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【ネタバレ】『ハン・ソロ』ロン・ハワード監督はどこを変えた? 大幅な再撮影、内容変更の詳細が一部判明

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
© 2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

2017年6月、映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018)の撮影現場から衝撃的な知らせが飛び込んできた。監督として撮影にあたっていたフィル・ロード&クリス・ミラーが、ルーカスフィルムとの「創造性の違い」を理由にプロジェクトを離脱したのである。後任者に起用されたのは、『アポロ13』(1995)や『ビューティフル・マインド』(2001)の名匠ロン・ハワードだった。

報道によれば、フィル&クリスの降板後、ロン監督は全編の70%を撮り直したという。本記事では複数の証言を頼りに、ロン監督が本編のどういった部分に大きな変更を加えていったのか、その一部を明らかにしたい。

注意

この記事には、映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレが含まれています。すでに作品を鑑賞された方向けの内容となりますのでご注意下さい。なお、このページをSNSにてシェア頂く際は、記事内容に触れないようお願い致します。

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
© 2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

https://www.youtube.com/watch?v=t4cMB2eVXa8

ハン&キーラの再会シーン

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の編集を務めたのは、『エイリアン:コヴェナント』(2017)や『オデッセイ』(2015)、『悪の法則』(2013)などリドリー・スコット作品に数多く参加するベテラン、ピエトロ・スカリア氏。前監督のフィル&クリスとは数週間の作業を行ったというが、基本的にはロン・ハワード監督の登板にあわせて、前任者とは入れ替わりでプロジェクトに参加した人物だ。

/Film誌のインタビューにて、ピエトロ氏は、フィル&クリスが制作した映像とロン監督の素材は「完璧に別物」と断言。編集作業は一からやり直す必要があったという。

「すでに作られたものの上に、何かを積み上げるようなことはしていません。[中略]最初からシーンを作り直すことにしたんです。それが(撮影された)素材をきちんと理解する唯一の方法だった。決して、僕の前に参加していた編集者に敬意がないわけではないんです。単純に(映画を)どう作るかを理解するためでした。素材を知らなければいけなかったし、一から始める必要があったんです。常に(それぞれの)テイクを見つめて、演技を見て、キャラクターを組み立てて、自分自身を発見していったんですよ。」

撮影から編集に至るまで、本作では制作途中で大幅な作り直しが行われているわけだが、なかでもピエトロ氏が強調するのはハン・ソロとキーラが3年ぶりの再会を果たすシーンだ。トバイアス・ベケットに連れられて乗り込んだ、ドライデン・ヴォスの船上でハンはキーラと遭遇するのである。

「ハンとキーラが再会する場面は、この映画で特に大切なシーンだと思っていました。[中略]非常にデリケートで、しかも非常に大切なポイント。二人は数年間会っていないんですが、お互いどんなふうに反応するのか……。
あのシーンは何度も撮影が行われました。最初はフィルとクリスがいた頃で、(二人の撮ったバージョンには)いろんな俳優が出ていて、(ハンとキーラの間には)遮るものがいろいろあったんです。ロンはそれとは違ったものを求めたので、撮り直しが行われました。演技はさほど違わなかったんですが、障害が多くて、カメラも動いて、周りの様子やパーティーの風景がもう少し映っていたんですよ。」

また『ハン・ソロ』の再撮影を語る上で外せないのは、ドライデン・ヴォス役の俳優が変更されたことだ。当初キャスティングされていたマイケル・ケネス・ウィリアムズがスケジュールの都合で再撮影に参加できなかったため、代役としてポール・ベタニーが起用され、役柄の設定も大きく変わったという。これによって、ハンとキーラの再会にも変更が生じたようだ。

「ポール・ベタニーが加わって、大きな変更が入りました。そこで再び、二人(ハンとキーラ)のセリフを少し撮り直したんです。ですから(完成版のシーンでは)ロンが最初に撮ったものと、二度目に撮ったものを組み合わせたんです。」

トバイアス・ベケット一味の列車強盗

『ハン・ソロ』で大きな変更が加わったとみられるのは、映画の序盤でトバイアス・ベケットのチームが挑む「列車強盗」のシーンだ。トバイアス役のウディ・ハレルソンによれば、一連のシーンはロン監督の登板後に大幅な変更が施されたという。それゆえ、この場面は「映画史に残るほど」の長期間、約1年間にわたって断続的に撮影が行われたそうだ。ハン・ソロ役のオールデン・エアエンライクは、その期間の長さをこのように説明している。

「この映画は(2017年)1月に撮り始めたんですが、列車のシーンはその数ヶ月後に撮ったと思います。近くで『オリエント急行殺人事件』(2017)が撮影されてたんですが、彼らが撮影を終えた後も、こっちは列車の撮影をしてた(笑)。列車のシーンだけで、あっちの5倍くらい時間がかかったんですよ(笑)。」

フィル&クリスが監督を務めていた頃の撮影、ロン監督による撮影、それぞれのセカンド・ユニットによる撮影、さらにスタント・チームの撮影……それらをすべて合わせると、それほどの長期にならざるを得なかったというのだ。残念ながらロン監督の変更点について詳しくは語られていないが、おそらく全体的な方針転換がなされたとみられる。

ちなみにヴァル役のタンディ・ニュートンは、この列車強盗のシーンをほとんど一人きりで撮影したことを明かしている。撮影期間があまりに長くなったため、本来の撮影地とは別の場所でも撮影が行われたというのだ。しかし、それだけ長期間に撮られた映像が見事に編集されていることにタンディは感激した様子。スタッフの仕事ぶりを「映画の魔法ですよ」と語っている。

ケッセル・ランの怪物

Empire誌では、ロン・ハワード監督が自ら、本編のハイライトである「ケッセル・ラン」のシーンを大きく作り替えたことを明かした。なにしろ、メイルストロームにてミレニアム・ファルコン号を丸呑みしようとする巨大なクリーチャーは本来存在しなかったというのである。さらにロン監督は、脚本家のローレンス&ジョン・カスダンとの間でストーリーを刷新していったことも語った。

「僕が参加した時、(ケッセル・ランに)あのモンスターはいませんでした。新しく加えたものなんですよ。ケッセル・ランにはたくさんの要素があって、脚本に書かれたり、プレビズ(ビデオコンテ)化されたりしていましたね。それでもストーリーはどんどん進化していったんです。コアクシウムを最終的な脱出の決め手に使うことすら、その作業の中で生まれたものでした。[中略]新しいアイデアを活かすために、ファルコンのシーンは3回、新しいものをとことん撮りましたよ。」

モンスターがいなかった、しかもコアクシウムで引力に逆らうというアイデアもなかったとすると、おそらく当初のストーリーは完成版とは大きく異なるものだったのだろう。ただしフィル&クリスが、このケッセル・ランのシーンをあらかじめ撮り終えていたかどうかは定かでない。

なお編集者のピエトロ氏によれば、完成版の『ハン・ソロ』には、フィル&クリスが手がけたシーンがまるごと残っているところもあるという。ただしそれらのシーンが残された理由は、あくまで移動や輸送に関するもので、本来の撮影地に戻ることができないなどの事情があったためだとか。すなわちそうした事情さえなければ、ルーカスフィルムは本当に全シーンを撮り直そうという勢いだったのだろうか……?

映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は2018年6月29日より全国の映画館にて公開中

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』公式サイト:https://starwars.disney.co.jp/movie/hansolo.html

Sources: /Film, Collider(1, 2), Empire

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。