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ハリー・ポッター「スタジオツアー東京」、ダンブルドアの校長室に初潜入 ─ 小道具制作ヘッドが語り尽くす制作裏話

ハリー・ポッター
©THE RIVER

世界中で人気を博しているハリー・ポッター魔法ワールドには、その壮大な世界観を構築した功労者として欠かせない人物がいる。『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』シリーズで小道具制作ヘッドを務めたピエール・ボハナ氏だ。杖やホウキなど、劇中に登場する小道具の数々をデザインした人物である。

ボハナ氏がハリウッドで注目を浴びるようになったのは、1997年公開の映画『タイタニック』。ロンドン拠点のフリーランスとしてキャリアを積んだのち、1990年代よりハリウッドのスタジオ映画に携わるようになった。その後、『ハリー・ポッター』シリーズでの活躍により実力を認められ、直近の『ザ・フラッシュ』(2023)や『バービー』(2023)、『MEG ザ・モンスターズ2』(2023)に至るまで、数々の大作映画の小道具制作を手がけてきた。

そんなボハナ氏が来日を果たした。実は2023年6月の「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 ‐ メイキング・オブ・ハリー・ポッター」開業時にも日本を訪れているボハナ氏だが、スタジオツアー東京を再び訪れた。

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本記事では、ボハナ氏が映画『ハリー・ポッター』の小道具制作の裏側や制作秘話などを直に語る貴重な取材の様子をお届けする。さらに、普段は入ることができないダンブルドアの校長室の中にも特別潜入。写真と共にレポートをお伝えする(※特別な許可を得て撮影させていただいております)

『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』小道具制作ヘッド、ピエール・ボハナ氏 インタビュー

ハリー・ポッター
©THE RIVER

── 『ハリー・ポッター』だけでなく、『アクアマン/失われた王国』や『バービー』など独自の世界観を持つ作品に携わられてきましたが、作品ごとのインスピレーションはどのようにして得ているのでしょうか?

インスピレーションはセリフから生まれます。どの映画も制作に関わるフィルムメイカーたちの創造力を結集させたものです。それをお互いにインスパイアし合うことから始まるのです。私たちは物語を最初に見始めていき、そこから世界観のビジュアルが見えるようになっていくのです。何も知らないところからのスタートですが、他の方々との仕事を通して情報や知識を増やしていき、モノを作っていきます。

── 『ハリー・ポッター』シリーズの設定上、日本には「マホウドコロ」という魔法魔術学校があります。ピエールさんたちに和風の魔法アイテムやセットをデザインしてほしいという日本人もいるかと思いますが、何かアイデアなどはございますか。

もしそうすることができたら最高です。日本版ホグワーツをぜひ作ってみたい。日本の素晴らしさは、歴史や神話が豊富さや、モノ作りに対する深い情熱にあると思います。繊細さというものは美に通じています。そうした全てが、ほうきや杖など、すでにお馴染みの魔法アイテムを和風に仕上げる上でのインスピレーションとなるでしょう。お声がかかればすぐにでもやりたいです。

ハリー・ポッター
‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.

── 2012年開業のイギリスの2012年開業の10周年を迎えるイギリスの「ワーナー ブラザース ・スタジオ・ツアー ロンドン」の存在意義はどのようなところにありますか。また、東京も今年で1周年を迎えますが、どのようなところに期待されていますか。

(イギリスの)リーヴスデンにあるスタジオはオリジナルですから、『ハリー・ポッター』のコンセプトや世間からの作品に対する関心を証明する上で重要な存在だったと思います。また、映画自体の博物館なども存在する中で、『ハリー・ポッター』と映画制作を結び合わせるという点でも功績は大きい。スタジオを通して深い情熱を持っている方がたくさんいるんだということも証明できましたし、その裏側を見てもらうことの楽しみを提供できたと思います。

ハリー・ポッター
‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.

