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【ネタバレ】『スパイダーマン:スパイダーバース』ポストクレジットシーン&カメオ出演者解説

スパイダーマン:スパイダーバース
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第91回アカデミー賞など数々の映画賞に輝き、「スパイダーマン映画最高傑作」と評されるスパイダーマン:スパイダーバース。この作品も現代のヒーロー映画の例に漏れず、エンドクレジット後の“お楽しみ”が用意されている。本記事ではポストクレジットシーンとともに、日本語字幕版に登場するカメオ出演者もあわせて解説していくことにしよう。

この記事には、映画『スパイダーマン:スパイダーバース』のネタバレが含まれています。

スパイダーマン:スパイダーバース

おそるべき情報量、ラスト/エンディングを紐解く

キングピンの企みによって時空が歪み、あらゆる次元から複数のスパイダーマンたちが集まってくる……。コミック『スパイダーバース』(ヴィレッジブックス刊)を原案としながら、ともすれば難解になりかねないストーリーを巧みに整理して描ききった本作には、数えきれないほどのイースターエッグ(小ネタ)が詰まっていた。

そして映画を締めくくるポストクレジットシーンは、いわば“イースターエッグそのもの”というべきユーモラスなシーンでありながら、同時に『スパイダーバース』の今後を占う重要な意味合いも含まれている。ここでは、要素のひとつひとつを確かめていくことにしよう。

ミゲル・オハラ/スパイダーマン 2099

エンドクレジットが終わると、「そのころヌエバ・ヨークでは…」という吹き出しが現れ、暗い部屋に立つホログラムの女性が登場する。同じくホログラムに映し出されるのは、マイルス・モラレスやピーター・パーカー、スパイダーグウェンら6人のスパイダーマンの活躍の様子。「マルチバースは崩壊しなかった」との報告に喜ぶ声の主は、ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099だ。

1992年にコミックに初登場したミゲル・オハラは、「アース928」なる次元に生きており、2099年のヌエバ・ヨーク(ニューヨーク)で遺伝学者として活動している。1999年のスパイダーマンの能力を再現する遺伝子実験に従事していたミゲルは、ある出来事をきっかけとして、自分の遺伝子の半分をクモの遺伝子によって上書きすることになってしまった。メキシコ系アメリカ人であるミゲルは、コミック初の「ラテン系スパイダーマン」。マイルスをはじめ多様なスパイダーマンが活躍した『スパイダーマン:スパイダーバース』のラストを飾るにふさわしいキャラクターなのだ。

ともあれ、『スパイダーマン:スパイダーバース』でミゲル/スパイダーマン2099にどんな設定が与えられていたのかはわからない。ホログラム越しにマルチバースの様子を監視しているようでもあるミゲルは、いったい何のためにマルチバースに関与しているのか。時計のような形をしたグーバー(ギズモ)を装着して、ホログラムのアシスタントによれば、ミゲルは「狙った次元へ跳ぶ初めての人間になる」。もっとも、彼は「最後かもしれない」のだが……。

「アース67」パロディ、有名ネットミームが背景

ミゲル/スパイダーマン2099がジャンプする先として選んだ次元は「アース67」。1967~1970年に米国で放送されたテレビアニメ版「スパイダーマン」の世界だ。ここでミゲルはスパイダーマンとさっそく遭遇。「スパイダーマンだ、一緒に来てくれないか」と頼むも、アース67のスパイダーマンに「指差すな」と怒られ、「そっちが先に指を差したんだ!」と言い合いになる。警官とJ・ジョナ・ジェイムソンも登場するが、二人はどっちが先に指を差しただの、いや差していないだのと揉めつづけ、そのまま映画は幕を閉じるのだった。

この場面は、1968年1月に放送された「スパイダーマン」シーズン1の第19話Bパート「Double Identity」のパロディとなっている。もっといえば、ポストクレジットシーンの冒頭に映し出される「スパイダーマン」のタイトル、および映画のラストショットとなる「THE END」は同作からそのまま引用されたものだ。

“スパイダーマン同士で指を差し合う”という場面は、実際のアニメを見たことがなくとも、もしかすると見覚えがあるかもしれない。なにせ海外では、主に「目くそ鼻くそを笑う」状況を揶揄するネットミームとして広く知られているかからだ。ネットミームの紹介サイト「Know Your Meme」によれば、このミームは2012年ごろにSNSにて登場したとのこと。『スパイダーマン:スパイダーバース』でこの場面がパロディとなったことには、こうしたネットミームの状況が背景にあったようである。なにせ脚本には、アース67のスパイダーマンを指す役名として「ミーム・スパイダーマン(MEME SPIDER-MAN)」と書かれているのだ。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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