Menu
(0)

Search

『スター・ウォーズ』全作あらすじ解説 ─ エピソード8『最後のジェダイ』に向けた予習/復習に

スター・ウォーズ

「『スター・ウォーズ』って、どんな映画なの?」多くのスター・ウォーズ・ファンは、このシリーズをまだ観たことのない者に一度はこう聞かれた経験があるだろう。この問いへの答え方にはいくつもの方法がある。「とても良くできたSF映画だ」とか「ダース・ベイダーとルーク・スカイウォーカーの親子の物語だ」とか、一言や二言で良い表すことだって出来る。

しかし、『スター・ウォーズ』のファンらは、とある厄介な呪いにかけられているのもまた事実である。いかなる状況でも、『スター・ウォーズ』については熱っぽく語りたくなるし、この物語を正しく継承することを何故だか義務のようにも感じている。何故か?わからない。わからないからほとんど呪いなのだ。そしてファンは、この奇妙な呪いをとんでもなく愛している。

「『スター・ウォーズ』って、どんな映画なの?」と尋ねられたファンは、まだ無知で若いルーク・スカイウォーカーに、「やれやれ」とでも言いたげに過去の歴史を語ったオビ=ワン・ケノービのように、遠い目をしながら少しの意地悪心と優越感に浸って語る。オビ=ワンは、「思い出した」と立ち上がってルークにライトセーバーを手渡した。実に白々しい。ずっとこの瞬間を心待ちにしていたはずなのだ。

そういう瞬間が、『スター・ウォーズ』ファンにはある。友人、恋人、家族に「『スター・ウォーズ』って、どんな映画なの?」と尋ねられる瞬間が。そうしたら、無い白ひげを撫でる真似をしながらこう答えるんだ。「数万年もの間、ジェダイが旧共和国の秩序と平和を守っていたんだ。帝国の暗黒支配が始まるまで…。」

『スター・ウォーズ』の厄介で愛すべき呪いにかけられた筆者は、改めてこれまでの『スター・ウォーズ』映画全作を振り返ることにした。それぞれにあらすじ、簡単な解説も添えた。この記事では、『スター・ウォーズ』の全ての魅力を網羅しているわけではない。まだまだ語り尽くせぬ深奥さが無限に広がっている。シリーズにあまり馴染みのない方にとっても復習の内容としてご活用いただければ幸いだ。

注意

この記事には、『スター・ウォーズ』実写映画全作の内容が含まれています。

スター・ウォーズ

スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス(1999)

あらすじ

そもそもスター・ウォーズというタイトルには「WARS(=戦争)」とあるのだから、この物語の世界では絶えず戦争が起こっている。そして実際の戦争がそうであるように、そのいきさつには政治的な思惑の交錯が関係しているということをまずは頭の片隅に置いておいてほしい。

スター・ウォーズは、「遠い昔、遥か彼方の銀河系」で繰り広げられる物語だ。私達の世界の銀河系では、地球だけが唯一生命体が暮らす惑星とされるが(ここではそうしておこう)、スター・ウォーズの世界には無数に散らばる星々それぞれに生き物が暮らしていて、まるで地球の国々の関係のように、星と星が外交関係にあるというわけだ。

銀河の星々とはいえども、ある程度は皆統一しようねという文明民族が集まって、「銀河共和国」というものを作り、惑星コルサントにその首都を置いていた。共和国は民主主義と官僚制度をモットーとし、フォースを操る戦士「ジェダイ騎士団」に警察のような役割を任せていた。

『ファントム・メナス』は、そんな共和国が政治的危機に陥ってる場面から幕を開ける。銀河をまたぐ貿易や運送を手がける通商連合と呼ばれる複合企業が、銀河共和国外縁の星系と通商摩擦を起こしていた。論点は貿易関税率についてだった。しかし銀河共和国の元老院は腐敗が進んでおり、議論がいっこうに進まない。業を煮やした通商連合がナブーという名の小さな惑星を威嚇包囲してしまう。そこで共和国の依頼を受けて仲裁に駆り出されたのが、ジェダイ・マスターのクワイ=ガン・ジンとパダワン(弟子)のオビ=ワン・ケノービだ。

実は通商連合は、シスの暗黒卿ダース・シディアスと裏でつながっており、クワイ=ガンとオビ=ワンはナブーの地で襲撃に遭うことになる。乗ってきた船も失い、八方塞がりとなった2人は、偶然ジャー・ジャー・ビンクスというスター・ウォーズ史上最も嫌われ者のキャラクターと出会い(何故嫌われているのかは、観れば理解できるはず)、ジャー・ジャーの属するグンガン族の助けを借りてナブーの首都シードへ到着する。

シードでは、ナブーの元首アミダラ女王を救出して、共和国の首都コルサントへ向かうが、途中で通商連合の攻撃に遭い船が損傷。やむなく、砂漠の惑星タトゥイーンに修理のため立ち寄ることになる。

タトゥイーンで出会ったのが、『スター・ウォーズ』というサーガを通じた真の主人公であり、後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカー少年だ。ジャンク・パーツ屋で母シミ・スカイウォーカーと共に奴隷として労働を強制されており、クワイ=ガンが母シミに聞けば父は無く、自然と身ごもった不思議な子だと言う。アナキンはポッドレースと呼ばれる危険なレースの虜で、大会への出場を目指している。その人間離れした能力に驚いたクワイ=ガンがアナキンを調べてみると、フォースを司る血液中のミディ=クロリアン値が異常に高く、その値はかのジェダイ・マスターであるヨーダに匹敵することがわかった。クワイ=ガンは、この少年こそジェダイの言い伝えにある選ばれし者、つまり「フォースに安定をもたらす者」ではないかと確信したのだった。

まだあどけないアナキンは機械いじりの才能も備えており、これよりシリーズ全作に欠かさず登場することになるC-3POのプロトタイプも組み立てていた。出会ったばかりのアミダラの侍女(身分の高い者の身の回りを世話する女性)パドメには、ひと目見て「お姉さん、天使なの?」と素直に漏らすほど心惹かれていた。アナキンはポッドレースの大会に出場し、クワイ=ガンはアナキンに賭けた。見事レースに勝利すると奴隷解放を勝ち取り、船の修理に必要なパーツも手に入れたクワイ=ガンらに加わる。この時アナキンは、母シミを奴隷から救えず故郷に置き去りにしてしまうことを唯一の心残りとして、以後悩み続けることとなる。

タトゥイーンを発つ直前、赤いライトセーバーを操る黒ずくめの男が一行を奇襲するが、素早く退避したことで決着を避けている。この男こそ、ダース・シディアスの弟子であり強力なシス卿、ダース・モールである。シスとは、フォースの暗黒面を極める武力主義の勢力で、ジェダイとは強い対立関係にある。かつてシスは滅びたはずだったが、ダース・シディアスという暗黒卿がその流儀を密かに継続していたのだった。

共和国の首都コルサントに到着した一行は、クワイ=ガンが「選ばれし者」と推薦するアナキンの修行についてジェダイ評議会のもとへ。評議会の面々はアナキンの高い能力は認めながらも、年齢や精神的弱さを理由に受け入れには否定的で、とりわけヨーダには「この子の将来が見えない」と拒絶され、クワイ=ガンへの弟子入り申請も却下されてしまう。

一方アミダラは、緊急議会にて危機下にあるナブーの現状を報告し、惑星の即時解放を求めるが、腐敗した元老院はまるで機能しておらず、のれんに腕押し状態。失望したアミダラは最高議長を不信任とし、選挙の実施を要求。実は、こうした動きはすべてパルパティーンという議員の耳打ちによるものだった。パルパティーンは、自身が代わりに最高議長の座につくことを企んでいたのだ。

アミダラは、紛争状態にあるナブーに再び戻ることになる。ジェダイ評議会も、タトゥイーンで奇襲を仕掛けてきたという黒ずくめの男に、シス復活のにおいを嗅ぎ取っていた。この動きを探るため、クワイ=ガンとオビ=ワンをアミダラに動向させることとなる。

ナブーに戻ったアミダラ一行はジャー・ジャーの属するグンガン族と交渉し、侵略を始めた通商連合に立ち向かうべく団結を呼びかける。ここで、実はこれまで女王と思われていた者が影武者であり、アナキンが一目惚れをしていたパドメこそが本物のアミダラ女王であったことが明かされる。交渉は実を結び、グンガンの軍隊が通商連合の主力部隊を引きつけ、その間にアミダラ率いるナブー抵抗軍とクワイ=ガン、オビ=ワンがシードに潜入する。そこでアナキン少年が身を隠すために乗り込んだスターファイターが偶然起動、そのまま抵抗軍艦隊と共に宇宙に飛び出し、通商連合の主力部隊であるバトル・ドロイドの司令部攻撃に加わることになる。持ち前の操縦能力で敵司令部を見事破壊すると、地上のバトル・ドロイドはすべて停止。グンガン族には勝利がもたらされた。

一方、クワイ=ガンとオビ=ワンの目前には、黒ずくめの男が再び立ちふさがっていた。男は黒いフードを下ろし、双頭のライトセーバーを起動させると、シスの暗黒卿ダース・モールとしての正体を表す。鍛え抜かれた剣術を見せるモールは、2人のジェダイを相手にしながらも圧倒的な戦闘力で翻弄、ついにクワイ=ガンを仕留めてしまう。モールは、オビ=ワンに胴部を真っ二つに斬られるとシャフトから落下。倒れたクワイ=ガンは、オビ=ワンにアナキンこそが選ばれし者であり、少年を鍛えるよう告げて果てた。

戦いに勝利したナブーでは祝賀会が行われていた。オビ=ワンはジェダイ・ナイトに昇格し、クワイ=ガンの遺言に従ってアナキンをパダワンに迎え入れた。共和国では、新たな最高議長としてパルパティーンが選ばれていた。この男が、後に闇の正体を表すこととなるとは、まだ誰も気付いていなかった。

解説

1977年から1983にかけて公開され、全世界で絶大な人気を得た『スター・ウォーズ』サーガ最大の悪役ダース・ベイダーの誕生と、帝国軍設立の経緯を描くプリクエル(前日譚)三部作の幕開け。16年ぶりの新作とあって熱狂的に迎え入れられたが、いざ蓋を開けてみれば世界中のファンの失望を買う結果となった。

物語は堅苦しく、重要な出来事はほとんど全て登場人物が座っている間に起こった。その重苦しさは、カルト的人気作の新たな物語を演じるという重圧を感じた役者らの演技にも滲み出てしまった。本作はジョージ・ルーカスが脚本と監督を務めたが、そもそもルーカスは映画監督や映画脚本家として台詞や演出に細かく気を配るタイプではない。物語の展開も、台詞の調子も、役者の表情もすべてがドギマギとしていたが、誰も創造主ルーカスには意見できなかった。

『ファントム・メナス』は、スター・ウォーズ・サーガの起源を描く重要な作品だが、その殆どで「元老院議員」とか「評議会」とか「通商連合」「不信任決議案」など、およそ政治ドラマのようなキーワードがテンポ悪く、そして説教臭く語られる。現在観られるバージョンのヨーダはCGに描き換えられているが、公開当時は出来の悪いパペット人形だった。ファンは、「これはスター・ウォーズだけど、スター・ウォーズじゃない、でもれっきとしたスター・ウォーズだ」という、まるでジャー・ジャー・ビンクスの皮脂のようにヌメりある不条理を嫌々飲み込むしかなかった。そしてご想像の通り、多くのファンが飲み込めないまま、ジャンク・ヤードに吐き捨てた。

