「このペンを売ってみろ」『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の名場面はアドリブだった

「このペンを おれに売ってみろ」。映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の名場面だ。詐欺まがいの手法で、金融界で巨額を稼いだジョーダン・ベルフォートの、常軌を逸したビジネス半生を描いたマーティン・スコセッシ2013年の名作。レオナルド・ディカプリオが演じる主人公のベルフォートと、ジョン・バーンサルが演じるドラッグ売人ブラッドは、この場面でビジネスの極意を見せつける。
「このペンを おれに売ってみろ」の問いかけは、映画の終盤にも再登場する。波乱万丈を生き延びたベルフォートが、彼から金儲けのいろはを学ぼうと詰めかけた人々を相手にセミナーを行う場面である。受講者たちは「こ、これは素晴らしいペンで……」「このペンで人生の思い出を書けば……」「このペンは書きやすくて……」と、ありきたりでつまらない売り文句を次々と口にする。
どうすれば彼にペンをすんなりを売ることができるのか?すべてのビジネスマンにとって重要なヒントを示しながら、拍子抜けするほど単純なその答えは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』本編を観ていただくとして、ここでは同シーンにまつわる興味深い事実を紹介しよう。
「このペンを おれに売ってみろ」メソッドは、映画の序盤、ダイナーでベルフォートが集めた仲間に金儲けの魔力を解く場面で紹介され、映画の結末にも余韻をもたらす重要な描写。その“模範解答”を示す役となったジョン・バーンサルによれば、なんとキッカケはディカプリオによるアドリブだったのだという。バーンサルはこう説明している。
「あの日レオが現場入りする時に、ニューヨーク市警だった彼のセキュリティが、本物のジョーダン・ベルフォートと面接をしたことがあると言ったそうです。そこでレオが“そうなんですか?面接はどうでしたか?”と聞くと、彼がペンを取り出して“このペンを私に売ってみて”と言ったんだって」。
つまりディカプリオは、撮影直前になって仕入れた「ペンを売ってみろ」を、自らの判断で急遽シーンに入れたということだ。「レオは(撮影まで)誰にも言わなかった。いきなりあのシーンに採り入れたんです。すべては、そこから反応していったんですよ」とバーンサル。該当の場面ではバーンサルが演じた役が「ペンを売ってみろ」の模範解答を知っていたので、おそらくディカプリオは、バーンサルにのみ直前に共有して、撮影に入ったのだろう(スコセッシ監督に共有していたかは不明)。唐突かつ大胆な問いかけだったが、ケネス・チョイら他のキャストの自然な反応も見事である。
(ちなみに、ネット上に公開されている本作の脚本を確認すると、たしかに「このペンをおれに売ってみろ(Sell me this pen)」のセリフは映画の結末部分にしか登場しておらず、ダイナーのシーンではもっと手前の会話で途切れることになっている。)
ディカプリオの大胆なアドリブに応えたバーンサルは、「衝撃的だった」と話している。「次に何が起こるかわからない。僕の仕事のやり方を変えてくれました」。
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Source:First We Feast