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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』登場断念のキャラクターがいた ─ マルチバースの脚本苦労秘話、クレイヴンは「ヴィランではなかった」

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
©2021 CTMG. © & ™ 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、サム・ライミ監督による『スパイダーマン』3部作、マーク・ウェブ監督による『アメイジング・スパイダーマン』2部作からヴィランたちが再登場するという“マルチバース”を最大限に活かしたコンセプト。そもそも、このアイデアはどのようにして生まれたのか?

Varietyによると、脚本家のクリス・マッケナ&エリック・ソマーズが本作の執筆を始めたのは、前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)が大ヒットを記録してから約半年後の2019年12月。マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギやプロデューサーのエイミー・パスカル、監督のジョン・ワッツを含む『スパイダーマン』シリーズのコアメンバーはそれ以前から話し合いを進めていたというが、当初はマルチバースを描く物語にすることは検討さえされていなかったという。

「(マルチバース以外の)いろんなアイデアがあり、異なるいくつかの方向性に進んでいたこともありました」とはマッケナの談。話し合いを経て、ついにマルチバースの可能性が検討されるようになったという。このコンセプトをフルに活かすため、マッケナ&ソマーズは、まず“思いつくことはなんでもやる”というスタイルで執筆を始めた。米The Hollywood Reporterにて、ふたりはこう述べている。

マッケナ「登場させたい人は誰でも登場させられるかのように、(ハリウッドの)誰にでも連絡できる権力があるかのように振る舞いました。“やりたいことリスト”はびっしりと埋まっていたようなものだったので、そこから全体の流れを作り、脚本に起こしていったんです。」

ソマーズ「こういう方向性でやると決まったら、“どんなストーリーにすべきか”ということに集中しました。このキャラクターを出せるなら、物語にこんな影響が出るとか、こういうところが良くなるとか。それで、“この人を出してみよう、もし成功しなければ大変なことになるけど”という進め方でした。制約が生じたにせよ、最終的には創造的な処置や決断につながることが多いんです。前向きに計画し、形にしていく作業でした。」

ふたりは本作について、「うまく物語にはまらなかった」という理由で再登場を断念したキャラクターが少なからず存在したことも認めている。マッケナによると、脚本の初稿には「自分たちが扱いきれないほどのキャラクターがいた」とのこと。マッケナ&ソマーズは「今後の作品でそのアイデアを掘り下げることになるかもしれないから」と述べ、具体的なアイデアを明かしてはいないが、米The Wrapでは「すごいキャラクターが出てきていた」とも語られている。

ちなみに、登場が検討されていたことが判明しているクレイヴン・ザ・ハンターは「ヴィランではなかった」とのこと。コミックでは“スパイダーマン狩り”のヴィランだが、別の形で登場させるアイデアだったとみられる。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
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マッケナが強調するのは、過去のスパイダーマン映画の単なるノスタルジーやファンサービスにとどまるのではなく、きちんと本作を“トム・ホランド版ピーター・パーカー”の物語として成立させることの重要性だ。『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のラストでスパイダーマンの正体が世界に暴露されたのち、ピーターはどうなったのか。そして、どうなっていくのか。キーワードは「ピーターを忘れてはいけない。方向性を見失わず、ピーターの物語に」だったという。

ちなみに、スパイダーマンの正体を誰もが知ってしまったという事実を帳消しにすべく、ピーターがドクター・ストレンジに助けを求める展開は、マルチバースの本格導入が決まるよりも前から検討されていたもの。参考となったのは、フランク・キャプラ監督の名作『素晴らしき哉、人生!』(1946)。“ピーターとストレンジがすべてをなかったことにしようとする”という大筋にマルチバースのアイデアが融合したことから方向性が固まり、脚本が練り上げられていったのだ。

もっとも、2019年12月に始まった脚本作業は、本編の撮影が終了した2021年の初旬まで続けられることになった。新型コロナウイルス禍という不安定な情勢下で、史上最も野心的なスパイダーマン映画を実現することは困難を極めたのである。マッケナは執筆作業を振り返り、「もう完成しないのではないか」と頭を抱えた日々もあったと語っている。

Source: Variety, The Hollywood Reporter, The Wrap

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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