『ファントム・メナス』を経て、スター・ウォーズ・ファンの心に残ったのは、唯一活き活きとした殺陣で強烈な印象を放ったダース・モールの双頭ライトセーバーと、映画公開に向けて盛り上がっていた世界の狂乱だけだった。当時この作品をファンがどれだけ待ち望んだかを思い出すには、映画『ファンボーイズ』(2009)を観ると良いだろう。余命3ヶ月のスター・ウォーズ・オタクが、半年後に公開予定の『ファントム・メナス』を死ぬ前にひと目観るため、仲間たちと共に制作スタジオに忍び込む旅に出るというロードムービーだ。ファンからの本作の不評を知った上で観れば、登場人物がついに『ファントム・メナス』を期待と共に鑑賞し始めるラストには冷や汗が止まらないはずだ。

目次に戻る

スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃(2002)

あらすじ

『クローンの攻撃』は、『ファントム・メナス』の約10年後を描く。銀河共和国は相変わらず腐敗しており、呆れた数千の星系が共和国から離脱すべく分離主義勢力を形成していた。この勢力を率いるのは、かつてヨーダに仕え、クワイ=ガン・ジンを育てた元ジェダイながら、シスの暗黒卿へ寝返ったドゥークー伯爵だ。

分離主義勢力に備え、共和国は軍隊保有の是非を問われていた。この協議に参加すべくコルサントへ降り立ったアミダラは何者かの企てで爆破テロに遭う。かろうじて生き延びたアミダラには、護衛としてオビ=ワンとアナキンがつけられることになった。

2人のジェダイはアミダラを狙った暗殺者ザム・ウェセルを捕らえるが、口を割ろうとした瞬間に別の刺客ジャンゴ・フェットがザムをセーバーダート(矢)で殺してしまう。オビ=ワンはこの凶器を手がかりとして、暗幕探しを始める。

一方、アナキンにはジェダイとして初の単独任務に臨んでいた。願ってもいない、かつて恋い焦がれたパドメ・アミダラの護衛である。約10年ぶりの再会、そして自身の活躍をなかなか認めようとしないオビ=ワンの不在もあり、アナキンは浮足立っていた。やがて若き2人は恋仲になるが、ジェダイの掟では、恋愛は無用な執着心を生み、執着心が暗黒面につながるとして堅く禁じられていた。決して悟られてはならぬ禁断の恋が始まったのだった。

暗殺者の調査にあたるオビ=ワンは、何故かデータから削除されていた謎の惑星カミーノにたどり着く。ここでは、クローンによる軍隊が製造されていた。聞けば、10年ほど前に、今は亡きジェダイ・マスター、サイフォ=ディアスから依頼されて作り始めた、共和国のための軍隊であるという。しかし、10年前の時点でサイフォ=ディアスは既に亡くなっているはずだ。疑問を感じたオビ=ワンは、クローン兵の遺伝子のホストである賞金稼ぎジャンゴ・フェットに遭遇。彼こそが暗殺者ザムを消した男であると確信したオビ=ワンは捕獲を試みるが、戦闘の末に取り逃がしてしまう。すんでのところでジャンゴの船に発振器を取り付けていたオビ=ワンは追跡の末、惑星ジオノーシスまでたどり着く。

その頃アナキンは、死の淵にある母シミの悪夢にうなされていた。故郷の惑星タトゥイーンに残してきた母の安否が不安でならないアナキンをはからい、パドメはアナキンと共にタトゥイーンを訪れることに。そこでアナキンは、シミはその後奴隷から解放されており、ラーズという農夫の元に嫁いだことを知る。ラーズ家を訪れてみると、かつて自分が組み立てたC-3POと共に、消沈した様子の一家が現れる。聞けば、母シミは一ヶ月ほど前に強賊タスケン・レイダーに誘拐されてしまったのだという。

母を探して飛び回ったアナキンは、ついに拘束された母シミを見つけ出すが、時既に遅し。衰弱しきったシミは、アナキンの腕の中で息を引き取る。アナキンは、ライトセーバーに怒りを込めてタスケンの一団を皆殺しにしてしまう。クワイ=ガンの魂が制止を叫んだが、我を失ったアナキンの耳には届いていなかった。中には女子供も含まれていたことも承知していた。「クズは殺してもまわない」と言い放ったアナキンに、パドメは恐怖を感じ始めていた。

惑星ジオノーシスに潜入したオビ=ワンは、パドメ暗殺計画の黒幕は『ファントム・メナス』ナブーの戦いの報復を試みる通商連合の指導者ヌート・ガンレイであったことを突き止める。さらにジオノーシスでは、ドゥークー伯爵率いる分離主義勢力が新たなドロイド軍を製造していた。しかしここでドゥークー伯爵に捕らえられてしまったオビ=ワンは、ダース・シディアスが元老院を支配していると告げられるが、これを信じなかった。アナキンとパドメはオビ=ワン救出に向かうがあえなく捕らえられ、3人そろって死刑に処せられてしまう。

死刑は、3人を拘束し、クリーチャーの餌食にさせるというもので、アリーナには見世物として多くの聴衆が詰めかけていた。ジェダイの2人はもちろんパドメもクリーチャー相手に健闘し抵抗していると、ジェダイ・マスターのメイス・ウィンドゥ率いるジェダイの一団が救出に駆けつける。分離主義勢力側はバトル・ドロイド軍団を投入し、アリーナではジェダイ対ドロイドの壮大な戦いが繰り広げられた。ジャンゴ・フェットもこの戦闘に加わったがメイス・ウィンドゥには敵わず、首をはねられて絶命する。

ジェダイは、バトル・ドロイドの圧倒的な軍力の前に劣勢を強いられていた。ここに、ヨーダがクローン軍団を引き連れて参戦。クローン兵が実戦に投入されたことに伴い、これより「クローン戦争」が勃発することになる。

ジオノーシスのバトル・ドロイド工場を支配していたポグル・ザ・レッサーは、ドゥークー伯爵に密かにデス・スターの初期設計図を託していた。実はこの頃、デス・スターの設計図はジオノーシスの設計技師によって描き上げられていたのだ。設計図を受け取ったドゥークー伯爵は逃亡を図るが、オビ=ワンとアナキンの登場により足止めを食らう。ダークサイドの術に長けたドゥークーは2人のジェダイを圧倒し、アナキンは右腕を斬り落とされてしまう。ドゥークーは2人を戦闘不能にするが、そこにヨーダが登場。激しい戦闘の末、ドゥークーは脱走し、コルサントでダース・シディアスと合流する。クローン戦争の勃発は、すべてシディアスの企みどおりであった。

コルサントでは、クローン・トルーパーの大軍が戦地に向けて出軍していた。その裏で、アナキンとパドメはナブーの穏やかな湖畔で密かに結婚式を挙げていた。その右手は機械の義手。すべての運命の行く末に、帝国軍やダース・ベイダーの影が見え隠れしていた。

解説

『クローンの攻撃』は、『ファントム・メナス』に比べて銀河の冒険活劇としての見せ場を増した。冒頭から繰り広げられる暗殺者追跡シーンにおけるコルサントの街並は『ブレードランナー』の影響を感じさせ、SF映画二大作の相互作用がファンの心をくすぐった。最大のサプライズは、ヨーダの小さな緑の身体に込められた。目にも留まらぬ速さでドゥークー伯爵を翻弄するCGIのヨーダは、最強のジェダイ・マスターたる所以を説得力をもって示した。

前作のあどけない少年と、『クローンの攻撃』で無名俳優ヘイデン・クリステンセンが演じた美少年がまさかこの後ダース・ベイダーと化すなど信じられる者は少なかったが、少しずつ見せ始めるアナキンの苛立ちは悲劇の末路を示唆していた。また、長らく秘密が保たれていたクローン軍団の誕生が描かれると、ファンは帝国軍の足跡を感じ始めていた。スター・ウォーズが、スター・ウォーズに近づいていく実感を初めて得られる瞬間だったのである。

しかしルーカスは、若者の繊細な恋愛心を映像に落とし込む術は心得ていなかったようだ。「禁断の恋」に燃え上がり、絵葉書のように美しいナブーの草原でじゃれ合う2人はぎごちなく、両親がイチャつくのを見せられるよりも気まずい映像となった。

『クローンの攻撃』の全米上映館数は、『ファントム・メナス』の約半分となったが、興行収入は前作を凌ぎ、公開4日で製作費をほぼ回収しきった。ルーカスフィルムは映画としては世界に先駆けてソニーの24pデジタルカメラシステム「HDW-F900」を採用し、全編デジタル撮影された世界で初めての映画となった。フルCGで背景を描く技術は現在では当たり前となっているが、この手法を切り開いたのが『クローンの攻撃』なのだ。

目次に戻る

スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐(2005)

あらすじ

『シスの復讐』は、前作『クローンの攻撃』で勃発したクローン戦争が終結に差し掛かる場面からスタートする。クローン戦争の全貌については、アニメシリーズ『クローン・ウォーズ』でたっぷり描かれるので、お時間のある方は是非チェックしてみて欲しい。

映画は、オビ=ワンとアナキンが激しい宇宙戦の最前線に出撃する場面から幕を開ける。分離主義勢力のグリーヴァス将軍がドロイド軍を率いて惑星コルサントを急襲し、パルパティーン最高議長が捕らえられたのだ。救出に駆けつけた2人のジェダイのもとに、『クローンの攻撃』で苦戦したドゥークー伯爵が再登場する。前回の戦いより力をつけたアナキンはドゥークーに勝利、両腕を斬り落とし無抵抗状態に追い詰めるが、戦いを目前で見ていたパルパティーンは「殺せ」と指示する。次第にシスの暗黒卿ダース・シディアスとしての裏の顔を滲み現すパルパティーンの恐ろしさにこの時点で気付いているのは、呆気にとられたドゥークー伯爵と、物語の結末を知っているスター・ウォーズ・ファンだけなのである。

ジェダイの道に反し、無抵抗の者にトドメをさしたアナキンは、パルパティーンとオビ=ワンと共になんとか脱出。コルサントに到着したアナキンのもとに密かにパドメが訪れる。結婚を隠し続けることに疲弊した様子を見せるアナキンに、パドメは妊娠の事実を告げる。

ある夜、アナキンはパドメが出産と共に死んでしまう予知夢を見る。かつて同様の悪夢にうなされ、母を救えなかったアナキンは最愛の妻パドメにも死の危機が迫っていることを悟ると、今度こそ愛する者を死の運命から救ってみせると堅く決意する。

とは言え不安でならないアナキンは、ジェダイ・マスターのヨーダのもとを訪れるが、得られた答えは「喪失への恐れは暗黒面につながる」「死は生の一部」「失うことへの恐れを捨てよ」といった悪夢の現実化を前提とした内容で、アナキンが求める問題解決の手法は明示されずじまいだった。

苦悩を続けるアナキンの元に、パルパティーンが忍び寄る。まず元老院最高議長としての立場を利用し、アナキンをジェダイ・マスターに昇格させようとはたらき、恩と信頼を獲得する。しかし、ジェダイの身分についてはヨーダやメイス・ウィンドゥらジェダイ評議会が決めるものだ。事態を不審に思った評議会は、評議員の役職は与えるがジェダイ・マスターの地位は与えないことにした。かねてよりジェダイ評議会やマスターのオビ=ワンの抑制的な態度に苛立ちを感じていたアナキンは、いよいよ反抗心を押さえきれなくなる。

