるような展開と映像をこれでもかとブチこんで作ってみたら、結果として『ローグ・ワン』という名前の、過去最高に美しいスター・ウォーズ作品が出来上がっていたのだ。

『ローグ・ワン』は、『フォースの覚醒』で感じた「これはこれでいいんだけど、でもなんか物足りない」という部分を、100%、いや、300%のボルテージで描いてくれている。

僕たちが観ていたスター・ウォーズは、壮大なサーガのほんの一部に過ぎなかった

気が遠くなるほど緻密で詳細な設定に裏打ちされたスター・ウォーズの世界は広大な拡張性を有しており、それこそがスター・ウォーズがこれほどまでに支持される最大の理由だ。このスペース・オペラの文脈においては、『私の知っているスター・ウォーズと、あなたの知っているスター・ウォーズは全然違う』という多面性がしばしば起こる。『ローグ・ワン』は、このユニークな特徴に更なる深みと広がりを与えてくれる作品だ。

共和国の崩壊とダース・ベイダー誕生を描いたプリクエル三部作、ルークとベイダーの親子対決と打倒帝国軍を描いたクラシック三部作、そしてファースト・オーダー誕生後、新世代の冒険を描く新三部作。多くのファンにとって、スター・ウォーズの概念はおおよそこの7作の上で成り立っていた。(もちろん『クローン・ウォーズ』や『反乱者たち』、スピンオフ小説などの存在を決して無視する意図はない。)

ところが、『ローグ・ワン』を鑑賞した後はどうだろう。これまで僕たちが愛し、慣れ親しんできたスター・ウォーズの世界は、あの広大な世界のほんの一部でしかなかったのだと思い知らされる。ベイダーやルークといった英雄たちは、あの銀河の単なる”いち登場人物”に過ぎなかったのだと。

ルーカスフィルム社長のキャスリーン・ケネディは、今後のスター・ウォーズ・ユニバースを構築するにあたって『拡張性』を強調していたが、これには参りましたと言う他ない。『ローグ・ワン』は、『フォースの覚醒』以上に新しいスター・ウォーズをもたらしてくれている。

プリクエル3本分の衝撃

これまでスター・ウォーズは、『先に結末を描き、後に続く作品でその裏付けを行う』という手法でストーリー・テリングに革命を起こした。たとえば、『エピソード6 ジェダイの帰還』のサブタイトルには、ベイダー誕生を描いたプリクエル三部作を観た後には全く違う意味合いが灯されることになった。特にベイダーを取り巻く物語やセリフは、アナキンの物語ありきで見ると哀しい二面性が生み出されるという、巧妙な”しかけ”があった。

『ローグ・ワン』は、『新たなる希望』に対して、これ一本で同じことをやってのけた。『ジェダイの帰還』に二重の意味がもたらされたように、『新たなる希望』という副題にも、また違った解釈を見いだせるようになるだろう。
ぜひ、『ローグ・ワン』の鑑賞を終えたら、なるべく時間を空けずにすぐ『新たなる希望』を鑑賞してほしい。オープニングクロールの文章の時点で、全く新しい気持ちで観ることができるはずだ。

まるで『新たなる希望』は、はじめから『ローグ・ワン』に合わせて作られていたのではないかと誰もが錯覚してしまうに違いない。

とにかく安心して劇場に足を運んで欲しい

『ローグ・ワン』は、先述したように製作段階からディズニーが大規模な取り直しを命じたとか(記事)、その余波で作曲家のアレクサンドル・デスプラが降板し、代わりにマイケル・ジアッキーノが急遽採用され、10月時点で未だ楽曲製作中だったとか(記事)、待ち焦がれるファンらが不安になるようなニュースが相次いでいた。一部では、『ゴジラ』(2014)くらいしか大作映画の経験がないギャレス・エドワーズ監督の手腕を不安視する声もあった。

『ローグワン』を鑑賞した今では、12パーセクで助走を付けてギャレス監督にジャンピング土下座をしたい。本作は、最高のスター・ウォーズだった。ファンの喜ぶ要素は大小くまなく散りばめ(それも上品に、かつ自然に)、それでいてこれまでスター・ウォーズを観たことがない観客でも全く違和感なく楽しめる一本の良作映画としても十分成立している。このバランス感覚はあまりにも見事だ。中盤、若干の中だるみは感じたが、クライマックスにかけては本当に顎がはずれるような胸が熱くなる仕掛けが数多くあった。公開初日やその後の数日間、本当のファンたちで埋まった劇場内では、劇中のいたるところで驚きや感嘆の声、歓喜の拍手が沸き起こると確信している。ファンの気持ちにしっかり応えるサプライズが用意されている。そして、12月16日以降はしばらく、世界中のスター・ウォーズ・ファンの間でお祭り騒ぎになるだろう。「ローグ・ワンは最高だった」「ギャレス・エドワーズはやってくれた」と。

『ローグ・ワン』には、何度でも観たくなるような極めて強い魅力と中毒性がある。あなたは、一度でも観てしまえば、『ローグ・ワン禁断症状』に苦しむことになるので覚悟してほしい。それから、実際に鑑賞するまでは、ネット回線を遮断していかなるネタバレ情報も目に入らないようにした方がいいかもしれない。絶対にネタバレできない戦いが、そこにある。

この年末年始、あと何度劇場に通えばいいのか想像もつかない。とにかく、本当に安心して劇場に足を運んで欲しい。予告編で明かされている内容や、ネットなどであれこれ交わされている噂は、この最高傑作のほんのわずかな一要素にすぎない。

『ローグ・ワン』は、過去最高にスター・ウォーズをやっていた。こんな作品をリアルタイムで観られる時代に生きていることは、とんでもなく幸福である。

スター・ウォーズ キャンペーン

Eyecatch Image:http://spirit–of-adventure.deviantart.com/art/Rogue-One-Wallpaper-Textless-theatrical-poster-642994428
(C)2016 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。