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実写ドラマ化も話題の『三体』とは何か?早川書房編集者が語る「海外SFとして異例の盛り上がり」

史上最大級のSFドラマに備えよ。話題沸騰の中国SF小説三体が、2023年にNetflixで実写ドラマ化を果たす。初解禁された映像は、すでにファンの間で大きな話題となった。

『三体』(実写ドラマ版原題は「3 Body Problem」)は劉慈欣による小説。ニュートン力学の「三体問題」を一つの題材に、地球より遥かに進んだ文明を持つ「三体星人」と人類による、数世紀にまたがる戦いを描く作品だ。かつてない規模の物語に、バラク・オバマ米前大統領ら著名人らがこぞって愛読。「ゲーム・オブ・スローンズ」製作陣らとNetflixによって実写映像化されることは、ある意味当然の帰結だ。

中国のSF作品ということで、(筆者がそうだったように)馴染みのない方はとっつきにいと思われるかもしれない。しかし読み進めるうち、その想像を絶するスケール感と胸を焦がすロマンチックな展開、手に汗握ってページを湿らせるほどの熱いドラマにすっかり沼落ち。筆者はいよいよドラマ化が待ちきれなくなると、この作品の興奮をTHE RIVER読者にもぜひ共有したいと考え、『三体』邦訳版の編集を担当した早川書房の梅田麻莉絵氏に独自に取材を申し入れた。

『三体』異例の大ブーム

『三体』本編は全3篇で、『三体II 黒暗森林』と『三体III 死神永生』は上下巻に分かれているため、全部で5冊ある。第1巻の邦訳版を2019年7月に発刊すると、国内のSFファンの間で大きな話題を呼び、たちまち13万部を突破した。「それが最初の波でした」と振り返る梅田氏によれば、本作は第2、第3のブームの波が続く異例の話題作になったという。

第2の波は2021年の冬。シリーズ完結作『三体III  死神永生』邦訳版を刊行した約半年後のことだ。人気テレビ番組『アメトーーク!』の「読書芸人」特集内で、ティモンディ・前田さんやカズレーザーさんが大絶賛したことで、話題に火がついた。新規に読み始める読者も増えたほか、購入したまま“積読”状態だった読者にとっても、「いよいよ読むか」とキッカケを与えた。

「そして、THE RIVERさんでもご紹介いただいたことで、ドラマ化の認知が広がったと思います」。2022年9月のイベントで解禁された、Netflixによる実写版ドラマの初映像だ。「どこよりも早く記事化いただいたのがTHE RIVERさんで、社内でも話題になりました。あの映像を観たことで、ドラマ化の関心が高まったと思います」。

どうなる映像化 「大きいSF」の野心

このドラマ版は、『三体III』に至るまでの全編の映像化にNetflixが挑む野心作。製作総指揮と脚本は、あの「ゲーム・オブ・スローンズ」で成功を収めたD・B・ワイス&デヴィッド・ベニオフ。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』監督ライアン・ジョンソンと、ブラッド・ピットもプロデュースに加わった。すでにシーズン1の撮影は済まされており、2023年の配信を目指して編集作業が進められている。

待望の映像化について梅田氏は、作中で存分に描かれる「大きいシーン」がいかに表現されるかが楽しみだと期待を語る。先のティザー映像の公開を受け、『三体』読者はこぞってSNSに感想を投稿した。多くはその忠実な再現度に驚く声だ。原作を読み進めている読者からは、日本刀を所持しているとあるキャラクターについて言及するものが多い。早川書房でもこうした読者の反応を気にしている。「すごくワクワクされて、みなさん盛り上がっていますね」と喜んだ。

『三体』の魅力とは何か。SFならではの壮大なスケール感を享受できることだと、梅田氏は感じた。「早川書房がこれまで刊行してきたような欧米SFとは、全く毛色が違うんです」と話す。

「近年の欧米SF作品は、登場人物が自分自身の存在理由を問うような、内省的な作品が多い。アイデンティティの問題ですとか、揺らぎを描いている作品が多いように思います。もちろん、そういった作品も素晴らしいんですけど、『三体』は全然違うんです。スケールがとにかく大きくて。

こういった作品は昔から『大きなSF』と呼ばれています。宇宙が舞台になったり、得体の知らない存在が人類に攻めてきたり……といった、スケールが大きい作品です。日本の作品でいうと、小松左京先生の『日本沈没』のようなSF作品ですね。

『三体』は、こうした作品を彷彿とさせます。難解なSFが多い昨今、ある種の懐かしさがある。若い層には新鮮に感じていただけると思います。ダイナミックで、力技でねじ伏せるようなところも楽しい。私自身、読んでみて『なんて壮大で、面白いんだ』と驚きました。」

『三体』の物語の大筋は、遠く離れた「三体文明」の地球襲来に備えた人類の戦いを、数百年単位で描くものだ。言わば「宇宙人襲来モノ」であるが、それだけではない。「かなり難易度の高い理論や、ミステリー要素が入っていたり、スケールの大きいSF要素が入っていたり。かと思えば童話の要素も導入される。さまざまなジャンルの楽しさが、どんどん入ってくる面白さがあります」。

中国で三部作合計2,100万部を超える爆発的ヒットを記録すると、ケン・リュウ(『紙の動物園』)による英訳版もヒューゴー賞長編小説部門をアジア人作家として初めて受賞。バラク・オバマ米前大統領、Facebook社CEOマーク・ザッカーバーグ、ジェームズ・キャメロン、小島秀夫といった本作の愛読者たちの名を見れば、その話題の大きさがよくわかるだろう。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューさせていただきました。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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