ジェダイ評議会も、任期を終えてなお残留を続けるパルパティーン最高議長の胸の内を疑っていた。そこでジェダイ評議会は、パルパティーンと蜜月関係にあるアナキンにスパイを働くよう依頼する。アナキンにとっては、両者に目をかけてもらった恩があり、完全な板挟み状態に。加えてパドメの不安も重なり、極度のストレスを抱えていく。

共和国の平和を脅かす分離主義勢力は、ウータパウという惑星を隠れ家としており、グリーヴァス将軍もここに潜んでた。グリーヴァスさえ倒せば、約3年に及んだクローン戦争は終結する。パルパティーンはこの情報をアナキンに与えると共に、ジェダイ評議会が共和国を乗っ取ろうとしていると吹聴。ジェダイは信用ならんとして、フォースの暗黒面を操るシスの魅力を説き始める。フォースの暗黒面を極めれば、人を死から救う術も学べるというのだ。パドメの身を案じてならないアナキンは、暗黒面への関心を抱き始める。

ウータパウにグリーヴァスら分離主義勢力が潜伏しているとの情報を持ち帰ったアナキンだったが、またもジェダイ評議会はアナキンの活躍を許さなかった。「評議会が決めることだから」と、ウータパウの任務をオビ=ワンに一任してしまう。アナキンのストレスは限界を迎えようとしていた。

ウータパウに潜入したオビ=ワンはグリーヴァスとの長い一騎打ちを経て、ついに討伐。クローン軍団も加わり、分離主義勢力のドロイド軍と激しい攻防戦を繰り広げた。

パルパティーンは、アナキンがジェダイ評議会から認められないことにひたすら情けをかけた上で、ついにフォースの暗黒面へと誘う。元老院最高議長パルパティーンこそがシスの暗黒卿であったことを露呈させたアナキンはすぐにジェダイ評議会へ伝えるが、パルパティーンに従えば妻パドメを死の運命から救えるのではという迷いは残ったままだった。

メイス・ウィンドゥらジェダイはパルパティーン議長の逮捕に向かうが、そこでパルパティーンがライトセーバーを起動させ、一瞬にしてジェダイらを斬り殺してしまう。シスの暗黒卿、ダース・シディアスとしての邪悪な本性を現したパルパティーンに対しメイスは互角の戦いを見せるも、追い詰められたシディアスは暗黒面の電撃で反撃。これを経て、パルパティーンの顔面は著しく老化する。

電撃を耐えしのぎ、その危険性を身をもって体感したメイスが「生かしてはおけない」としてトドメの一撃を仕掛けるに見えたが、アナキンが咄嗟に妨害。パルパティーンに死なれてしまっては、パドメを救う手立てが失われてしまうからだ。その隙を突いてパルパティーンがメイスを倒してしまう。もはや取り返しのつかない事態に陥ったことにようやく気づいたアナキンはパルパティーンの意を全面的に受け入れ、シスの暗黒卿としての名を授かるに至る。「今日からはこう名乗るが良い。ダース・ベイダーと。」

これより、物語は暗黒面側に一気に傾くことになる。パルパティーンは、あたためていたジェダイ殲滅計画「オーダー66」を発令。ジェダイと行動を共にするクローン軍団は、彼の意のままに操られ、次々とジェダイを殺害し始める。今やダース・ベイダーと化したアナキンもジェダイ聖堂を襲い、年幼いジェダイ訓練生らを皆殺しにした後、灼熱の惑星ムスタファーに隠れていた分離主義勢力の幹部たちも次々に殺めていく。

元老院では、パルパティーンがジェダイの裏切りを演説していた。自分の顔が醜く衰えたのは、ジェダイに襲われたからだと説き、議会の同情を得ていく。パルパティーンは共和国の解体・再編成を宣言し、自らを皇帝とする銀河帝国の誕生を宣言した。

オビ=ワンとヨーダは「オーダー66」をなんとか生き延び、オビ=ワンがアナキンを、ヨーダがシディアスの制止に向かう。オビ=ワンとアナキン、禁断の師弟対決が勃発したころ、パルパティーンとヨーダも決戦に挑んでいた。

互いに激戦を繰り広げる中、ヨーダはシディアスに力及ばず、逃走を許してしまう。オビ=ワンはやむなくアナキンの左腕と両脚を斬り落とし動きを封じ、アナキンへの愛情と期待を呼びかけるがその心は届かず、アナキンは憎しみを叫びながらムスタファーの灼熱に全身を焼かれてしまう。変わり果てた愛弟子の姿に耐えられなくなったオビ=ワンは、アナキンのライトセーバーを形見として回収し、立ち去る。

アナキンを失った深い絶望にあるパドメは、最後の力を振り絞って双子の赤子を出産。「ルーク」「レイア」と名付けると、「彼にはまだ善の心が残っている」と言い遺し、息を引き取ってしまう。レイアは、不妊に悩んでいた元老院議員のベイル・オーガナ夫妻に預けられ、ルークは惑星タトゥイーンのラーズ夫妻が引き取ることとなり、オビ=ワンもタトゥイーンに移り住み成長を見守ることになった。

焼きただれ衰弱したアナキンは、パルパティーンによって救出されて緊急手術を受ける。失った左腕と両脚には機械の義手・義脚が取り付けられ、呼吸器を取り付けたサイボーグ人間として立ち上がる。恐るべきダース・ベイダーの呼吸音が、初めて聞こえる瞬間だった。

すべてはパドメのためだった。しかし目覚めてみると、パドメは自らの激しい怒りによって死んでしまったという。絶望の叫びをあげるベイダーを見て、パルパティーンはほくそ笑むのであった。これこそが、『スター・ウォーズ』の悲劇性を決定づける特異点となる。アナキンは、パルパティーンの意のままに操られ、なるべくしてダース・ベイダーとなってしまった。これよりベイダーと帝国軍は、銀河を恐怖政治で支配することとなる。その象徴とも言える帝国軍の究極兵器デス・スターの建設が、着々と進められていた。

エピソード1〜3のプリクエル三部作は、こうしてクラシック三部作(エピソード4〜6)に至る世界を作り上げていく。ここまでの流れと悲劇性を理解しておけば、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を含む以後の物語が、より奥深いものに感じられるはずだ。

スター・ウォーズ  アナキン・スカイウォーカー

解説

『シスの復讐』は、クラシック三部作とプリクエル三部作を繋ぐパズルの最後のピースだ。なぜ、アナキンはダース・ベイダーの姿と化したのか?なぜ、共和国は帝国軍になったのか?ジョージ・ルーカスは、全ての謎をつじつま合わせでなく、歴史と運命の流れとしてなめらかに描かなければならなかった。ルーカスはひどく苦心しながら脚本を書き上げたという。苦労の果てに創り上げられた最後のピースは少し力づくで押し込められた部分もあったが、それでも何とかと収まり、大きなカタルシスを起こした。機械人間ダース・ベイダーとなる最も直接的な原因となったオビ=ワンとの火山での対決は、満を持しての映像化となり、ライトセーバーを使った戦いとしては映画史上最も長く描かれた。

『シスの復讐』で中心に描かれるのは、暗黒面に堕ちていくアナキンの葛藤だ。これまでもアナキンはコントロールできない怒りを見せてはいたが、ジェダイ・オーダーに忠誠なはずだったアナキンがあっさりと暗黒面に転覆する流れは駆け足気味で、わずか10分足らずの間に巻き起こった。

このような矛盾やプロットのほころびは、特に目を光らせなくとも目立って見つかった。たとえば、『ジェダイの帰還』でレイアは母の面影を語っていたはずだったが、『シスの復讐』でパドメはレイアを出産してわずか数秒後に息絶えている。サーガ全編に登場するC-3POとR2-D2には、これまでの記憶を消すいう強硬手段が施された。それでも、後にこのドロイドらと再会するオビ=ワンやヨーダが驚くほど関心を示さない謎は依然として残されていた。

目次に戻る

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016)

あらすじ

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は、スター・ウォーズのメイン・サーガに対して「外伝」に位置づけられる作品だ。ジェダイとシス、ダース・ベイダーとルーク・スカイウォーカーの物語を描くメイン・サーガでは描ききれない「アナザー・ストーリー」にフォーカスを充てるシリーズで、『ローグ・ワン』はその試みの第1作目。ここでは、『エピソード3/シスの復讐』と『エピソード4/新たなる希望』の間の出来事が描かれる。

『ローグ・ワン』は、帝国軍が建設を進めるデス・スター阻止の手がかりとなる設計図の奪還に挑む物語。帝国軍の科学者ゲイレン・アーソは、自らが開発を進めるデス・スターの脅威を恐れて脱走、家族とともに隠遁生活を送っていた。しかし帝国軍の将校クレニックに見つかり、これに抵抗した妻は殺害され、開発現場に強制送還されてしまう。

娘のジン・アーソは、パルチザンと呼ばれる過激派武装グループのリーダー、ソウ・ゲレラに救出されるが、16歳のころに置き去りにされてしまう。実は、パルチザンの中にジンを人質として利用してはどうかという声があり、ソウ・ゲレラはこれを恐れやむなくジンを手放したのだ。

銀河では、武力と恐怖で支配する帝国軍に対抗する者たちが集まり、反乱軍を結成していた。彼らにとって、惑星一つを吹き飛ばすほどの火力を持つというデス・スターの完成はなんとしても食い止めねばならない。そこで反乱軍は、開発者の中心人物であるゲイレンの娘ジンを使って情報を集めようと考え、帝国軍に捕らえられていたジンを救出し、代わりに任務参加を呼びかけた。

良心を持つゲイレンは、帝国軍に気づかれないようデス・スターにとある欠陥を意図的に作っていた。中央部にあるリアクター・モジュールの一部でも破壊すれば、連鎖反応を起こしデス・スターの全てを爆破できるという。ゲイレンは、リアクターを見つけるための設計図を、惑星スカリフにあるシタデル・タワーに隠していた。このメッセージを受け取ったジンは、反乱軍と共に設計図奪還に挑むこととなる。

デス・スターの主力となるスーパーレーザーを完成させた帝国軍は、テスト射撃としてジェダと呼ばれる衛星を砲撃、一瞬にして半壊滅状態に追いやる。『シスの復讐』で殲滅させられたジェダイの名残が多く残るジェダは、今や信仰の対象となっていたフォースやジェダイの信者らにとって聖地となっており、ソウ・ゲレラやパルチザンのアジトも存在していた。

反乱軍情報部のキャシアン・アンドーにK-2SO、ジェダで合流したボーディー・ルック、チアルート・イムウェ、ベイズ・マルバスらの一行は、惑星イードゥーの研究施設に姿を表すゲイレンの暗殺任務に向かう。イードゥーに極秘潜入する一行だが、ジンは任務の内容を知らされていなかった。キャシアンは暗殺をためらったが、反乱軍が現地に飛行部隊による爆撃を仕掛け、巻き込まれたゲイレンは命を落とす。

ジンらは反乱軍本部に帰還し、デス・スターに仕掛けられた欠陥と惑星スカリフにある設計図の存在を知らせてスカリフ攻撃を訴えるが、評議会がこれを却下。やむなく一行は、集った志願兵らと共に貨物シャトルへ乗り込み、スカリフへ独断出撃を試みる。この際、管制塔にコールサインを求められ、ボーディーがとっさに「ローグ・ワン」を名乗る。

