ただのノベライズじゃない!講談社文庫の”小説版”『スター・ウォーズ』プリクエル3部作を全力で褒める

2016年10月から3か月にわたって、講談社文庫より『スター・ウォーズ』のプリクエル3部作のノベライズが刊行された。

2015年には『フォースの覚醒』の公開に合わせてオリジナル3部作のノベライズが刊行されているので、今回のプリクエル3部作のノベライズは『ローグ・ワン』の公開に合わせているものと思われる。筆者は、残念ながら『ローグ・ワン』の公開には間に合わなかったものの、ノベライズ版プリクエル3部作を読破した。そして、感動した。本記事はそのレビューである。

もはや「ノベライズ」ではない

先ほどは便宜上「ノベライズ」と紹介したのだが、本作(プリクエル三部作)は「ノベライズ」の域を少し、いや、多くの面で超えている。

一般的な映画のノベライズは、
「駅で〇〇が▽▽とハグした。〇〇が『お前のことは一生忘れない』といった。▽▽が泣いた。」
というように、ついつい情景描写だけに表現が偏り、心情描写がおろそかになっていることが多々ある。その為か、ノベライズは文学的価値が低いとされる。私の通っていた中学校でも、読書記録(要提出)にはノベライズを含めてはいけないことになっていた。

心情描写が薄いのは、「ノベライズを買うような人なんてよっぽどのファンだし、情景を表現するだけであとは映画のシーンを思い出して感情移入してくれるだろう」という出版社側の意図かもしれない。

しかし本作は違う。登場人物の心情が巧みに描かれているのである。全編を通じてアナキンの心の葛藤が描かれていることはもちろん、本編で表現されることのなかった登場人物の心情も表現されている。

小説版で描かれた登場人物の心情・背景の一例

試しに、小説版で心情が巧みに表現されていると思った人を何人か見ていこう。(前述の通り、この作品はノベライズと呼ぶにふさわしくないので、以後「小説版」と表記する)

ダース・モール(エピソードⅠ:ファントム・メナス)

映画では、セリフが皆無だった上、表情もよくわからず心情がほとんど読めない彼だが、小説版では、その心情がはっきりと文字で表現されている。

彼は幼いころからダース・シディアスに訓練されていた。彼にとって、ジェダイを倒すことは人生の目的。小説版ではジェダイと戦う前の彼の心境を「高揚感」と表現した。この文言によって、クワイ=ガン・ジンを葬り去り、オビ=ワンを追い詰めた後に、ライトセーバーを地面に当てて火花を散らし、オビ=ワンをもてあそぶような行動をしたのも納得できるものになる。

パドメ・ネイベリー(エピソードⅡ:クローンの攻撃)

一人の女性としてのパドメの心情もよく描かれていた。

本書によれば、「パドメは政治家・活動家としては常にエリートで、第一線で活躍していた。しかし、それは家庭やプライベートの時間までをそれに捧げたことでなしえている面もあり、そのことを家族に指摘され、結婚を含めた身の進退を考え始めた」というサイドストーリーがパドメには存在した。

結婚を考え始めたころというベストタイミングで、アニーが超イケメンになって帰ってきたら…

恋に落ちるのは納得できる。

ドゥークー伯爵(エピソードⅢ:シスの復讐)

クローンウォーズ未視聴の私にとって、彼は「エピソードⅡの終盤に出てきて、なんかヨーダと戦って逃げて、エピソードⅢの序盤でアナキンに斬られちゃった人」ぐらいの印象しかなかった。
しかし小説版を読み、彼に対する印象は大きく変わった。理想高きジェダイとしての過去、伯爵の位を持つものとしての誇り、パルパティーン=ダース・シディアスを知る唯一の人物(クローンウォーズ視聴者に確認したところ、この設定は正史であるとのことなので、驚いたのは私だけかもしれない)…様々な側面をあわせ持つ、複雑な人物であることが分かる。

この春は、クローンウォーズを見よう、いや、ドゥークーを見ようと決心した。

ノベライズではない本当の理由

「もはや『ノベライズ』ではない」の項目では本作がノベライズ版というより小説版と呼ぶにふさわしい、と熱く語ったが、その理由は心情描写の巧みさ以外にもある。その一つとして、映画ではカットされたシーンが入っていることが挙げられる。

例えば、エピソードⅡを例にとると、ネイベリー家でパドメの家族とアナキンが食事をとるシーンが存在するのだが、映画ではこのシーンはカットされ、特典映像として入っている。

特典映像としてあとでじっくり鑑賞するのもそれはそれで良い。しかしこんなことを思ったことはないだろうか。
「このシーンを映画に組み込んで観てみたい」と。
小説版ではまさにこの願いが叶う。

ノベライズではない点としては、挿話が豊富なことも挙げられる。

これまでぼんやりと知られていた「パドメとアナキンが結婚した時に、お互いのドロイドを交換した」のようなストーリーが絶妙に散りばめられていて、より一層『スター・ウォーズ』の世界を身近に感じることができる。

しかし、ノベライズではない本当の理由は別のところにある。
本当の理由は、ずばり、プロの小説家が執筆しているからである。だから、心情描写が豊かだったり、挿話が絶妙だったりしたのだ。

『スター・ウォーズ』を読む3つのメリット

本作がノベライズではなく、小説であることを十分すぎるほどお分かりいただいたところで、私見ではあるが、小説として『スター・ウォーズ』を読むことのメリットを3つ挙げたい。

1.CGという概念がない

プリクエル3部作はしばしば、「CGを使いすぎている」と批判されることがある。

しかし小説にはCGという概念はない。大量のクローン兵が戦うシーンだろうと、ライトセーバーだろうと、「数万ユニットのクローン兵が投入され、戦局は一変した」「ライトセーバーがシュッと音を立てて起動した」と一言書くだけでよい。何が起こってもCG不使用を貫けるのだ。

2.映画でカットされたシーンが組み込まれている

ノベライズではない理由と重なるが、これはそれくらい重要なことだ。カットされたシーンが加わることで、物語に深みが増し、映画とはまた違った印象を受ける。この感動は読んだ人にしかわからない。

3.自分のペースで物語をみれる

映画は、内容の如何を問わず、必ず2時間で終わってしまう。なので、「途中からよくわからなくなった」「ついていけなかった」ということが起こりかねない。
特に『スター・ウォーズ』のように壮大な作品だと、そうなる傾向が高い。

ここで小説版の真価が発揮される。小説なら自分の理解できる速度で、物語に浸ることができるからだ。

小説版スター・ウォーズのススメ

今回は、プリクエル3部作の”小説版”について触れたが、オリジナル3部作の「小説版」もなかなかの出来である。とはいえ、どちらを読むか迷う、という人がいたら、私は迷わずプリクエル3部作の方をお勧めする。私の中では、物語としての完成度はプリクエル3部作に軍配があがるからだ。

ということで、この春は、”小説版”『スター・ウォーズ』に挑戦してみてはいかがだろうか。

About the author

2000年生まれの高校生。天下の台所で、映画愛を叫ぶ。

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