Menu
(0)

Search

【特集】『スーサイド・スクワッド』でカットされた22の未公開シーンを徹底解説・検証!

映画『スーサイド・スクワッド』が日本で公開されて数日が経った。日本でも大ヒットを予感させるスタートを切ったことは喜ばしいものの、作品の内容はすでに各所で賛否両論を呼んでいる。

そもそもアメリカでは、公開前から賛否両論どころか悪評や噂が飛び交っていた。「ワーナーが独自に編集したバージョンが存在する」という噂(記事)はデヴィッド・エアー監督が否定したものの、本編の編集が粗いと指摘する感想は少なくない。ジョーカー(ジャレッド・レト)の出番が大幅にカットされたことは事実とみられ(記事)、エアー監督は未公開シーンがDVD・Blu-rayに入る可能性を示唆している。

映画が公開されてすぐ、アメリカでは完成版でカットされたシーンの一覧が話題となった。また出演者もインタビューなどで未公開シーンについてコメントしている。日本でも映画が公開された今、そのひとつひとつをきちんと検証してみよう。

【注意】

この記事は映画『スーサイド・スクワッド』のネタバレが含んでいます。また内容には憶測・噂の域を出ない情報も一部含まれていることをあらかじめご了承ください。

『スーサイド・スクワッド』22の未公開シーン

【1】ジューン・ムーン博士、憑依される

初期編集版では、映画のオープニングはジューン・ムーン博士がエンチャントレスに憑依されるシーンだった。デッドショットを中心としたオープニングに変更するため、シーンはフラッシュバック形式になるよう再撮影・再編集されたという。当初はリック・フラッグ大佐との出会い以前がより丁寧に描かれていたことと思われる。

【2】娘を思うデッドショット

牢獄にいるデッドショットが、雨を窓越しに眺めながら娘のことを考えるシーン。おそらく看守との「ローフ」のやり取り前後に入っていたのではないだろうか。

【3】エル・ディアブロの「誓い」

自らの能力を恐れるエル・ディアブロが、決して能力を使わないと誓うため、火のついたマッチを見つめてから消すというシーン。

【4】エル・ディアブロ、水攻めを受ける

ディアブロが大量の水でチューブから押し出され、いきなりトレーニング・センターの地面に投げ出されるシーン。メンバーが拷問を受けるシーンのひとつだったと思われる。ディアブロは部隊招集の場面でも大量の水で地面に放り出されるが、この拷問シーンと対応していたのではないだろうか。

【5】フラッグ大佐&ムーン博士のロマンス

当初、劇中にはフラッグ大佐とムーン博士の恋愛を描くシーンがより多く含まれていたようだ。その中には、犯罪者たちのファイルをフラッグが読むシーンや、ふたりがデートするシーンも存在した。

【6】キラー・クロックの背景

キラー・クロックには、その醜い見た目ゆえに日陰者として生きてきたという背景がある。ゴッサム・シティの犯罪者たちに用心棒として雇われていたクロックが、いつか権力を握ることを企んでいた矢先にバットマンと遭遇するという回想シーンのほか、クロックが廃棄されたゴミから彫刻を作るシーンもあったという。このエピソードが自らを「美しい」という場面につながったのだろう。

【7】キラー・クロック、反芻する

ヘリコプターでミッドウェイ・シティに到着した直後、気分が悪くなったクロックが半分消化したヤギを吐き出して再び食べるというシーン。近くにいた兵士が気分を害するところまでセットだったようだが、カットして正解だったのでは……。

【8】キャプテン・ブーメランの人種差別・性差別

以前のインタビューで、キャプテン・ブーメランは人種差別・性差別者だといわれていたが、完成版ではそうしたふるまいは見られなかった。当初はカタナへの差別発言が含まれていたというが、映画の性質を考慮して削除されたと思われる。きっちり痛い目に遭うし、終盤では良いキャラになることを考えると、最初にそうした要素が入っていてもよかったかも?

【8】スリップノットの凶悪犯罪

登場して数分であっけなく死んだスリップノットだが、初期編集版にはスリップノットが連続強姦魔であることが示されるシーンがあった。あまりにすぐ退場してしまうので、観客から同情されないよう用意された設定だったようだ。

【10】ジョーカーの尋問(ロング・バージョン)

ジョーカーの一味が男(グリッグス)を突然拉致して尋問するシーンはもっと長かったようだ。予告編に存在する”I can’t wait to show you my toys.”というセリフは本編には使われていない。

【11】ジョーカー&ハーレイの追跡劇

ジョーカーに心惹かれるハーレイ・クインが、レストランを襲撃したジョーカーの一味をバイクで追跡するシーン。イライラしたジョーカーが頭をガラスに打ちつける演技もあったという。追いついたハーレイはジョーカーにピストルを突きつけるも、甘い言葉でほだされて逆に殴られてしまう。そこにジョーカーは再び甘い言葉をささやいてキスをする……という場面だった。完全にDVである。

【12】ハーレイ・クインのクラブ・ダンス(ロング・バージョン)

