平和ボケした日本人に衝撃を与える 映画『ボーダーライン』レビュー

映画『ボーダーライン』感想・レビュー

メキシコの麻薬組織撲滅のため ある作戦に参加することになったFBI捜査官 ケイト(エミリー・ブラント)の姿を、ぼくらの生きている現実でも起きているであろうリアルを描いた作品だ。

この作品に限ったことではないが、邦題である「ボーダーライン」は観客を誤った方向へ誘導していないだろうか。

国境や正義の在り方などに当てはめた上でのネーミングなのだろうが、その境目で激しく揺れ動く人間の葛藤や心の問題に焦点が当たるストーリーだと想定してしまう。

それらは一応描かれてはいるが、この作品の焦点はそこではないはずだ。

原題は「Sicario」
物語冒頭でも説明されるが、メキシコでは「殺し屋」を意味する。

そして、原題タイトルの意味は終盤に明らかになる。

歪められたタイトルによって、ぼくは途中まで違和感を感じていた。

ケイトの人となりがまったく見えてこない。
離婚しているという情報から、FBIの激務で旦那と上手くいかず別れに至ったことは理解できる。

だが、そこまでして彼女が拘る仕事 正義とは何なのか。

彼女の行動の理由
彼女の正義
彼女の信念

それらが明確に描かれないままに話が進んでいき、ケイトに感情移入することができない。

唯一共通項があるとしたら、作戦の詳細を伝えられない彼女の苛立ちと 彼女の人間性を知ることができない観客の苛立ちが=であった。

そんな違和感お構い無しに話が進むのと、描かれている内容を観ていて合点がいった。

個人の葛藤や人間関係を深く描いているのではなく、今もぼくらが生きているこの世界で 実際に起きているであろうことを描いているのだと。

その事実を そのリアリティを伝えようとしている作品なのだと。

だが、それが分かったところでぼくにはどうしようもなかった。

あくまでもぼく個人の価値観なので、刺さる人にはきっと刺さるのだろう。
刺さらないぼくがそもそも社会人としてどうなんだって話にもなりかねないが、銃社会でもなく(あるとこにはあるのかもしれないが)ドラッグも身近にない日本において 劇中で描かれているリアルが感じ取りにくい。

そういった社会に身を置いていた経験がある人には他人事では済まないのだろう。

日常生活において銃声を聞くこともなければ、ドラッグに染まってる人間とも無縁のザ・凡人 ザ・平和ボケ日本人のぼくにはイマイチ実感が湧かなかった。

そんな無知なぼくの頼みの綱 ケイトに関してもやはり感情移入ができないままで、「こういったことが世界では起きているのか」レベルでしかそのリアリティを感じ取ることができなかった。

ストーリー展開にも役者の演技にも文句はない。

あるとしたらぼくの世界に対する無関心さと、原題を歪める連中に対してのみ。

ケイトがストーリーを追う上での依り代として機能しない以上、描かれているリアルを感じ取れる社会性が必要とされる作品だと思います。

ぼくのおバカ具合を棚に上げてアレコレ書きましたが、これからこの作品に触れる人がより作品を楽しめるため 恥を忍んで書きました。
ご容赦願います。

評価がCなのは ザ・凡人代表として。
あなたの観方次第で評価が変わる作品です。

アメリカとメキシコの国境で巻き起こる麻薬戦争の闇を、『灼熱の魂』『プリズナーズ』­などのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が衝撃的かつリアルに描いたアクション。メキシコ麻薬­カルテルを撲滅すべく召集された女性FBI捜査官が、暴力や死と日常が隣り合わせの現­実を目の当たりにする姿を映す。主演は、『イントゥ・ザ・ウッズ』などのエミリー・ブ­ラント。ほかにベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリンらが出演。ヴィルヌーヴ監­督による臨場感たっぷりの演出と、名優たちの緊迫した演技に注目。

cinematoday

3.2
総合評価:C

映画『ボーダーライン』

原題 SICARIO
製作年 2015年
製作国 アメリカ
配給 KADOKAWA
上映時間 121分

青春
4
2
エロ
2
サスペンス
6
ファンタジー
2

About the author

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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Comments

  • ミヤザキタケル (@takeru0720) 2016年4月13日 at 9:07 AM

    平和ボケした日本人に衝撃を与える 映画『ボーダーライン』レビュー | oriver.cinema https://t.co/hB8Sol5dLm

    Reply
  • oriver_cinema (@oriver_cinema) 2016年4月13日 at 11:59 AM

    平和ボケした日本人に衝撃を与える 映画『 #ボーダーライン 』レビュー https://t.co/Jdy2FFVJIc あなたの観方次第で評価が変わる作品です。

    Reply
  • oriver_cinema (@oriver_cinema) 2016年4月13日 at 8:20 PM

    平和ボケした日本人に衝撃を与える 映画『 #ボーダーライン 』レビュー https://t.co/Jdy2FFVJIc

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