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『セブン』4Kレストア版、「単純に画素数を増やせばいいという話ではない」「1年かかったのは、8Kスキャンからネガを作り直しているから」とフィンチャー

セブン
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デヴィッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピット主演の傑作スリラー映画『セブン』(1995)が、製作30周年を記念してIMAX上映される。フィンチャー自身が監修し、オリジナルのネガから4K修復をおこなった特別版での登場だ。

Varietyでは、1年もの期間を要した修復作業についてフィンチャー自身が語っている。「単純に画素数を増やせばいいという話ではないんです。1年かかったのは、8Kスキャンからネガを作り直しているから。現時点では最も解像度の高いマスターです」と言う。その膨大な作業量は、もはや「修復」ではなく「発掘」とさえ表現された。

作業のなかでは、画像がキレイになりすぎたゆえに、これまで見えていなかったものがうっかり見えてしまう事態も起きたという。映画の冒頭、ブラッド・ピット演じるミルズ刑事が、妻のトレイシー(グウィネス・パルトロウ)が横たわるベッドに腰かけるシーンでは、撮影中、窓の外に白いボードを置いて光を反射させていた。「フィルムやDVDでは窓の向こうが真っ白に見えるのが、4Kになるとボードがあることがわかってしまう。そこで、少しだけ調整を加えました。絶対に必要な調整ではありませんが、適切な対応だと思います」。

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『セブン』を撮ってからの30年間で、フィンチャーは自らが「まったく別の人間になった」と話す。「もしも今撮るのなら、きっと別の方法でやるだろうと思う部分はいくつかあります。暴力的な映画を取りまく状況も大きく変わったから」。しかし、スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカスのように本編を修正することはしなかった。目指したのはオリジナルの製作中、最初の編集版を観て「この映画はこうあるべきだ」と感じたところに回帰することだったという。

「完璧主義、という発想を腹立たしく思うんです。たとえば画面の左側に何かが映っていたのが、高画質になると大問題になってしまう。背景にいる役者たちがおどけたり、拍を取ったりしているのが見えると、“うわっ、後ろで何をやってるんだ?”とも。だから、いろんなものが見えるようになるほど、本当に必要なことに集中してもらえるようにするのが監督の仕事なのだと感じました。」

ちなみに、フィンチャーはこうも語っている。「アンディ(アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー)の脚本は、私たちが直接見せたくないと考えていた暴力を想像するよう求める。観客を刺激し、煽りたて、彼ら自身で空白を埋めてもらうところが素晴らしかった」。どれだけ画面が美しくなっても、この映画に必要なのは観客の想像力なのだ。

映画『セブン』は2025年1月31日(金)よりIMAXシアターにて期間限定上映

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Source: Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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