ローグ・ワン部隊はスカリフで帝国軍と交戦を起こし、追って駆けつけた反乱軍のラダス提督率いる艦隊も援護に加わる。反乱軍は地上戦で甚大な犠牲を伴いながら、ジンとキャシアンの命がけの活躍によってデス・スター設計図をなんとか奪還、データを大気圏上空のラダス艦隊に送信する。

しかし、デス・スターのスーパーレーザーが惑星スカリフを砲撃し、ジン、キャシアンに帝国軍のクレニックをも巻き込んで壊滅。ローグ・ワンの全員が、ひとり残らず戦地に散った。

スカリフ上空では、ダース・ベイダーの乗るスター・デストロイヤーが到着していた。反乱軍はデス・スター設計図のデータを書き込んだディスクと共に脱出を試みるが、そこに船内にまで乗り込んできたベイダーが立ちふさがる。ライトセーバーとフォースを操り反乱軍兵士をいともたやすく殺めていくベイダーから逃れ、ディスクは接舷されていたタンティヴⅣ船内に渡り、脱出する。

タンティヴⅣ船内で、ディスクは反乱軍のレイア・オーガナ姫の手に渡っていた。義父のベイル・オーガナが、スカリフ戦の直前にとある旧友の助けを求めてレイアを特使として送り出していたのである。その旧友とは、かつて共和国時代を共にしたオビ=ワン・ケノービだった。

解説

ディズニーに買収されたルーカスフィルムは、『スター・ウォーズ』を永遠に終わらないコンテンツとして拡張し続ける方法を模索していた。そこで編み出されたのが、「エピソード」の付くメイン・サーガでは描かれない物語を「外伝」として映画化する手法だった。

プリクエル三部作がそうであったように、クラシック三部作に登場した人物や要素の成り立ちにドラマをもたらすことは、『スター・ウォーズ』にとってお家芸とも言える。『ローグ・ワン』がドリルダウンするのは、帝国軍の恐怖の象徴デス・スターをめぐる物語だ。

『スター・ウォーズ』は一般的にはSF映画とされるが、その略称は正式には「サイエンス・フィクション」ではなく「サイエンス・ファンタジー」と名乗っている。これまでの『スター・ウォーズ』は、ジェダイとシス、フォースといった「ファンタジー」を描く物語だった。それに対して『ローグ・ワン』は、フォースを使えない一般人たちの物語。つまり本作は、『スター・ウォーズ』を初めてサイエンス・フィクションの境地で描いた映画と言える。

『ローグ・ワン』のギャレス・エドワーズ監督は、本作を「戦争映画」として描くことにした。ベトナム戦争や湾岸戦争、第二次世界大戦の記録映像を加工して、Xウイングや反乱軍兵士を合成しながらコンセプトを組み立ていった。製作の前半段階にあったとき、メディアは「これはSF版『プライベート・ライアン』になりそうだ」と期待を込めて完成を待った。

しかし『ローグ・ワン』における最大の戦争は、惑星スカリフではなく制作現場で展開された。本作を『新たなる希望』オープニングの約10分前に繋げたかったディズニーは、やや戦争映画調に傾きすぎた本作のラフカットを観て手直しが必要だと感じていた。製作チームは一般公開のわずか5ヶ月前となった2016年7月、全編の半分に及ぶ量の再撮影を強いられた。伴ってストーリーも再構築を行い、編集スタッフが「ルービック・キューブのよう」と回顧する複雑な作業が発生することになる。加えて、グランド・モフ・ターキンを演じた故ピーター・カッシングをCGで蘇らせるという、前例もなければ途方もない挑戦も注目された。

ジンとキャシアンがシタデル・タワーを登りつめたように、制作陣も怒涛の日々をようやく切り抜けた。大幅な再撮影と再構築が発生した以上、ギャレス・エドワーズ監督による当初の意図がどこまで及んでいたのかはわからない。しかし作品がいざ世に放たれると、特に往年のファンからは「これこそ僕たちが観たかったスター・ウォーズだ」と好意的な評判をもって迎え入れられた。プリクエル三部作を経て悲劇の主人公としての同情を強めたダース・ベイダーは恐怖のヴィランとして改めて蘇り、ターキン提督や若きレイア姫の蘇生はほとんど魔法だった。コーネリアス・エヴァザンとポンダ・バーバ、反乱軍のゴールド・リーダーとレッド・リーダーなど、クラシック三部作の人物もカメオ登場を果たし、「ファンだけが気付けるディティール」はこの上ないファン・サービスとして機能した。

結果として『ローグ・ワン』は、全世界で5億3千ドル以上を稼ぎ出し、2016年劇場公開作品としては1位を記録。『スター・ウォーズ』全作の中では2015年の『フォースの覚醒』に継ぐ2番目の作品となった。

目次に戻る

スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望(1977)

あらすじ

スター・ウォーズ・サーガの全ての始まりとなった『新たなる希望』は、それ自体が優れたスペース・ファンタジーでありながら、これまでのプリクエル三部作の流れを経て観れば更に重厚な物語となる。特に『ローグ・ワン』は、『新たなる希望』オープニングの約10分前までを描く内容になっているので、『ローグ・ワン』と立て続けに鑑賞すれば、スター・ウォーズの物語が世代を超えて驚くほど滑らかにつながっていることを体験できるはずだ。

『新たなる希望』は、『ローグ・ワン』でデス・スターの設計図データを受け取った反乱軍のタンティヴⅣが、帝国軍に追われる場面から幕を開ける。先ほど一度反乱軍を襲ったダース・ベイダーは再び反乱軍の船内に乗り込み、反乱軍特使のレイア・オーガナ姫を捕らえる。しかしレイア姫は直前に設計図とホログラムのメッセージをドロイドのR2-D2に託していた。R2-D2は、C-3POと共に脱出ポッドに乗り込み、惑星タトゥイーンへと向かう。

2体のドロイドは、惑星タトゥイーンに暮らすルーク・スカイウォーカーの元にたどり着く。ルークが自宅でR2を整備していると、レイアが忍ばせたオビ=ワン宛のメッセージが再生される。ルークは、大砂原にひとり暮らすベン・ケノービという変わった老人に心当たりがあった。ベンこそ、オビ=ワンが隠遁生活の際に用いた偽名である。タトゥイーンの水分農場で家業を手伝う青年ルークは、図らずも壮大な運命に導かれようとしていた。

その晩、R2はオビ=ワンを訪ねるため失踪。翌朝捜索に出たルークは、ベンことオビ=ワンに会い、オビ=ワン宅で自身にまつわる運命とジェダイの歴史について聞かされる。オビ=ワンはかつてジェダイの騎士であり、共和国に仕えクローン戦争に出兵していたこと。ルークの父は暗黒面に寝返ったダース・ベイダーに殺されてしまったこと。オビ=ワンは、『シスの復讐』アナキンとの戦いの最後に回収していたライトセーバーをルークに渡し、「フォース」も知らぬルークにその神秘を説いた。

R2-D2は、レイア姫から預かったメッセージをオビ=ワンに見せた。メッセージでは、『ローグ・ワン』でデス・スターの設計図を受け取ったレイアがオビ=ワンの助けを求めていた。オビ=ワンは、レイアの父であり、かつての旧友ベイル・オーガナの待つ惑星オルデラーンにこの設計図を届けなければならない。「助けてオビ=ワン・ケノービ、あなただけが頼りです」──『シスの復讐』のオーダー66以来、シスの報復を恐れ長年姿を隠してきたオビ=ワンだったが、ついに戦いに戻る必要性を感じていた。

奪われた設計図を血眼で探す帝国軍は、R2-D2の後を追ってタトゥイーンを捜索していた。留守中、ルークの暮らすラーズ家は帝国軍に襲撃されており、育ての親も殺害されていた。全てを失い、決意を固めたルークはオビ=ワンと共にタトゥイーンを目指すこととして、まずはモス・アイズリー宇宙港へと向かう。

モス・アイズリー宇宙港では、密輸業者のハン・ソロとその相棒チューバッカと出会い、彼らの宇宙船ミレニアム・ファルコンに乗り込み惑星オルデランへ向けて旅立つ。

設計図を奪い返したい帝国軍は、反乱軍基地の場所を吐かせるためにレイア姫に拷問を繰り返したが、一向に口を割らなかった。そこで帝国軍は見せしめとして、レイア姫の故郷である惑星オルデランをデス・スターのスーパーレーザーで破壊してしまう。

そのオルデランに向かうミレニアム・ファルコンの船内では、ハン・ソロがジェダイの訓練に挑むルークに対し、ジェダイやフォースの一切を馬鹿げたインチキだと嘲笑する。オルデランがあるはずの座標に到着するが、そこにあるのは小惑星だけだった。ファルコン号のコックピットから見える視界の向こうに衛星のような存在が見えるが、すぐにそれはデス・スターであると分かる。一行はトラクタービームに捕らえられてしまい、図らずもデス・スター内への潜入を余儀なくされてしまう。

機転を利かしてトルーパー兵を騙し討ち、敵に変装した一行は司令センターに侵入し、トラクタービームの制御装置の場所を確認するとオビ=ワンが1人で装置のもとへ向かう。ルークらは留守を頼まれたが、R2がデス・スター内にレイア姫が捕らえられているとの情報を掴むと、一行は姫の救出に独断で挑む。

レイアが捉えられた監房に辿り着いたルークらだったが、脱出時にトルーパーらの攻撃に退路を絶てれてしまう。咄嗟にシャフトに飛び込み、ゴミ圧縮機に逃げ込んで一命を取り留める。

一方格納庫では、宿命の戦いが再び勃発しようとしていた。オビ=ワン・ケノービとダース・ベイダー、かつて師弟関係にあった2人は互いの接近を悟っていた。かつてのパダワンに再会したオビ=ワンはベイダーとの対決に挑むが、ベイダーが指摘するように、長い隠遁生活を経てその力は衰えていた。しかし、ルークたちが格納庫に戻ってきた姿を確認すると、オビ=ワンはライトセーバーを斬り、構えを解く。

「タトゥイーンは寂しかろう そういうときには訓練を」──実はオビ=ワンは、『シスの復讐』オーダー66から逃れた直後、ヨーダから新たな修行を言い渡されていたのだ。ジェダイの道は、極めれば自身の存在をフォースと一体化させ、永遠の存在(ゴースト)となることができる。『ファントム・メナス』でダース・モールに敗れたクワイ=ガン・ジンがこの究極奥義を体得しており、「フォースの冥界」から戻ったというのである。オビ=ワンはタトゥイーンで隠遁生活を送っている間、クワイ=ガンのゴーストと対話しながらこの術を会得する修行に挑んでいたのだ。

そして今、ルークの姿に「希望」を見出したオビ=ワンに、この奥義を実行する瞬間が訪れた。ベイダーの一振りが自らの身体を切り裂く瞬間を見計らい、オビ=ワンはあまねく宇宙に漂うフォースと一体化し、姿を消した。

見た目にはオビ=ワンがベイダーに殺害されたように見える様を目撃してしまったルークは驚き、怒りに取り乱しながらも、どこからともなく聞こえるオビ=ワンの声に従ってファルコン号に乗り込み、デス・スターを脱出。一行は惑星ヤヴィンの反乱軍の基地で軍に合流する。『ローグ・ワン』で命をかけた戦闘を経て奪還され、レイア姫の手からR2-D2に託されたデス・スターの設計図が、ようやく反乱軍の会議にて分析にかけられることとなる。リアクター・モジュールに一撃を仕掛ければ、連鎖反応で全てを爆破できる──ゲイレン・アーソが秘密裏に仕掛けた攻略法を突き止めた反乱軍はデス・スターに向けて出撃、ルークもこれに加わることとなる。