劇中のクラブ・シーンでハーレイが踊っていたダンスは、マーゴット・ロビーいわく「全体のほんの一部」だという。ロビーはこのシーンのため、いかがわしいダンスを懸命に練習したということだ。

【13】バットマン vs ジョーカー&ハーレイ(ロング・バージョン)

ジョーカーとハーレイが引き離される原因となった、バットマンとふたりのカーチェイス・シーンにはより長いバージョンが存在するようだ。

【14】ハーレイ・クインのダイブ(ロング・バージョン)

フラッシュバックで描かれた、ハーレイがタンクに飛び込んだところをジョーカーが追って飛び込むシーン。直前にあるハーレイとジョーカーのやり取りにも完成版より長いバージョンが存在するという。

【15】ブーメラン、クロックに吹っ飛ばされる

ブーメランを演じたジェイ・コートニーによると、クロックに話しかけたブーメランがぶっ叩かれて大量のコンテナに突っ込むシーンがあったという。さして重要ではなさそうだが、コートニーお気に入りのシーンだとか。ソフト化の際はぜひ収録を!

【16】ハーレイ・クイン、バットで撃つ

海外版予告編で印象的な場面だが、ハーレイがバットを銃のように構える場面は本編にはなかった。

【17】ナノ爆弾工場の襲撃(ロング・バージョン)

ハーレイの首に埋め込まれたナノ爆弾を解除するためにジョーカーが工場施設を襲撃する場面では、完成版で使われた以上の素材が撮影されていた。

【18】ハーレイとブーメランの不仲

劇中には当初ハーレイとブーメランのやり取りが多く含まれていた。初期編集版には、ハーレイがメンバーに心を開いていく中、ブーメランだけは露骨に嫌う場面があったようだ。終盤でブーメランが言う「女はイカれてるくらいがいい」というセリフは、本来こうした流れで活きてくるはずだったのだろう。

【19】悪党たちのバー(ロング・バージョン)

予告編に存在した、バーでハーレイがメンバーの注文を受けるくだりが完成版ではカットされた。デッドショットがショットを、カタナがウイスキーを、クロックとブーメランがビールを注文して、ディアブロは水を頼むのである。デッドショットが良さげなことを言うだけの印象が強いシーンに仕上がっているが、該当場面はこの予告編で観ることができる。

【20】ハーレイへの愛情

完成版のジョーカーはとにかくハーレイ大好きな描写が印象的だが、本記事でも述べているように、元々はハーレイへの暴力シーンも非常に多かった。そうしたシーンがカットされたために、ジョーカーが暴力から愛へ転化していく様子もほとんどカットされてしまったとみられる。

【21】倒錯した愛情(別編集版)

未公開シーンではなく編集でシーンの意味が真逆になった例。完成版ではジョーカーがヘリでハーレイを救出したあと、ヘリが撃墜され、ジョーカーはハーレイを守るため彼女を突き落とす。しかし初期編集版では、ハーレイを救出したジョーカーは、自らハーレイを突き落とし、その後ヘリが撃墜されるという流れだったようだ。ハーレイが再び裏切られるという点で、彼女がスーサイド・スクワッドに戻る理由は完成版より理解しやすかったかもしれない。

【22】最終決戦にジョーカー登場

地下鉄での決戦の途中、なんとヘリの撃墜で顔面に火傷を負ったジョーカーが登場。スーサイド・スクワッドのメンバーと口論し、ハーレイに逃亡を持ちかけるが、彼女はメンバーと一緒に戦うためこれを拒否する。するとジョーカーは手榴弾を投げつけてひとりで消えてしまう……というくだりが存在した。

未公開シーンからわかること

いかがだっただろうか。

こうして並べてみると、物語上重要なシーンからお遊びのシーンまで、ありとあらゆる場面が『スーサイド・スクワッド』の完成版からカットされていることがわかる。ここには取り上げていない場面が存在すると考えると、「脚本が粗い」「描写がよくわからない」として批判を受けている部分も、おそらく当初はかなり違ったのではないかと思われるのだ。

スーサイド・スクワッドのメンバーはいかに心を通わせていく過程や、ジョーカーがハーレイを突き落としては助け、また突き落とすという地獄の繰り返しはきっと際立ったことだろう。むろんそうしたすべてを描けば上映時間は大幅に長くなるし、完成版を観るかぎり、ジョーカーを物語のスパイスと割り切る姿勢も間違ってはいなかったはずだ。しかし、そうしたことで損なわれた部分は確実にある。

22の未公開シーンのうち、あなたが本編に欲しかったシーンはどれだけあっただろうか? DVD・Blu-rayに収録されるかどうかもわからない今だからこそ、勝手に想像しながら『スーサイド・スクワッド』をもう一度楽しんでみよう。

source: http://www.cosmicbooknews.com/content/22-suicide-squad-cuts-revealed
http://comicbook.com/2016/08/21/suicide-squad-cast-talks-deleted-scenes/

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。