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クエンティン・タランティーノ、『スター・トレック』映画版から離脱の可能性 ─ 関与を再検討へ、『ワンハリ』完成で小規模映画に興味示す

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 来日記者会見
© THE RIVER

『パルプ・フィクション』(1994)や『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)などの映画監督クエンティン・タランティーノが、自身が原案を担当する『スター・トレック』新作映画(タイトル未定)から離脱する可能性が浮上してきた。米Consequence of Soundのインタビューにて語った。

かねてよりタランティーノは、長編映画10作目で映画監督を引退する意向を示している。9作目『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)を無事に完成させたタランティーノに残されているのは、いまや最後の1作のみ。今回の取材では、「10本にこだわるんですか?」と尋ねられるや「ええ、そのつもりです」と回答した。しかし、それが『スター・トレック』となる可能性は低くなっているようだ。

「今は『スター・トレック』から離れています。だけど、彼ら(シリーズのチーム)と正式な話し合いをしたわけではないですしね。」

Deadlineは、タランティーノ本人への電話取材で発言の真意を確認している。するとタランティーノは「今は離れているかもしれないけれど、どうなるか。まだ完全に決めたわけでも、誰かと話したわけでもない。正式なことは何ひとつありません」と答えている。しかしながら、ひとまず『スター・トレック』に携わるかどうかの再検討に入っていることは確からしい。

タランティーノ、なぜ再検討に入ったのか

タランティーノ版『スター・トレック』の企画は、もともとタランティーノ自身が「最高のアイデア」を発案し、J・J・エイブラムスに企画を持ち込んで始動したもの。多忙なタランティーノに代わって、脚本は『レヴェナント:蘇えりし者』(2015)のマーク・L・スミスが執筆し、その出来栄えには「最高の脚本」「宇宙版パルプ・フィクション」と豪語していたのだ。

では、なぜタランティーノはここにきて今後の関与を検討するに至ったのか。その理由は、前作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にあるようだ。Consequence of Soundでは、最近の思いについてこうも語られているのである。

「変な話、(『ワンス・アポン~』が)最後の映画だったような気がしているんです。だから、最後にド派手なステートメントを出すというプレッシャーを背負わないようにしていて。(『ワンス・アポン~』を)作っていた時、“これを今撮るべきか、別の映画にすべきか”と思ったことがありました。これは10本目の映画じゃないかと。だけど惑星の直列は止められません。地球に“やれ”と言われたら、やるしかない。[中略]ですが、ある意味で解放されたように思いました。だから、次の作品がどんな話になるかは分かりません。手がかりすらないんです。」

またタランティーノは、『ワンス・アポン~』について「ハリウッドに大きな声明を出したように思いますし、これまでのキャリアや自分の興味、フィルモグラフィの集大成という気がする」とも発言。以前と同じく、同作こそが映画監督としてのキャリアのクライマックスであり、10作目はエピローグのような位置づけだと予告している。

「きっと、僕の10本目はもう少し小さな映画になりますよ。エピローグのような、“著者のあとがき”のようなものに。もしかすると大きなアイデアをひらめくかもしれませんが、今はもうちょっと少ない観客のためのアイデアに惹かれています。」

こうした言葉を踏まえてみれば、タランティーノが『スター・トレック』への関与を考え直すのも理解できるというものだろう。『スター・トレック』の新作を手がけることになれば、スタジオ製作の大作映画として製作されることはおおよそ間違いない。『ワンス・アポン~』を最後に大作路線を終えるつもりなら、別の企画が監督引退作となるほうが自然な流れというものだ。

現在、タランティーノは『キル・ビル』2部作(2003-2004)の続編となる『キル・ビル Vol.3』について「ちゃんと実現しそう」「少なくとも3年後」と述べているほか、『ジャンゴ 繋がれざる者』続編企画にも携わっているという。自作の続編を手がけることで「エピローグ」とする可能性は大いにありそうだ。なお、今後数年間は小説や舞台、テレビドラマの世界で創作を行う模様。そのかたわらで、いずれ来る10作目の構想を練ることになりそうだ。

なお、もしもタランティーノが『スター・トレック』新作を離脱する場合、企画そのものを別のフィルムメーカーが引き継ぐのか、企画そのものが消滅するのかは不明。たとえ原案のみの関与であっても、タランティーノ版を観てみたいという映画ファン、『スター・トレック』ファンは少なくないはずだが…。

Source: Consequence of Sound, Deadline

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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