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難問「一番好きな映画」365日映画を観る監督に聞いてみた ─『ストーリー・オブ・フィルム』インタビュー、映画との出会いや想い語り尽くす

ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行
(C) Story of Film Ltd 2020

“一番好きな映画は何ですか?”。これは映画を愛するファンをはじめ、その業界に携わる方であれば、誰もが一度は受けたことがある質問だろう。筆者もまたそのひとりだ。友人だけでなく、たまたま知り合った方からも尋ねられることがある。その度に回答に困り、相手までもを困惑させてしまう。その理由のひとつは何千、何万と映画をこれまでに鑑賞してきたがゆえに、“一番”をなかなか決められないからだ。それでは、365日欠かさず新たな映画を視聴・鑑賞をしているような超人の場合、戸惑わずに答えられるのだろうか?

この度、THE RIVERはイギリスのドキュメンタリー『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』の監督、マーク・カズンズにインタビューする機会に恵まれた。カズンズ監督こそ毎日映画を鑑賞している超人であり、これまでの人生で鑑賞した総本数は1万6,000本を超えているのだ。

そんな究極のフィルムメイカーが、めまぐるしい社会の変化、テクノロジーの進化とともに、映画を取り巻く環境や表現手法が劇的に変わった2010〜2021年の11年間に焦点をあてた意欲作が、2022年6月10日より公開中の『ストーリー・オブ・フィルム』。ハリウッド・メジャーからアートハウス系、知られざる日本未公開作まで実に幅広く多種多様に111作品を厳選し、愛にあふれた独自の批評的視点を披露していく。まさしく映画を愛するすべての者へ捧ぐ一作である。

子どもの頃から映画を愛するカズンズが、“一番好きな映画”に選ぶものは果たして。また、このインタビューにてカズンズ監督は、ほかにも“映画への出会い”、“この時代を象徴する映画”、“THE RIVERの読者におすすめしたい映画”などについて、並々ならぬ想いで語ってくれている。

キネマの奇跡、マーク・カズンズ監督の映画愛と出会い

ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行
(C) Story of Film Ltd 2020

──『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』は、“映画”の素晴らしさをあらためて実感させられる作品で、思わず泣いてしまいました。

その感想は本当に嬉しいです。それがシネマというものですし、感情を剥き出しにするべきものですから。それに本作は、“映画への愛”を語る作品ですしね。

──まさしく映画への愛にあふれた作品でしたが、マーク・カズンズ監督ご自身はいつ映画に恋に落ちたのでしょうか?

8歳半の頃になります。北アイルランドのベルファストにいたときに、『続ラブ・バッグ』(1974)というディズニー映画を観たんです。駄目な映画と思ったんですけど、一種の高揚感、歓喜にあふれる気持ちにさせられたんです。劇場が僕の手を取って、“あなたに世界を見せてあげましょう”と言われているような気分でした。今もそういう思いにさせられていますよ。

──そこからシネマに夢中なっていったわけですね。実際のところ、どれくらいの本数を日々鑑賞されているんでしょうか?

映画は劇場で観ることが多く、家ではあまり観ません。1日1本は少なくとも劇場で鑑賞するようにしていて。ただ仕事関係で、1〜2本ほど家で視聴することもあります。だから、週に20本、月に60本ほどは観ているはずですね。

──その本数を観るとなると、かなり多くの時間を要することになると思いますが、長尺映画に抵抗感を抱くことはありませんか?それこそ、このドキュメンタリーでは、『立ち去った女』(2016)など長尺な作品を多く手がけることでも知られる鬼才、ラヴ・ディアス監督による傑作への言及もありましたけど。

僕の場合ですが、時に短い映画を退屈に思うことがあって、長い映画を魅力的と感じることがあります。それはもはや催眠術みたいなものでして、フィルムメイカーには僕たちが時間を気にならなくなるような一種の夢状態にしてほしいんです。だから、ラヴ・ディアス監督が手がける映画と、そのリズムがたまらないわけなんです。もちろん、トイレ休憩は必要ですけど(笑)。

──それでは、映画を観ることに疲れることはないでしょうか?別のことがしたいみたいな。

ウォーキングやクライミング、サイクリング、スイミング、料理、そして建築も好きです。ただ、悲しいときも、嬉しいときも、そして寂しいときも映画を観たいと思うんですよ(笑)。

──映画を観ているときは、どんなことを考えているのでしょうか?

なるべく頭を空にして観るようにしています。感情を最大限に開放して、すべてを受け入れられる姿勢で鑑賞に臨むべきですから。完全にエモーショナルになりたいわけです。だから、頭のスイッチをオフにして、映画が終わったらまたスイッチをオンにする。それから、“何が起きたのか”、“なんで泣いたのか”、“なんで興奮したのか”、なんで退屈したのか”、と自問自答していきます。

Writer

Minami
Minami

THE RIVER編集部。「思わず誰かに話して足を運びたくなるような」「映像を見ているかのように読者が想像できるような」を基準に記事を執筆しています。映画のことばかり考えている“映画人間”です。どうぞ、宜しくお願い致します。

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