『ハリー・ポッター』のコンセプトはロンドンのスタジオで証明できましたが、東京版にはJ.K.ローリングのストーリーや映画作りを祝福するような思いが込められていると思います。展示物などについてもより洗練されましたし、セットの中に入り込んで没入感たっぷりに味わいつつ、一歩下がって制作の裏側をじっくりと眺めることもできますよね。

── 寮別ポイント計をはじめ、作中には滅多に登場しないものの、デザインチームの自信作である小道具も展示されていると伺っております。本来はカメラに映ることを前提に一番映えるデザインを意識されていると思いますが、それを展示のために改めて準備する上で心がけたことは何でしょうか。展示用として新たに作り替えるといったこともされましたか。

それは何を作るかにもよります。例えば小道具については、元々は映画で作られたオリジナル版を展示しようというアイデアもありましたが、当時は作ったものを撮影中も長持ちさせるいうのが私たちの仕事でした。それを展示物として再使用するのは困難で、オリジナル版を参考にして新しく作ったり、時に修復したりすることもありました。しかし、展示用として良いものにしよう、ということは心がけました。

ハリー・ポッター
‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.

── 『ハリー・ポッター』と『ファンタスティック・ビースト』は世界観が同じでありながら、時代設定や背景は異なります。その中で、小道具制作においてどのような共通点や違いがあるのでしょうか。

とても興味深い質問ですね。基本的な違いで言うと、『ファンタスティック・ビースト』は昔の時代の物語ですよね。1920年代後半から30年代までが舞台ですから、それを視覚的に再現するという作業にはたくさんの時間がかかります。ほとんどのものがもう実在しませんからね。そういう点は『ハリー・ポッター』とは違う難しさがありました。

一方『ハリー・ポッター』シリーズでは、魔法の世界を一から作り上げるために、(世界観を)理解しなければいけませんでした。『ファンタスティック・ビースト』ではすでに自信を持っていたので、世界観をよりリッチに拡大させることができました。

ハリー・ポッター
‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.

── 小道具やセットの制作において、具現化するのに難しかったものはございますか?

それはなかなかハードな質問ですね(笑)。数千の小道具が存在して、一つ一つに細かい要望がありましたから。なのでどれか一つというように思い出すのも難しくて。たくさんのことを同時に進めていました。

ただ、チャレンジしなければいけないことは間違いなくたくさんありました。なかでもレストレンジ家の金庫室は難しかったです。セキュリティシステムのせいで金、銀、銅など、色々な宝が増殖してしまうという設定ですが、それをゴム製の素材で25万点も作らなければいけませんでした。すごく大変だったのを覚えています。

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‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.

── 小道具制作という仕事の魅力についてお聞かせください。

小道具制作は、全て白紙の状態から始まる仕事なので、断片を発見していく喜びが魅力だと思います。脚本を初めて読んだ時に十分な情報が書かれてある時もあれば、そうでない時もあります。そこから作り上げていき、完成させるまでのプロセスが私は好きです。

── どんなに物語が良くてもビジュアルが魅力に欠けていたら良い作品にならず、それは逆もまた然りだと思います。世界観を形作る役割を担うピエールさんが一番意識されていることは何でしょう。

一人ひとりのスタッフがミスをすることはありますが、エゴが創造力を蝕んでしまうこともあります。まずは世界観を理解しなければいけません。映画というものは、ビジュアルで魅せる物語なわけです。自分がどれだけ自信を持っていても、決めるのはストーリーテラーである監督なのです。チーム全体で作り上げていくという考え方が大切だと思います。

── スタジオツアーでも見学できる「必要の部屋」では過去作でも使用された小道具が展示されていると思いますが、「こんなものがあったのか」とファンが知ったら驚くような小道具はありますか。

あそこには素敵なものがたくさん眠っていますよ。三大魔法学校対抗試合の優勝杯もあって、楽しんでいただけると思います。私自身、作る過程をすごく楽しみました。かなり巨大なトロフィーもあって、山積みになるほど作りました。古い鋳型で作ったものもあれば、庭にあるような古い鉢にメッキ加工を施して再現したものもありました。

ハリー・ポッター
‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros. Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.

──  小道具制作という仕事の映画における影響力の大きさについて、どう思われますか。

どうでしょう(笑)。みなさんに聞きたいくらいです(笑)。もし貢献できていたとしたら、それ自体を光栄に思います。私たちには、一つひとつを良いものとして作る責任があります。物語を語る上で、上手くいくものもあればそうでないものもありますから、それは監督が判断することだと思いますけどね。

映画作りの中では、最初はしっかりとフィーチャーされるはずだったものがサラッとカットされるということは日常茶飯事。編集の段階では4時間の映画になってしまってどうしてもカットしなければいけないという時に、一生懸命作った小道具が少ししか映らないということはよくあるんです。

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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