反乱軍の作戦は、小型機を操縦してデス・スター地表のわずかな溝に潜り込み、リアクター・モジュールに通ずる小さな排熱孔にプロトン魚雷を撃ち込むという危険極まりないものだった。加えてデス・スター出撃の直前、ハン・ソロが私用のため反乱軍から離脱してしまう。

デス・スターに出撃した反乱軍は帝国軍の激しい攻撃に遭い、戦闘機は次々と撃ち落とされていく。最後の生存者となったルークは敵の攻撃をかいくぐりながら排熱孔に接近するが、背後からダース・ベイダーの戦闘機が迫る。そこに舞い戻ったハン・ソロのミレニアム・ファルコンがベイダーの機体を弾き飛ばし、ルークはオビ=ワンの声に助けながらプロトン魚雷を排熱孔に見事命中。『ローグ・ワン』でゲイレンが仕掛けた罠が見事作用し、デス・スターは爆破される。

この戦いは「ヤヴィンの戦い」と呼ばれ、スター・ウォーズの歴史を物語る際の重要な指標となる。我々の世界で言う「西暦」が、イエス・キリストの誕生を基として「紀元前」「紀元後」と呼ぶように、スター・ウォーズの世界は「ヤヴィンの戦い前(BBY)」「ヤヴィンの戦い後(ABY)」という基準で年号を表すこととなるのだ。

解説

狂乱は、すべてこの1本の低予算スペース・ファンタジーから始まった。

ジョージ・ルーカスは、小さい頃に熱中したコミックとTVシリーズ『フラッシュ・ゴードン』を手本とした宇宙を舞台とした冒険活劇を作りたかった…というより、正確には『フラッシュ・ゴードン』の映画を手がけたいと考えていた。しかし権利上の都合で叶わず、仕方なく独自のスペース・ファンタジーを考えてみた、というのが『スター・ウォーズ』誕生の実のところである。

メモ用紙にキャラクターや設定を書き起こしていったルーカスは、わずか2枚目にして行き詰まることになる。頭から行儀よく書き進めることを諦めたルーカスは、早速「第二部」を考えてみた。数年がかりに及ぶ長い物語は、架空の歴史書「ホイルス銀河史」からの言い伝えということにした。

ルーカスは『隠し砦の三悪人』をはじめとする黒澤作品の影響を無意識下に受けながら、「ホイルス銀河史」のアイデアを大幅に見直して概略を書き直し、「ザ・スター・ウォーズ」としてまとめあげると、ひとまず筆を置いた。『フラッシュ・ゴードン』を夢見て描かれたスペース・ファンタジーは、ルーカスが言う所の「『アラビアのロレンス』やジェームズ・ボンドの『007シリーズ』、『2001年宇宙の旅』の混合物」となり、砂漠の惑星でドロイドやスピーダーを砂埃にまみれさせた。これは、艶めいた近未来を描いて飽和状態に陥っていたSF作品群の中で、「薄汚れた宇宙」を描くという画期的な発明だった。

今日まで続くスター・ウォーズの壮大なユニバースは、すべてジョージ・ルーカスの頭の中で想像され、それこそフォースのような神秘の術で書き下ろされたように想像する者もいるかもしれない。実際は真逆だ。ルーカスは物書きは不得手だった。苦手な執筆は先延ばしにする癖があり、締め切りギリギリに追い詰められて初めて慌てて書き始めた。本人や周囲の人物の発言によれば、執筆を苦にするあまり壁に頭を打ち付けて叫んだり、ストレスにやられてハサミで髪の毛を切り捨てたりもした。

苦しみもがきながら、ルーカスは『ザ・スター・ウォーズ』を幾度となく書き直し、我々が知る遥か彼方の銀河系の物語を少しずつ築き上げていく。主人公のルーク・スカイウォーカーは、もとは高齢の仙人のような将軍で、第二稿ではルーク・スターキラーの名の若者になり、第三稿ではしばらく女性の設定にもなった。ルーカスは粘土をこねくり回すようにして『スター・ウォーズ』を完成させた。ちぎっては捨て、また付け足した。後年になって、この過程でちぎられた粘土の名残は、続編で活かされることになる。ほんの一例として、『ホイルズ銀河史』は『ローグ・ワン』でチアルートが属した宗教組織「ウィルズの守護者」に流用され、「スターキラー」の名は『フォースの覚醒』でファーストオーダーの基地名として使われた。

1977年5月25日の公開までほとんど注目されていなかった『スター・ウォーズ』だが、公開されるやいなや、当時の劇場の一週間分の興行収入を初日だけで売り上げるほどの大ヒットとなった。神ならぬフォースがショットの細部にまで宿った『スター・ウォーズ』には、何度観ても得られる発見があったので、「自分だけが気付いた」詳細を披露しあって悦に浸るナードの知的探究心をくすぐった。上映を追えた後も座席に居座り、繰り返し鑑賞を続ける観客が後を絶たなかったので、アメリカの劇場では本作を機に観客の入れ替え制度が普及した。

目次に戻る

スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲(1980)

あらすじ

『帝国の逆襲』は『新たなる希望』の3年後を描く。帝国軍の威信をかけたデス・スターの破壊を許してしまったダース・ベイダーは、皇帝パルパティーンからの信頼を回復せねばならなかった。ダース・ベイダーは、デス・スター破壊の一撃を加えたのがルーク・スカイウォーカーであることを突き止めるのだが、この間の物語はコミック『スターウォーズ:スカイウォーカーの衝撃』で語られている。

『新たなる希望』でヤヴィンの戦いに勝利した反乱軍は、氷の惑星ホスに新たな秘密基地を創設していた。極寒の地をパトロール中だったルークは、この地に生息する獰猛なクリーチャー、ワンパに捕らえられてしまう。目を覚まして危機を脱したルークだが、吹雪の中で迷い衰弱し、瀕死に倒れる。すると目の前にベン・ケノービのゴーストが現れ、惑星ダゴバのジェダイ・マスター、ヨーダを訪ねろと伝えて消えてしまう。ルークは、ハン・ソロと反乱軍パイロットによって救出され無事一命を取り留める。

ダース・ベイダーは惑星ホスに反乱軍の存在があることを嗅ぎつけると、艦隊を率いてホスへ向かう。反乱軍も敵の襲来に備えホス脱出を急ぐ中、ルーク・スカイウォーカーら反乱軍部隊が帝国軍の地上戦力の足止めにかかる。基地から出撃した部隊には、ローグ・ワンの意志を継いでローグ中隊と名付けられた。

帝国軍の歩行兵器(ウォーカー)の猛攻に反乱軍は劣勢を強いられ、ついにダース・ベイダーが基地へ乗り込んできた。レイア姫はハン・ソロのファルコン号に乗り込み、ギリギリのところで脱出に成功する。ローグ中隊も続々とホスから逃げ出し、各機は集合地点を目指す。ただし、ルークはR2-D2と共に惑星ダゴバへ向かっていた。ベン・ケノービが伝えたように、ヨーダなる人物に会うためだ。

泥沼の惑星ダゴバに不時着したルークは、乗ってきたXウイングを沼に沈めてしまう。右も左もわからず途方に暮れるルークのもとにヨーダが現れるが、その姿は『クローンの攻撃』『シスの復讐』で見せた勇ましい姿とは異なり、老いぼれた奇妙な緑の生物のようだった。まさかこの小さな老人が探し求めているジェダイ・マスターだとは思いもしないルークは無礼を働くが、身分を明かしたヨーダを前にすっかり萎縮してしまう。

ヨーダは『ファントム・メナス』でアナキン少年に対してもそうであったように、ルークのジェダイ修行を受け入れようとしない。忍耐力を欠いたアナキンを暗黒面に奪われた過去を持つヨーダにとって、父同様に落ち着きのないルークまで不要に鍛えたせいで父と同じ末路を辿らせることは最も避けねばならなかった。しかし、オビ=ワンのゴーストの声に諭され、渋々ながら修行を受け入れることにするのであった。

一方、ホログラム姿の皇帝パルパティーンに謁見していたダース・ベイダーは、ルークこそアナキン、つまり自身の子孫であることを見抜かれる。皇帝はルークを敵にまわしてしまうのは危険だと考え、暗黒面に招き入れて戦力に加えるよう指示を下していた。

帝国軍の追手から逃れていたハン・ソロとレイアらは、ハンのかつての悪友ランド・カルリジアンの元で匿ってもらうべく、ランドが統治する惑星ベスピンはクラウド・シティを訪れた。ランドはハンらをもてなすが、同行したC-3POが姿を消すなど不穏な空気が漂う。実はここクラウド・シティは、ハン一行が到着するより一歩早く、ダース・ベイダーら帝国軍に押さえられていた。ハンらが到着した時点で、ランドはベイダーに買われていたのだ。

惑星ダゴバで修行に励むルークは、フォースの能力でハンやレイアの危機を察知していた。修行を投げ出して救出に向かうルークを、ヨーダとオビ=ワンのゴーストは必死に制止するも、ルークは聞く耳を持たなかった。

ルークがクラウド・シティに到着した頃、ハンらは既にベイダーに捕らえられていた。これはルークをおびき寄せるための罠だった。ベイダーはルークをカーボン凍結させたいと考えていたが、生かしたまま凍結できるかどうか、ハン・ソロの身体を使って試すことにした。カーボン凍結されたハン・ソロは、凄腕の賞金稼ぎであるボバ・フェットに渡された。ボバ・フェットは、『クローンの攻撃』で製造されていたクローン軍団の遺伝子ホストとなったジャンゴ・フェットの完全クローン体だ。

クラウド・シティでハン・ソロやレイアの行方を追うルークの前に、ダース・ベイダーが現れる。ベイダーはルークに対し「よく学んだな」と発しているが、実はこの2人はコミック『スター・ウォーズ:スカイウォーカーの衝撃』で一度相まみえているのだ。

まだ修行の途中段階にある未熟なルークはベイダーの実力に敵わず、次第に圧倒されていく。なんとかカーボン凍結は回避できたルークだったが、ベイダーの強力な攻撃によって身体を投げ出され、追い詰められて退路を絶たれる。ベイダーの猛攻はひるまず、ライトセーバーを握ったルークの右腕を斬り落とす。ベイダーは、もはや武器も失ったルークに手を差し出し、ルークの父親は自分であることを告げる。衝撃と絶望に駆られたルークは自殺同然に身を投げ出すが、通気口に吸い込まれクラウドシティ下部のアンテナに放り出されて一命を取り留める。フォースを通じてベンやレイアに助けを呼びかけると、先に脱出していたレイアはこれを感知して救出に戻る。

レイアとランドらが無事にルークを回収すると、反乱軍艦隊の合流地点に到達。かつての父アナキンのように、ルークの失われた右手には機械の義手が取り付けられる。

スター・ウォーズ ルーク・スカイウォーカー

解説

今日まで続く『スター・ウォーズ』の徹底した秘密主義の極みが、『帝国の逆襲』ベイダーの正体だ。倒すべく悪その人が、実は主人公の肉親だったという大サプライズは、撮影では「オビ=ワンがお前の父だ」というダミーのセリフが与えられており、撮影現場に居合わせたスタッフや出演者も『帝国の逆襲』が公開されてはじめて本当のプロットを知り、度肝を抜かれたという(ルーク役のマーク・ハミルだけは事実を知らされていた)。「私がお前の父親だ」というセリフは、ダース・ベイダーの声優を担当したジェームズ・アール・ジョーンズによって撮影後に差し替えられている。

