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『スター・トレック』新作で人気キャラが突然ゲイ設定に!オリジナル版俳優と脚本家、サイモン・ペグが論争へ突入

J.J.エイブラムス製作による『スター・トレック』シリーズの新作が大きな論争を巻き起こしている。理由は、メインキャラクターのひとり、U.S.S.エンタープライズ号のパイロットであるヒカル・スールーに、実はゲイだったという設定が突然追加されたからだ。

はじまりは俳優のインタビュー

ヒカル・スールーがゲイという設定が明らかになったのは、『スター・トレック』(2009年)からヒカル・スールーを演じているジョン・チョーのインタビューだった。

オーストラリアのHerald Sun誌に対して、チョーは「(『スター・トレック BEYOND』の)スールーには同性のパートナーと娘がいる」と話したのだ。彼は、「(ゲイであることを)大きなこととして扱わないアプローチが好きだよ。登場人物たちは種族として、個人の性指向を政治的な問題にはしないんだ」とも述べている。

http://www.cbs8.com/story/32394618/john-cho-reveals-sulu-is-gay-in-star-trek-beyond-heres-how-fans-are-reacting
http://www.cbs8.com/story/32394618/john-cho-reveals-sulu-is-gay-in-star-trek-beyond-heres-how-fans-are-reacting

チョーによると、スールーをゲイ設定にすることを決めたのは脚本のサイモン・ペグと監督のジャスティン・リンだという。ふたりはオリジナル版『スター・トレック』シリーズでスールーを演じたジョージ・タケイに敬意を表す意図でスールーをゲイ設定にしたようだ。タケイは2005年に自身がゲイであることをカミングアウトし、2008年に男性と結婚した人物である。

しかしスールーがゲイ設定というニュースが報じられてすぐ、当のジョージ・タケイ本人がこの設定を痛烈に批判した。

オリジナル版の俳優を無視した?

ジョージ・タケイは、『スター・トレック』の生みの親であるジーン・ロッデンベリーと親交が深かった。オリジナル・テレビシリーズ『宇宙大作戦』でアメリカのテレビで初めて異人種同士のキスシーンを放送するなど、挑戦的なドラマを製作していたジーンについて、タケイは「LGBT(レズ・バイ・ゲイ・トランスジェンダー)の平等を強く支持する人物だった」と話す。

しかし『スター・トレック BEYOND』でのスールーの設定変更に関しては、タケイは「不幸なことに、徹底的に考え抜かれたジーンの創作をねじ曲げたもの。本当に残念です」とコメントした。タケイによれば、ジーンはスールーを異性愛者だと考えていたという(シリーズの作品にはデモラという娘も登場する)。

http://www.hollywoodreporter.com/news/george-takei-reacts-gay-sulu-909154
http://www.hollywoodreporter.com/news/george-takei-reacts-gay-sulu-909154

スールーにゲイ設定が追加されることをタケイが知ったのは、ジョン・チョーからの連絡が最初だった。知らせを受けたタケイはチョーに対して、スールーではなく別のキャラクターを作るよう訴えたようだ。

「スールーじゃなくて、ゲイとしての歴史をもったキャラクターを想像して生み出してほしい。ずっと異性愛者だったスールーが突然カミングアウトするってことは、本当はずっとゲイを隠していたってことだ」

ジョーからの連絡の後、タケイはジャスティン・リン監督から「スールーをゲイ設定にすることが決まった」と知らされた。ここでもタケイは監督に反対意見を表明している。

「『スター・トレック BEYOND』は、『スター・トレック』の50周年を記念して公開される映画だ。50周年を記念して、半世紀もの間アイデアを私たちにもたらしてくれたジーン・ロッデンベリーに敬意を払ってほしい。彼を称えて、新しいキャラクターを作るんだ」

そして数カ月後、タケイのもとにサイモン・ペグからメールが届いた。そこには、LGBTの権利を守るタケイの活動や『スター・トレック』での功績を賛美する文面があったという。タケイは「監督がペグに話をしてくれた」と喜び、「スールーのゲイ設定が見直されることを確信した」と述べている。

しかし、結果はタケイの意志に反するものだった。チョーがインタビューで語った通り、スールーにはゲイの設定が追加されたのである。

サイモン・ペグの反論

もっとも、スールーの設定をめぐる論争はタケイの批判で終わったわけではない。今度はサイモン・ペグが反論したのである。

ペグは「僕はジョージ・タケイをとても愛しているし尊敬している。彼のハート、勇気、ユーモアに感化されているんだ」と述べつつ「しかし、僕らのスールーに対する彼の考えには謹んで反対したい」という。

http://www.huffingtonpost.co.uk/2015/01/22/star-trek-sequel-reboot-third-movie_n_6522238.html
http://www.huffingtonpost.co.uk/2015/01/22/star-trek-sequel-reboot-third-movie_n_6522238.html

「彼(タケイ)は正しい。残念だよ。何が残念って、SF映画の『すべてを包み込む寛大な宇宙』に今までLGBTのキャラクターが登場しなかったことだ。僕らには新しいゲイのキャラクターを生み出すこともできる。でもそのキャラクターは、彼らがどういう人物かではなく、主にセクシュアリティで定義された『ゲイ・キャラクター』として受け止められるだろう。それは形だけの平等主義じゃないか?」

「ジャスティン・リン、ダグ・ユング(共同脚本)、そして僕がこのアイデアを気に入ったのは、(スールーが)すでに知られたキャラクターだからだ。観客はキャラクターを人間として受け止めて、すでに意見を持っている。どんな偏見の影響も受けない。彼らの性指向はキャラクターを定義するものではなく人物のひとつの側面なんだ。また観客も、『スター・トレック』の世界に初めからLGBTが存在したと思うだろう。だからゲイのヒーローは新しくも珍しくもない。それに、スールーがゲイを隠していたんだと思わせないことも大切だ。どうして彼がそんなことしなきゃいけない? 今まで話題にされなかっただけだよ」

またペグは、現在の『スター・トレック』新シリーズがオリジナル版とは別の世界観である可能性も示唆した。

「僕らの『スター・トレック』は、別のディテールの、別の時系列さ。なにか魔法のようなものが、僕らの時系列ではスールーのセクシュアリティを変えたんだ。別の現実が無限に連なった『仮の宇宙』がたくさんあるっていう、このアイデアが僕は好きでね。僕らはみんなどこかの宇宙ではLGBTなんだよ

あなたはヒカル・スールーがゲイという設定には賛成だろうか、それとも反対だろうか。ジョージ・タケイがワガママを言っていると見るか、サイモン・ペグが詭弁を弄しているとみるか。いずれにしても、50年目にして『スター・トレック』の歴史が変わろうとしているのは確かだ。

『スター・トレック BEYOND』は、日本では2016年10月21日公開

source:
https://www.theguardian.com/film/2016/jul/08/simon-pegg-defends-gay-sulu-after-george-takei-criticism
http://www.hollywoodreporter.com/news/george-takei-reacts-gay-sulu-909154
http://www.heraldsun.com.au/entertainment/movies/star-trek-beyond-favourite-mr-sulu-has-come-out-as-castmates-reflect-on-the-death-of-anton-yelchin/news-story/51909410e4e465f825470c4dfbcc17ec

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。