Menu
(0)

Search

スカーレット・ウィッチこそ、『シビルウォー』で最も共感でき、MCUに確変をもたらす存在だ

映画『シビルウォー / キャプテン・アメリカ』でエリザベス・オルセン演じるスカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフは、『シビルウォー』内でも重要なキャラクターであるが、マーベル・シネマティック・ユニバース全体でも大きなインパクトをもたらすキャラクターであり、最も共感しやすいキャラクターでないかと思う。
この記事では、そんなスカーレット・ウィッチのMCUでの存在意義について考える。なお、『シビルウォー / キャプテン・アメリカ』のほんのりネタバレ内容を含んでいるので注意してほしい。

ワンダ・マキシモフを演じたエリザベス・オルセンは1989年生まれの27歳であるが、MCUにおけるワンダは他のアベンジャーズの構成員と比較して未熟な存在として扱われ、監督のルッソ兄弟も彼女はまだ「ただの子供」だと表現している。
彼女は、自身の持つ能力の限界を知らず、自我のコントロールを失う可能性を危険視している。実際、原作コミックではスカーレット・ウィッチの現実確変能力が暴走し、マーベル・ユニバース全体を混乱に陥れた事もある。原作でのワンダはメンタルが弱く危険な存在として描かれており、その設定は実写映画においてもいくらか引き継がれているが、筆者は彼女こそ観客が最も感情移入しやすい「等身大」キャラクターなのではないかと感じた。
(アベンジャーズで最も理解しやすいキャラクターは、「自分は普通の人間」と自覚するホークアイことクリント・バートンだと思っていたが、なんだかんだ彼は強い信念を持つ立派なヒーローだと思う。)

最もリアルなキャラクター、ワンダ・マキシモフ

MCUにおける、サイコキネシスとマインドコントロールというワンダの能力は強力であり、使いこなせばアベンジャーズ最強クラスの戦闘能力になる事は間違いない。そんな彼女の能力がきっかけとなり、『シビルウォー』冒頭では大きな事故が発生し、結果として『ソコヴィア協定』の発足が決まってしまう。
彼女は大きなポテンシャルを秘めながらも、その扱う術がわからない。なんなら、指導できる人物もいない。キャップはパンチの打ち方を教えてくれるかもしれないし、トニー・スタークは兵器の作り方や扱い方を教えてくれるかもしれない。だがそれは不十分すぎるし、唯一近しい能力を持っているヴィジョンはそもそも人間でないために、まず人として分かり合う所からはじめなければならない。

僕達は、70年間氷漬けになって現代社会に蘇った時、元居た時代とのギャップに戸惑う気持ちはわからない。自ら開発した兵器で人命が奪われる様を見て、己の道徳心の在り方に悩む気持ちもわからない。
でも、自分の可能性の限界がどこにあるのか、誰にも指導されず、子供扱いされてしまう気持ち、自分の失敗が原因で他人に迷惑を起こしてしまう罪悪感。こういった経験は誰にも有りうるテーマである。
「お前は危険だから」とトニーに閉じ込められていた時のワンダの気持ちこそ、最も日常的で、見つけやすかった感情だったと思う。もちろん僕達はサイコキネシスやマインドコントロールは使えない。それでも、無限にも近い可能性をいかに対処すべきか思い悩んだ経験は、思春期の頃に多くの人が経験したのではないだろうか。

スカーレット・ウィッチと共にMCUは魔法の世界へ

もともとスカーレット・ウィッチはコミックでも重要なキャラクターであったが、前作『アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン』では覚悟の決まりきらない若者のような扱いであったのに対し、今回の『シビルウォー』ではストーリーテリング上の役割も広がっている。制作側にとっても、スカーレット・ウィッチの存在は拡張していきたいものなのではないかと推察している。なぜなら、今後のマーベル・シネマティック・ユニバースは、『ドクター・ストレンジ』『アベンジャーズ / インフィニティ・ウォー』をはじめとした、超常現象的な世界観に踏み入れていくので、スカーレット・ウィッチはその橋渡し的存在になり得るからだ。
もちろん、MCUにおけるファンタジー的な側面はすでに『マイティ・ソー』によって作り上げられていた。だが、ソーはそもそも地球の常識を凌駕したアズガルドという宇宙の彼方の神話的物語からやってきたキャラクターという事もあり、「まぁ、ソーならなんでもありだよね。雷神だしね。」という強引な解釈が許される部分もあった。

世界大戦や政治サスペンスを取り扱うキャプテン・アメリカや、テロリストらとの戦いを描くアイアンマンの「まぁまだ現実的」な世界観から少しずつ拡張しながら、『ドクター・ストレンジ』は思いっきりスピリチュアルな世界を描く。そして『アベンジャーズ / インフィニティ・ウォー』の詳細はまだわからないが、サノスとかいう人智を超えた紫ゴリラが無茶苦茶やる事を考えると、宇宙規模での戦闘も有りうるかもしれない。もはやキャプテン・アメリカの盾ポイポイとかアイアンマンのお手手ビームとかスパイダーマンの糸ブシューでは通用しない強敵がやってくることを考えると、スカーレット・ウィッチのパワーは数少ない対抗馬となりうる。

最も等身大のヒーロー、スカーレット・ウィッチが、最も強力な存在に成長していく。その成長を楽しみに待とうじゃないか。

※スカーレット・ウィッチの原作コミックでの設定・エピソードの紹介はコチラから↓

https://theriver.jp/scarlet-witch/

Eyecatch Image:http://geektyrant.com/news/new-details-on-scarlet-witchs-powers-and-connection-to-vision-in-civil-war

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。