多くのスター・ウォーズ・ファンが、本作『帝国の逆襲』をベスト・エピソードに挙げる理由はなぜか。「私がお前の父親だ」の捻りもさることながら、力強いストーリーが支持されたのだ。前作『新たなる希望』では、外界に憧れる田舎の少年ルークの旅立ちと初めての冒険を描いていたが、本作では年長者のハン・ソロにスポットライトが充てられ、暗黒面の力がはびこる帝国軍の内情も語られた。深奥なるヨーダの説法も、物語に神秘性をもたらした。『スター・ウォーズ』の物語世界が、本作で劇的に広がり、掘り下げられた。

それぞれのシークエンスを物語る際の映像も芸術的だった。『帝国の逆襲』は、銀河に絵の具をばらまいたような作品だ。冒頭の惑星ホスでは、濁りない雪原をダイナミックに映し、惑星ダゴバではうっそうとした湿地の木枝が、岩陰の爬虫類さながらに画面を這った。空中に佇むクラウド・シティでは、オフホワイトの室内から昼と夕が溶け混ざるセンチメンタルな空を覗かせた。ベイダーの声は、後戻りができないほど濃紺の影でシスのライトセーバーを不気味に灯し、我が子を闇に誘う。

『帝国の逆襲』は、ジョージ・ルーカスのもとを離れてアーヴィン・カーシュナーの腕に託されていた。10年前、カーシュナーは学生時代のルーカスの処女作品『THX1138 4EB』を、学生映画祭の審査員として大賞を与えていた縁だった。美的感覚について完璧主義者だったカーシュナーは、『帝国の逆襲』を忘れがたい作品にする鮮烈な色使いでパレットを彩った。批評家の評判も上々で、1980年の公開作としは第1位の興行収入を記録した。

『帝国の逆襲』でハン・ソロはダース・ベイダーによってカーボン凍結されるが、硬直して息を詰まらせたのは当時の観客も同じだ。『帝国の逆襲』では、ルークがベイダーに破れ、ハン・ソロが敵に奪われるという敗北で終わる、いわゆる「クリフハンガー」として幕を閉じた。連続ドラマならいざしらず、当時の観客は3年後の『ジェダイの帰還』公開まで物語の続きを待たなければならなかった。ベイダーの発言は真実だったのか?ファンらは同じ議論を何度も繰り返したという。もしも当時インターネットがあったなら、考察記事が星の数ほど挙げられていただろう。幸い現代の観客には、好みのペースで次作に進むことができる。

目次に戻る

スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還(1983)

あらすじ

クラシック三部作を締めくくる『ジェダイの帰還』は、前作『帝国の逆襲』から半年後が舞台となる。本作では、『ファントム・メナス』からここに至るまでに語られてきたダース・ベイダー/アナキン・スカイウォーカーをめぐる運命が(ひとまず)完結することとなる。

『帝国の逆襲』でカーボン凍結されたハン・ソロの身柄は、賞金稼ぎのボバ・フェットを通じて犯罪王ジャバ・ザ・ハットの元に渡っていた。銀河の裏社会の元締めとなるジャバは、惑星タトゥイーンに自らの宮殿を構えている。R2-D2とC-3POがソロ解放を懇願するルークのメッセージと共にジャバを訪れるが一蹴され、2体は奴隷ドロイドにされてしまう。

続いて賞金稼ぎに変装したレイアが、チューバッカを捕まえたとして宮殿に現れる。ランド・カルリジアンも変装して潜入する。チューバッカは監禁されるが、レイアは宮殿へ溶け込むことに成功し、夜間寝静まった隙を狙ってハン・ソロの凍結を解く。しかし一連の企みはジャバに見透かされており、レイアもジャバの奴隷として捕らえられてしまう。

そこに、ローブを纏いジェダイらしい姿となったルークが現れ、仲間の解放を要求する。これを聞かなかったジャバはルークをペットの怪物ランコアの餌食にさせようとするが、ルークはこの怪物を返り討ちにする。いよいよ激怒したジャバはルークとハン・ソロ、チューバッカに死刑を言い渡す。

その処刑方法は、砂丘海で大きな口を開ける穴に生息する人喰いクリーチャーのサルラックの餌にするというものだった。ルークは、R2-D2の助けで新しいライトセーバーを手に取り、ジャバの護衛たちに抵抗する。ハン・ソロやチューバッカ、護衛に変装していたランド・カルリジアンも攻防戦に加わり、途中でボバ・フェットが事故死を遂げる。騒ぎに乗じてレイアがジャバ・ザ・ハットを絞殺し、一同は合流し脱出に成功する。

タトゥイーンを後にした一行は二手に別れ、ルークはジェダイとしての修行を終えるために惑星ダゴバへ戻った。しかしヨーダは老衰しており、ベイダーの対決を経てはじめてジェダイとなれること、ルークの他にもうひとりスカイウォーカーの血を引くものが存在していることを告げて実体を消失させた。オビ=ワンと同じように、フォースと一体化したのである。

オビ=ワンのゴーストが現れ、ルークにまつわる運命をようやく明かし始める。『新たなる希望』では、ルークの父はベイダーに殺されたと伝えていたオビ=ワンだったが、これは見方によっては正しいという。善人アナキンは暗黒面のベイダーに転向したことで事実上殺されたのだと説いた。その上で、ルークには双子の妹がいることを伝えると、ルークはすぐにレイアこそが妹であると気づく。オビ=ワンは、妹の存在を皇帝に悟られてはいけないと警告する。ルークは反乱軍のもとへ戻り、作戦会議に合流する。

帝国軍は、『新たなる希望』で破壊されたデス・スターを再度開発していた。これは「第二デス・スター」と呼ばれ、初代デス・スターよりも巨大で強力だった。新しいデス・スターは、森の惑星エンドアの装置から発生する防衛シールドで守られており、攻撃を寄せ付けないという。反乱軍はデス・スター破壊作戦として、まずハン・ソロ、レイア、ルークの地上部隊を惑星エンドアに送り込みシールド発生装置を破壊させ、戦闘機隊をデス・スター内部に潜り込ませてリアクター・モジュールを破壊する計画を練った。

ルークらの攻撃部隊はエンドアに向かうが、帝国軍の皇帝パルパティーンとダース・ベイダーはこの作戦に勘付いていた。パルパティーンはエンドアに強力部隊を配置しており、一行の中にルークが混じっていることを感知したベイダーも彼らの着陸をわざと許していた。

シールド発生装置の側で敵兵に見つかるとルークらの編隊はかき乱される。一行からはぐれたレイアはエンドアの原住民イウォーク族と出会い、種族に迎え入れられていた。一方のルークらもイウォーク族と接触するが、こちらは獲物として捕らえられていた。イウォーク族は金色に輝くC-3POを見ると神と勘違いし、ルークたちは神に捧げる生贄として火にかけられようとしていた。ルークはフォースを操ってC-3POを浮遊させると、「神の魔力」を恐れたイウォーク族に解放される。C-3POがこれまでの冒険を説き伝えると、イウォーク族らは一行を仲間として迎え入れ、帝国軍との戦いへの参加を表明する。

ルークは、ベイダーが自分を狙ってこの惑星に来ていることを察知しており、ベイダーの正体は父であることをレイアに伝える。さらに、レイアが自分の妹であることを告げると、レイアも直感的に気付いていたという。暗黒面に堕ちた父を救えるのは自分だけであるとの決意を伝え、エンドアの霧夜に消えていく。2人の間に何かしらの秘密を感じたハン・ソロは嫉妬を隠せない。

エンドアに降り立ったベイダーは、ルークとの再会を果たし、束の間の親子の会話が交わされる。ルークは父ベイダーの改心を訴えるが、ベイダーは息子を暗黒面に招き入れることだけを考えるようだった。しかし、ルークが漏らした「父は完全に死んだわけだ」という言葉は、ベイダーの奥深くに眠る善の心に、わずかに響いていた。

ルークはベイダーに連れられ、ついに帝国軍の皇帝パルパティーン、またの名をダース・シディアスとの対面を果たしていた。かつて共和国のいち議員だったころより秘密裏に策略を巡らせ、共和国の転覆、ジェダイの殲滅、そして帝国軍の創設までやってのけたこの恐るべき闇の策士にとって、反乱軍の動きを読むことなど容易い。皇帝は、エンドアとデス・スターへの連携攻撃などいとも簡単に見破っていた。ルークは後に引けず、皇帝の眼前でライトセーバーを取り、ベイダーとの対決に挑むこととなる。

すべては皇帝の仕掛けた罠であったことなど露知らず、反乱軍の宇宙艦隊はエンドアの地上攻撃部隊がシールド発生装置を破壊してくれることを信じてデス・スターに出撃していた。しかし、シールドは未だ健在、さらに開発中と思われていたデス・スターのスーパーレーザーが完成しており、砲撃を加えてきたのである。

しかし、パルパティーンでも予期できていないことがふたつあった。

ひとつは、森の惑星エンドアでシールド発生装置を狙う反乱軍の攻撃部隊が、複雑な地形を熟知した原住民イウォークを味方につけていたことである。番狂わせとなったイウォーク族は原始的な武器ながら帝国軍部隊を翻弄し、この助けを借りて反乱軍はついに基地を制圧、シールド発生装置の破壊に成功する。これにより、宇宙艦隊はデス・スターへ潜り込んでの攻撃に挑めることになった。

パルパティーンが決して予期できなかったこと…そのもう一つは、アナキン・スカイウォーカーがジェダイとして「帰還」したことだ。

ダース・ベイダーは、ルークの双子の娘レイアの存在を悟り、彼女を暗黒面に引きずり入れると脅迫。激昂したルークは怒りに支配され、暗黒面の片鱗を見せながらベイダーの右腕を叩き斬る。弱ったベイダーの呼吸は短く途切れ、腰をつき降参したような姿勢となった。斬られた右腕からは、血の通わない動線が飛び出しており、煙が上がっていた。我に返ったルークは、自らも機械化された右腕を見ながら、自分と父は同じ親子である実感をそのグローブで握りしめ、ライトセーバーを捨てる。ルークが信じ続けた父は、ジェダイだった。アナキン・スカイウォーカーだった。「僕はジェダイだ。かつて父がそうだったように」──皇帝パルパティーンの誘いを完全に断ったルークを、パルパティーンの電撃が襲う。父の助けを求めて叫ぶルークを、パルパティーンは一切の容赦なく殺害しようとした。

ダース・ベイダーは、思い出していた。かつて『シスの復讐』でメイスを襲ったパルパティーンの稲妻を。ジェダイか、シスか。選択を迫られたアナキンは、あの時シスになびいた。気づけば、愛すべき妻パドメは死に、尊敬すべき友オビ=ワンは憎むべき敵に、平和がもたらされるはずの銀河には恐怖が蔓延っていた。そして今、またも大切なものの命が眼前で潰えようとしている。
ダース・ベイダーのなかに、アナキン・スカイウォーカーが蘇った。「フォースにバランスをもたらす」ジェダイが長い時を経てついに帰還し、自らも被雷しながらパルパティーンをリアクターに投げ入れた。パルパティーンは、奈落の底で不気味な轟音に消えた。

