『レディ・プレイヤー1』スピルバーグ監督「4~5時間睡眠、明日やる事ずっと考えていた」 ─ 止まぬ創作意欲の源とは

今なお映画史に残る名作をリアルタイムで生み続ける巨匠、スティーブン・スピルバーグ。自身の過去作を象徴するキャラクターも数多く登場する集大成的な大作『レディ・プレイヤー1』が、2018年4月20日より日本公開となった。
御年71歳(2018年現在)。なぜ、スピルバーグは止まること無く精力的でいられるのか。映画史上最高のストーリーテラーが、英EMPIRE誌に向けてそのヒントとなる言葉を残している。
「明日やることをずっと考えていた」
スピルバーグによれば、『レディ・プレイヤー1』は『ジョーズ』(1975)『プライベート・ライアン』(1998)に継ぐほどの難産だったという。「未だ挑戦したことのない新技術に挑まなければならなかった」という今作では、「製作しながら、どうやって製作すべきかを模索しなければなりませんでした。トライ・アンド・エラーの連続でしたよ」と振り返る。
この製作期間中、スピルバーグの頭の中は作品のことで一杯だった。「一日4~5時間しか眠りませんでした。明日やることをずっと考えていましたから。おそらく、僕が手がけた映画の中でも最も睡眠時間を削られた作品ですね。」
加齢も無視できない。今作の製作時69歳だったスピルバーグは、「もしも29歳当時の自分だったら、もっと楽に作れただろうか?」と何度も自問することがあったという。
「きっと答えは複雑で、29歳の自分だったらどうして良いか分からなくなっていると思う。今の自分には多くの経験が蓄積されているからこそ、”今こそこの物語を伝えるべきなんだ”と胸を張れる。だから29歳当時に作っていたとしても、69歳の今と同じくらい苦労したと思いますよ。子犬のほうが老犬より体力を消耗しやすいようなもの。子犬はそこら中を走り回って、疲れて眠ってしまうでしょう。老犬の方が距離感覚をわきまえていますよね。老犬ならではの経験則というものがあるんですよ。」
スピルバーグは、『レディ・プレイヤー1』の製作と同時期に『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2018)も作り上げてみせた。トム・ハンクス、メリル・ストリープという2大オスカー俳優が初共演を果たした今作でスピルバーグは、思い立ってから僅か9ヶ月で完成。アカデミー作品賞・主演女優賞へノミネートも果たした。
「僕はただ、物語を伝えるだけ。『ペンタゴン・ペーパーズ』は1971年の出来事ですけど、今この時代に伝えることに意義があると思った。今言うべき重要な物事があるんです。」
「映画は週4~5本観るようにしている」
スピルバーグという映画監督は、代表作を挙げろという方が難しい。『ジョーズ』、『E.T.』(1982)、『ジュラシック・パーク』(1993)…ほか、省略もはばかれるような名作・傑作の数々が、数え切れぬほど存在する。映画界に多大過ぎるほどの影響を与えるスピルバーグだが、自身も他の作品から「自分の影響」を感じることがあるのだという。特に最近のお気に入りは、Netflixドラマ『ストレンジャー・シングス』だ。
「大ファンなんです。特にシーズン2ですね。上手く出来てるドラマだから、どうも褒めたくなっちゃう。ザ・ダファー・ブラザーズ(製作)とショーン・レヴィ(監督)は、ワザを盗んだなんてものじゃない。ワザを編み出しているんです。」
なぜ、スピルバーグは止まること無く精力的でいられるのか。「今この物語を伝えたい」と突き動かされる使命感も大きいはずだが、やはりエンターテインメントを愛して止まない精神によるものが最も大きいだろう。インタビュワーに「(映画業界に)ずっと携わられている理由は、きっと色々なものをご覧になっているからでしょうね」と尋ねられたスピルバーグは、以下のように答えている。
「そうですね。TVはかなり観ています。ミニ・シリーズ(ドラマ)も観ています。出来る限り映画も観るようにしていて、週に4~5本くらいかな。映画館に行くと、現実の世界が飛んで消えて、物語だけがそこに存在するじゃないですか。これほどの喜びは他にありませんよ。」
スピルバーグが抱くこの感覚を、究極のVR体験を通じて豪華映像化した夢の一作『レディ・プレイヤー1』は、2018年4月20日(金)全国公開。
『レディ・プレイヤー1』公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/
Source:EMPIRE APRIL 2018 ,Eyecatch Image:Gage Skidmore