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『TENET テネット』アクションを読み解く ─ 記者会見レポート、時間逆行バトルができるまで

TENET テネット
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』が2020年9月18日(金)に公開される。これに先がけて、本作の豪華キャスト&スタッフが参加した記者会見が開催された。THE RIVERでは、この会見の模様をテーマごとに整理して余すところなくお届けする。

第4回は「アクション編」として、早くから話題を呼んだ本物のジェット機を破壊してのスタントシーンの舞台裏や、〈時間の逆行〉を利用したアクションの開発秘話、実際にハードなアクションに挑んだ感想などを紐解いていこう。ジョン・デイビッド・ワシントンロバート・パティンソンクリストファー・ノーラン監督、プロデューサーのエマ・トーマスのコメントをどうぞ。

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『TENET テネット』時間逆行アクションの裏側

── ジョン・デイビッド、ノーラン監督作品に出演するにあたって、何か特別に準備したことはありましたか?

ジョン・デイビッド・ワシントン:まるで“クリストファー・ノーラン大学”に通う準備をしているようでした。まずはスタント・コーディネーターのジョージ・コットルとのトレーニングをしたんですが、そこから役柄についてたくさん学びましたね。自分がどう感じるのか、どうアプローチするのかを、役の身体性が教えてくれる。これは初めての体験でしたね。格闘技を習得して、首を折るプロになったら、いったいどんなことを感じるのか。とても興味深いプロセスでした。

── リアルなシチュエーションでの実写撮影は演技にどんな影響を与えましたか?

ワシントン:ムンバイでバルコニーを飛び越えなければならなかったんですが、僕は高い所が苦手なので、勇気を振り絞ることになりましたね。あのシーンは全部のテイクが最高でした。あの時、本当にこの映画に出てるんだなという実感が湧いたんですよ。それから、地中海で良いシャツを着てボートを操縦したのも楽しかったですね。

── 高い所が怖いという話は監督にしていたんですか?

ワシントン:「馬に乗れるか?」と聞かれたら「できます」と答える、それがだいたいの俳優だと思います。「できる」と言っておいて、なんとかやり遂げる。ムンバイのシーンで、クリス(ノーラン)はとても辛抱強く付き合ってくれました。だからミスター・ノーラン、僕はほんとに感謝しているんですよ。僕は基本的に言われたことをちゃんとやるんだけど、あの時はそうじゃなかったので。だけどやれた、やり切ったんです。そう思います。

クリストファー・ノーラン:あの時、怖がっていたとは思わなかった。ただ、言ったことをやってくれないなとは思ってましたけどね。(怖いのを)君がちゃんと隠しているものだから。だけど、どんな時であれ、いくつものチャレンジに挑んでくれる俳優たちを見ているのは素晴らしいものですよ。カメラを回すと、とにかくベストを尽くそうとしてくれる。これだけハイレベルな人たちと仕事できるのはありがたいものです。

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── 撮影に本物の747型機を使用されたこともチャレンジだったと思います。なるべくCGを使わないという意味で、実現が大変だったシーンは他にありましたか?

エマ・トーマス:飛行機のシーンは、特に準備する時間がたくさん必要でしたね。撮影に使ったのが実際に営業している空港だったので、いつも通りのやり方では実現できなかったんです。あらゆる許可を取ることも、実際にどうやって撮るかという点でも、本当に大変な困難でした。

だけど今回の場合、そういうアクションシーンを隔週で撮っていた感じだったんです。普通に高速道路を走るとか、そういうことでさえ大変なチャレンジでした。スケールが大きいために、街のど真ん中を3週間も封鎖しなければならないとか。とにかく大ごとなので、たくさん人手も要りますし、交渉から実現までは時間がかかる。けれども幸い、スタッフは優秀だし、撮影した土地では温かく迎え入れてもらえました。実際には温かい気持ちではなかったのかもしれませんが、この映画を撮る価値を認めてくださり、関わりたいと思ってくださった。本当に助かりました。

TENET テネット
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── この映画には、かつてない格闘シーンが登場します。時間を順行する人と逆行する人との接近戦など、どのように振り付けをしたのでしょうか? そしてジョン・デイビッドとロバートはどのように演じたのでしょうか。

ノーラン:まだ映画を観ていない人のため、ネタバレにならないよう気をつけたいと思います。もちろん自分が書いた脚本なので、いろんなことが分かっていて、格闘の大変さもあらかじめ把握していました。言うまでもなく、〈時間の逆行〉というコンセプトの視覚化は重要だったからです。なので、スタント・コーディネーターのジョージ・コットルと、ファイト・コーディネーターのジャクソン・スピデルとは非常に早くから話し合いを始めました。いろいろな戦い方をたくさん検討して、どうすれば時間を操れるのかということを考えたんです。

それから、徹底的にリハーサルに取り組みました。この映画で最初に手をつけたのがアクションの振り付けで、とても優れたスタントパーソンやダンサーたちと時間をかけて準備しましたね。ダンスの振り付けからはいろんなことを学びましたよ。とても気を遣い、注意を払って作業したのは、身体の動きこそが“主人公”やニールという身体的なキャラクターを表すと考えたから。映画の中でアクションがどう成立するかということにも懸命に取り組みました。その部分が最初に決まり、絵画の保管庫で格闘するシーンから撮影を始められれば、あとはアクションのスケールが大きくなり、複雑になるにつれて、収まるべきところに収まるだろうと思ったんです。

TENET テネット
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ワシントン:僕はアメフト選手だったので、動きが体になじむまで練習を繰り返すことには慣れています。「できるようになるまで練習するのがアマチュア、絶対に失敗しないレベルまで練習するのがプロ」という言葉がありますが、この作品ではスタントチームとの練習が数ヶ月間に及びました。お互いに試行錯誤しながら、新しいアクションや格闘の可能性を切り拓こうとしていたので、そういう絆が生まれてとても良かったです。振り付けが身に付くと、そこにある精神がわかり、より快適に、自信をもってやれるようになる。撮影ではとにかく興奮したし、楽しかったですね。新しい格闘スタイルというか、その一翼を担えて本当に刺激的でした。

ロバート・パティンソン:ジョン・デイビッドが撮影の一週目にやっていたことをずっと覚えています。誰も経験がないような、すさまじいアクションをやっていました。そして完成した映画を見たら、演技だけでなく、あらゆる側面が本当に素晴らしかった。ただでさえすごいと思っていたのに、さらにブルース・リーばりのアクションをするんだから(笑)。本当にすごいですよ、ジョン・デイビッドは類まれなる俳優だと思います。

第1回「ストーリー編」
第2回「キャラクター編」
第3回「音楽編」

〈時間〉から脱出して、世界を救え。名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン)は、突然あるミッションを命じられた。それは、時間のルールから脱出し、第三次世界大戦から人類を救うというもの。キーワードは〈TENET テネット〉。名もなき男は、相棒(ロバート・パティンソン)と共に任務を遂行し、大いなる謎を解き明かす事が出来るのか……。

映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)全国ロードショー

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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