その頃デス・スター内部では、反乱軍の攻撃部隊がリアクター・モジュールめがけて道なき航路を縫うように飛んでいた。反乱軍艦隊の総攻撃もあり、デス・スター内では既に退避が始まっている。兵士らは避難に必死で、衰弱したベイダーに目をくれるものなど、もういない。電撃の影響で呼吸器も故障したベイダーの死期がすぐそばまで迫っていた。ルークはベイダーのマスクをその手で外し、親子は初めて素顔での対面を果たした。「お前は正しかった。私には善の心が残っていた。妹にも伝えてくれ」──ジェダイとして、そして父としてルークにかけてやる最初で最後の言葉となった。

反乱軍は、ついに第二デス・スターのリアクター・モジュールの破壊に成功。爆破を起こすデス・スターから退避し、ルークも父の亡骸を連れて脱出していた。

第二デス・スターを破壊し、ダース・ベイダーに皇帝も倒した反乱軍の大勝利を、全銀河が祝っていた。ルーク、ハン・ソロ、レイアら反乱軍の英雄らは、勝利に大きく貢献したイウォーク族とエンドアで祝賀会を開いていた。レイアはルークが兄であることをハン・ソロに伝えることで、2人は晴れて結ばれることになった。ルークは森の中で1人、父の亡骸を焼いた。炎を上げ、火の粉が舞うアナキンの魂は今、フォースと一体となった。

祝賀の場に戻ったルークの姿を、オビ=ワンとヨーダのゴーストが少し誇らしげに見守っていた。ルークは、そこにアナキンのゴーストが加わったのを見た。ほんの少し照れるように現れたアナキンを、オビ=ワンとヨーダも迎え入れた。

アナキンの魂は、安らいでいた。仲間たちに囲まれた息子の笑顔を、嬉しそうに見つめながら…。

解説

『ジェダイの帰還』で英雄たちは、まず奪われた盟友ハン・ソロを救わなければならなかった。ハン・ソロが凍結されたのには、製作上の事情があった。ルーカスは、3作目でハリソン・フォードが出演契約書にサインしない万が一のケースを考えて、保険としてハン・ソロを冷凍させておいたのだ。『帝国の逆襲』のヨーダも、ルークのメンターとなるオビ=ワン役のアレック・ギネスがゴースト姿での出演を渋った時のための替えとしてこしらえたキャラクターでもあった。

アレック・ギネスやハリソン・フォードも引き続き出演できることとなり(ハリソン・フォードは、劇中でハン・ソロを殺すよう懇願した自殺志願者ではあったが)、『ジェダイの帰還』の製作は進められた。しかし、『帝国の逆襲』での完璧な仕事を遂行しきったアーヴィン・カーシュナーが『ジェダイの帰還』の内容に納得しなかったため、ルーカスは新たな監督を探す必要があった。そこでルーカスは友人のスティーブン・スピルバーグに監督を依頼するが、当時『E.T.』の企画にあたっていたため叶わなかった。続いて交渉に入ったデヴィッド・リンチは、イウォーク族の初期段階の写真を見せられた三日後にこれを辞退している。

最終的に『ジェダイの帰還』監督は、ビートルズを題材としたテレビ映画や、ドナルド・サザーランド(ドラマ『23 -TWENTY FOUR-』主演キーファー・サザーランドの父にあたる)主演の『針の眼』などを手がけていたイギリスのリチャード・マーカンドに決まった。しかし、事実上現場を仕切っていたのはジョージ・ルーカスだったという。

ルーカスは、本作の副題を『ジェダイの帰還(Returun)』にすべきか『ジェダイの復讐(Revenge)』にすべきか、直前になっても悩んでいた。「帰還」よりも「復讐」の方がインパクトがあると感じられていたルーカスフィルムが一般人を対象に行った電話アンケートでも、「復讐」を選んだ声が勝っていたという。一方で、ヒーローは「復讐」などしないだろうという意見も理解していた。結局、公開まで半年を切った時点で『ジェダイの復讐』の副題は『ジェダイの帰還』に急遽変更された。関係者らは、ポスターの刷り直しや予告編の作り直し作業に追われた。また、玩具メーカーのケナー社は、『ジェダイの復讐』パッケージのアクション・フィギュア25万ドル相当を破棄せねばならなかったという。

『ジェダイの帰還』で、アナキン・スカイウォーカーの物語は幕を下ろした。物語でベイダーの亡骸はルークによって火葬されるが、この喪主を務めたのはルーカスだった。実はこのシーンは追加撮影によるもので、当初は脚本にないものだった。もともとベイダーの最期は、デス・スターで死を遂げるシーンだったが、これでは何らかの形で再登場を期待される可能性があった。編集スタッフからこうした指摘を受けたルーカスは、ベイダーの亡骸を燃やすことで彼の生涯を完全に終わらせたのだ。だが、ダース・ベイダー/アナキン・スカイウォーカーの魂は、その後ファンらの議論によって再び目を覚ますことになる。

惑星エンドアで反乱軍とイウォーク族が勝利を祝うラストシーンで、姿を表すアナキン・スカイウォーカーのゴースト姿が、一部内容の修正・編集が加えられた2004年版の『特別篇』にてセバスチャン・ショウから『クローンの攻撃』『シスの復讐』で若きアナキンを演じたヘイデン・クリステンゼン演じる姿に差し替えられた。これは、セバスチャン・ショウが当時マスターであるオビ=ワン役のアレック・ギネスよりも年上になっているという矛盾を解消し、さらにアナキンの精神がフォースの暗黒面に堕ちる直前のジェダイの騎士だった頃のものに帰還するというドラマ性を強めた。また、観客がプリクエル三部作で追ったアナキンが若かりし頃の姿のまま、ルークとアイコンタクトを交わすというのも感動的なクロスオーバーとなった。

一方で、年老いたアナキン=セバスチャン・ショウの姿を消し去るということは、暗黒面に堕ちた後のアナキンの葛藤の人生、ならびに最期に力を振り絞ってシディアスを倒し、ルークに心を開いた偉大なる「帰還」を否定しているではないかという観方も生じた。ベイダーと化して尚、アナキンとして残り続ける善の心を信じて息絶えたパドメも報われなくなってしまう。

細かな指摘は挙げられるものの、『スター・ウォーズ』サーガは大団円の中で幕を閉じた。悪は滅び、仲間たちの笑顔が残った。90年代に入ると、映画以外のスピンオフ作品が、小説やゲーム、コミックなどでとめどなく展開された。ルークはマラ・ジェイドと結婚しベンの名の子を授かり、ハンとレイアの間にはジェイセン、ジェイナ、アナキンの名の子供たちが生まれ、新たな物語を描いた。しかしこれらの「拡張世界」はディズニーによる買収後のルーカス・フィルムに「カノン(正史)」に対する「レジェンズ」と区別され、事実上「なかったこと」となった。そして、新たな『スター・ウォーズ』サーガが覚醒することになる。

目次に戻る

スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015)

あらすじ

『フォースの覚醒』は、『ジェダイの帰還』エンドアの戦いから30年後が舞台。滅ぼされた帝国軍は莫大な賠償金を支払い、誕生した新共和国と銀河協定を締結した。銀河に再び秩序をもたらすため、ルーク・スカイウォーカーは新たなジェダイ騎士団の再建にあたったが、とある訓練生の裏切りによって崩壊、ルークは姿を消した。それに伴い、帝国軍の残党が新共和国に反旗を翻し、新軍事組織であるファースト・オーダーが創立。新共和国の協定を違反して密かに軍事拡大を進めていた。

レイア・オーガナはこの動きを察知していたものの、新共和国は協定があるから大丈夫だろうとこれを重視していなかった。レイアはやむなく有志を募った私設軍隊レジスタンスを結成、自らは将軍の座についた。

帝国軍を滅ぼしたように、ファースト・オーダーを制圧するにはルーク・スカイウォーカーの力が必要となる。レジスタンスのエース・パイロットであるポー・ダメロンは、ドロイドのBB-8と共に砂漠の惑星ジャクーにいる探検家のロア・サン・テッカを尋ねていた。ポーはルーク・スカイウォーカーの居場所を示す地図を入手するが、そこにファースト・オーダーの部隊が襲来。姿を表したのは、新たなトルーパー部隊を率いるキャプテン・ファズマと、カイロ・レンだった。

ダース・シディアスとダース・ベイダー亡き後、シスの暗黒卿は存在しなくなっており、一部ではシディアスとベイダーを神格化したカルト集団が勃発していた。カイロ・レンもベイダーを崇拝する1人で、カルト系武装集団「レン騎士団」を結成、シスと同じように赤いライトセーバーを操りファースト・オーダーのために働いていた。

ルークの存在はファースト・オーダーにとって脅威だった。カイロは、ロア・サン・テッカがルークの地図を入手したと知り剥奪に現れたのだ。カイロは抵抗したロアを殺害、ポーも捕らえる。ファースト・オーダーのトルーパー兵によって村は焼き払われるが、兵の中でただ1人、FN-2187は無慈悲な破壊活動に参加できずにいた。

任務から戻ったFN-2187は、なぜ村への攻撃に参加しなかったのかを問い詰められ、武器の故障のせいだと嘘をつくが、点検を命じられ立場を失うことになる。ついに良心の限界を迎えたFN-2187は、カイロ・レンの拷問を受けていたポーと即席のコンビを結成し、タイ・ファイターを盗んで脱走。機内にてポーより「フィン」の呼び名を授かる。脱走は成功したかに見えたが、追跡するスター・デストロイヤーの攻撃を被弾し惑星ジャクーに不時着する。目を覚ましたフィンは、姿の見えなくなったポーのジャケットを回収して、人気(ひとけ)のある場所を目指した。

その頃、ポーからルークの地図を託されていたBB-8は、ファースト・オーダーから逃れるのちに少女レイと出会っていた。レイは両親もなく、砂漠の惑星ジャクーで廃品漁りをしながらその日暮らしをするホームレスの少女だ。フィンはレイとBB-8に出会うと、咄嗟に身分をレジスタンスの一員だと偽る。

そこにBB-8を追うファースト・オーダーが襲う。レイとフィン、BB-8は長年この地に保管されていたミレニアム・ファルコン号に乗り込み、タイ・ファイターを撃破してジャクーを脱出する。

ファルコン号は宇宙空間を飛行中に故障、大型貨物船に捕らえられることになる。そこに乗り込んできたのは、かつてのファルコン号のオーナー、ハン・ソロとその相棒チューバッカだった。

『エンドアの戦い』後生まれのレイとフィンにとって、反乱軍の物語は伝説であり、ハン・ソロやルークはその伝説に登場する英雄だった。「スカイウォーカーの地図を持っている」と告げたフィンにハンは懐かしそうな顔を見せるが、ハンが移送中の巨大クリーチャーのラスターが船内で脱走、そこにハンを追ったギャング団も登場し、一座はアクシデントに見舞われる。ハンは新たに従えた若者を乗せ、ミレニアム・ファルコンで脱出。その船内でハンは、レイの並外れたエンジニア能力に気づく。そして、ジェダイやシス、フォースの存在が真実であることを、神妙な面持ちで2人の若者に告げる。かつて『新たなる希望』で、オビ=ワンの指導のもとフォース訓練に励むルークを見て「インチキだ」と笑ったのとまったく同じ場所で…。

ハンは、BB-8をレジスタンスに届ける協力を仰ぐため、惑星タコダナの古い友人マズ・カナタを訪ねることにした。マズは銀河のならず者が集う酒場を1,000年以上切り盛りする老人で、ジェダイではないものの様々な情報に精通し、独特の胆力を持っている。どうやらレイアとの再会や、ファースト・オーダーとレジスタンスの戦闘から距離を置きたい様子のハンだが、マズは自分でレイアのもとにBB-8を届けるべきだと諭す。

フィンは、自身がレジスタンスではなくストーム・トルーパーである事実をレイに明かす。その直後、レイは酒場の地下室から少女の叫び声を聞き、声を追って階段を降りていく。自ずと開いた扉の奥へ進むと、古びた木箱に行き当たる。中に入っていたのは、アナキンからオビ=ワンによってルークの元に渡り、『帝国の逆襲』でベイダーに斬り落とされたはずのライトセーバーだった。

これに触れたレイは、恐ろしい幻覚に襲われることになる。ベイダーの呼吸音、誰かに置き去りにされた自らの幼少期の記憶、ヨーダ、ルーク、オビ=ワンの声、カイロ・レン、レン騎士団、ルークの姿が津波のように押し寄せ、レイは恐ろしさのあまり、ここに来たことを後悔する。現れたマズは、レイがジャクーで待つ者は戻ってこないが、戻ってこれる者もいると告げる。レイはルークを待っているのだ。マズはライトセーバーをレイに託そうとするが、レイはこれを拒否して城を脱走する。

一方ファースト・オーダーではこの軍事組織の最高指導者であるスノークがカイロ・レンを呼びつけ、スカイウォーカーの地図を持ったBB-8はカイロの父であるハン・ソロと共にいると告げる。カイロはファースト・オーダーのために実の父であるハンを殺さなければならず、迷いが生じるたびにダース・ベイダーの焼けただれたマスクを偶像崇拝し、暗黒面の力を得ようとしていた。

ファースト・オーダーは、デス・スターの脅威を更に上回る恐るべき要塞スターキラー基地を完成させた。これはひとつの惑星そのものを改造した、デス・スターのスーパーレーザーの2倍の規模を誇る超兵器でもあった。スター・キラーは、他の恒星から太陽エネルギーを吸い上げ、惑星を消し飛ばす強力なビームを放つことができた。ファースト・オーダーのハックス将軍の指令により、基地はビームを発射。新共和国元老院が置かれていたホズニアン星系の5つの惑星を一瞬にして破壊する。これにより新共和国は滅ぼされた。

さらにカイロ・レンらファースト・オーダーの部隊が、BB-8を追ってマズの城を急襲、フィンはマズに託されたライトセーバーで応戦する。そこにレジスタンスのXウイング部隊が到着、これを率いるのはポーだった。事態は収拾するが、レイはカイロ・レンに連れ去られてしまう。やがてレイアが到着し、ハンと再会すると、一同はレジスタンスの基地のある惑星ディカーへ。フィンもようやくポーとの再会を果たす。

基地では、誘拐されたレイを救うためにフィンがファースト・オーダーの情報を提供。レイア率いるレジスタンスとて、つい先ほど新共和国を滅ぼしたスターキラー基地を破壊しなければならなかった。
ハンとレイアにとって、ファーストオーダーとの対峙は別の意味もあった。カイロ・レンは2人の間の子なのだ。かつてベン・ソロという名だったカイロは、ルークの元に預けられていた。新ジェダイ騎士団を壊滅させた裏切り者はベン・ソロだったのである。ハンは長年、父親として我が子の問題から目を背けてきた。しかし、ようやく父親としての責務を果たすべき時が訪れたことに気付いていた。レイアとて、「あの子にはまだ善の心が残っている」と信じていた。パドメがアナキンに向けた遺言と同じ言葉である。

スターキラー基地が、レジスタンスの基地に向けて新たにエネルギー装填を開始したとの情報が入った。動力を制御するサーマル・オシレーターを破壊すれば、スターキラー基地は制御不能に陥り爆発が見込めると判断したレジスタンスは、ハンとフィン、チューバッカがミレニアム・ファルコンを超低空飛行でスターキラー基地に忍び込みシールド発生装置を破壊した後、Xウイング部隊でオシレーターを狙う作戦を決行する。

ハンらは基地でキャプテン・ファズマを脅してシールドの解除に成功し、Xウイング部隊が出撃する。一方スターキラー基地に捕らえられていたレイは、自らに眠っていたフォースの能力を覚醒させ、拘束を脱していた。レイはハン、フィン、チューバッカと合流。上空ではレジスタンスとファースト・オーダーの激闘が繰り広げられるが、苦戦を強いられるレジスタンスを見た地上の一行は援護のため基地に爆薬を設置する。その最中、ハンとカイロの親子は運命の再会を果たす。

ハンは、父として我が子を暗黒面から引き離して連れ帰ろうとするが、カイロはライトセーバーでハン・ソロを一刺しにしてリアクター・シャフトに突き落とした。遠く離れたレジスタンス基地にあったレイアは、フォースによってこの悲劇を感知していた。

ファースト・オーダー基地は激昂したチューバッカが、それでも冷静に爆弾の起動スイッチを押すことで崩壊を始める。これを見たレジスタンスの攻撃部隊は一気に猛攻を仕掛けていく。

基地を脱したレイとフィンを、雪の降りしきる森の中でカイロ・レンが追い詰める。フィンはアナキン/ルークのライトセーバーで応戦するも負傷して倒れる。カイロはライトセーバーを回収しようとするが、吸い寄せられたのはカイロではなくレイの手中だった。初めてライトセーバーを握ったはずのレイだったが思わぬ剣さばきを見せ、カイロと渡り歩く。途中、鍔迫り合いとなったカイロの放った「フォース」という言葉を耳にするとレイの中でフォースが覚醒、一気に能力を解放してカイロを圧倒、顔面を斬りつけて傷跡を残す。

その頃ポー・ダメロンらXウイングの戦隊は基地の中心部に突入。見事オシレーターを破壊すると、スターキラー基地は惑星ごと崩壊を始める。レイとフィンの間を崩壊する地表が割きはじめ、救出に現れたチューバッカと共にフィンを連れてミレニアム・ファルコンで脱出する。

レジスタンスの基地では、長年眠り続けていたR2-D2が目覚め、一部分が欠損したルークの地図を投影した。BB-8が持っていたのは、この欠けていた断片部分だったのである。こうしてルークの地図が完成し、ついに最後のジェダイの居場所がわかった。レイアは希望をレイに託し、チューバッカと共に地図を頼りに旅立った。目指す先は、ルークがひっそりと暮らす惑星アク=トゥー、歴史上最古のジェダイ寺院だ。

レイは、ジェダイのローブをまとった1人の老人にたどり着く。右腕の機械義手を露出させたその老人がフードを降ろすと、髭を蓄えた伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの表情が顕になる。レイは、アナキンからルークへ渡ったスカイウォーカーのライトセーバーを差し出した…。

スター・ウォーズ レイ

解説

ディズニーがルーカスフィルムを買収したのち、『ジェダイの帰還』のその後を描く新たな三部作が製作されることとなった。『フォースの覚醒』は、その第一作目として、ハン・ソロ、レイアやルークら昔なじみの英雄に新たなキャラクターを交え、だれも知らない物語の幕開け作となっている。

このコンテニュー・サーガはフォースだけでなく、ネット時代のスター・ウォーズも覚醒させた。初の予告編映像がネットに公開されたのは2014年11月28日の金曜日のこと。Newsweek誌の記事によれば、翌日29日の時点で累計再生回数は述べ2,500万回を超えた。ファースト・カンパニー誌が発表した「史上最高のギーク的瞬間」オンライン・コンテストでは、「グーグル」「テレビ」そして「インターネット」すら打ち破って『スター・ウォーズ』が優勝した。インターネット上の『スター・ウォーズ』現象が、インターネットそのものを超越したのである。

『フォースの覚醒』は、Youtube時代初めてのスター・ウォーズだった(『シスの復讐』公開の2005年、Youtube文化はまだ定着していなかった)。公開された映像は、一夜にして世界中のファンやメディアの分析にかけられた。多くのファンはミレニアム・ファルコンの復活を喜んだが、一部のファンがもっと喜んだ発見は、『ジェダイの帰還』デス・スター突入時にぶつけて落としていた丸型のアンテナが、四角いものにつけかえられていることだった。

前作『シスの復讐』から9年、時代は変わっていた。台頭していたWebメディアはそのスピードとフットワークを活かし、ものの数時間後には「『フォースの覚醒』初の予告編で分かった◯つのこと」といった記事がSNSのタイムラインに氾濫した。話題の中心は、初めてマスクを脱いだ下にあった黒人のストーム・トルーパー、そしてダース・ベイダーを継ぐ新たなヴィランが握った十字型のライトセーバーだった。

『フォースの覚醒』は、公開に至るまでに漏れ出した全ての情報を、躍起になった全世界のファンに血眼で探されながらネットで共有されることとなった。今となれば、ルーク・スカイウォーカーの地図を探すファースト・オーダーよりも執念的だったと思えるほどだ。新たな映像が公開される度、全世界の時差の概念を取り払って各国ファンの脳を覚醒させた。

『フォースの覚醒』は、優等生だ。時代精神を反映し、主人公は女性と黒人になった。ヴィランも細身で、日影の文化系といった風体だ。『スター・ウォーズ』においてダース・ベイダーを越えることは出来ないと理解していたルーカス・フィルムは、ヴィランの存在を完成された悪党としてではなく、発展途上の不安定な精神として創り上げた。出力が一定しない十字型のライトセーバーも、新しい時代の危ういヴィランのキャラクター性を象徴していた。

レイ、フィン、カイロ・レンのオール・ラウンドな共感性は新たなファンも取り込み、子供たちもBB-8と親友になった。古き英雄のハン・ソロ、レイア、そしてルークは抜群のタイミングで登場し、旧世代のファンも喜ばせた。公開年となった2015年、米国内での『スター・ウォーズ』関連商品の売上は約7億ドルにも及んだ。

これが、スター・ウォーズ・イヤーだった。テレビ、雑誌、玩具店から洒落た雑貨店までがスター・ウォーズに染まり、大衆メディアは「フォースを感じる◯◯が新発売」と謳って追いつくのに必死だった。この狂乱を呼ぶ作品の指揮をとったのは、気鋭のギーク・ヒーロー、J.J.エイブラムスだ。

既にJ.J.は、過去のヒット作の再生請負人となっていた。2009年には『スター・トレック』のリブートを成功させると、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013)『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)『ミッションイン:ポッシブル/ローグ・ネイション』(2015)の仕事をしっかりやってのけた。クリエーターであり、自身も生粋のポップカルチャー・マニアであるJ.J.は、卓越したバランス感覚で史上最もファンがうるさいカルト作、『スター・ウォーズ』の復活に取り組んだ。結果は?シリーズ史上はもちろん、『タイタニック』(1997)『アバター』(2009)全米興行収入は歴史上の第1位を獲得。9億3,666万ドルの世界収入は未だハイパー・スペースの彼方にあり、どの作品も追いつかない。

目次に戻る

フォースと共にあらんことを。

参考:Newsweek Special Edition LEGACY That Led To FORCE AWAKENS, 2015
『スター・ウォーズはいかにして宇宙を征服したのか』2015年、パブラボ、クリス・テイラー著、児島修 翻訳
イラスト:中谷直登

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

Tags

Ranking

Daily

Weekly

Monthly