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『ターミネーター』ダダンダンダダンのテーマ曲は、なぜ音が微妙にズレているのか

ターミネーター

ターミネーターの世界は何度か未来が書き換わる。しかし、たとえ私たちの未来まで書き換えられたとしても、“ダダンダンダダン”のテーマ曲は永遠に愛され続けるだろう。

映画史上、最も偉大な主題歌のひとつであるこのテーマ曲を生み出したのは、アメリカの作曲家ブラッド・フィーデル。ダリル・ホール&ジョン・オーツのキーボードとしても活動するブラッドにとって、1984年公開の『ターミネーター』の仕事は彼のキャリアを代表する成功例となった。一体、どのように生み出されたのだろうか。


『ターミネーター』主題歌、微妙な音ズレの理由

『ターミネーター』のテーマ曲は、象徴的な“ダダンダンダダン”のパーカション(打楽器)と、シンセサイザーのメロディの組み合わせによって成り立っている。はじめはピアノで作曲してから、「これをどうやって金属音の鼓動にしようか」と検討した。レコーディングの際、ブラッドは2機のシンセサイザー(Prophet-10とオーバーハイム)を手作業で同期しようと試みていた。

今ではケーブル一本、またはパソコンの画面上で複数の楽器を同時に演奏することはできるが、作曲時の環境では、「文字通り、手作業で2機を同期する」必要があったと、ブラッドは語っている。ちなみに、当時からMIDI(電子音楽同士を接続するための世界共通規格)は存在したものの、ブラッドは機材の入手に至っていなかった。

“ダダン・ダン・ダダン”のリズムの頭に聴こえる「カァン」という金属音は、フライパンを叩く音を録音したものだ。ブラッドは、これらパーカッションをループさせたものをPropthet-10に、残りの部分はオーバーハイムに入れた。しかし、音は現在のようにクオンタイズ(=音のタイミングを正しく補正すること)できない。それぞれ手作業で録音したループトラックを、手作業で同期させようとしているのだ。しかも、機材内蔵のメトロノームのタイミングが、機材によって若干ズレてもいた。どうしても音が前のめりに聴こえてしまうが、その偶然生まれる“ぎごちなさ”を、ブラッドは「これも魅力だ」と気に入った。今では“機械的に”音のタイミングを合わせることもできるが、当時のアナログ機材に人間が即興的に録音したことで、かえって“機械”らしい雰囲気が出来上がったということだから面白い。

「確かに、音楽的には精確ではないかもしれません。しかしアーティストとして、物事が想定とは違う方向に行ったことを受け入れることを学び、むしろそういった状況を大切にする瞬間があるものです。想定外のことが、かえって個性を生むこともあります。」

『ターミネーター2』移調の理由

このテーマ曲は、『ターミネーター2』で勇敢さを感じさせる移調を経ているが、1作目のものはよりマイナー調で、退廃的なメロディだった。ブラッドはもともと、1作目に漂う「哀しさ」を表現したのだという

「未来の光景のシーンで、壊れたTVの中に火を灯して身を寄せ合う人が映る。あのイメージです。あれがメロディーに繋がった。マイナーキーの、あのシーンの感覚のメロディです。その下で聴こえる脈のような音は、ターミネーターの容赦のなさを表しています。

“ダダンダンダダン”は皆さんご存知かと思いますが、メロディを歌えるという方は少ないでしょう。でも、それがひとつになると、テーマ曲として成立するんですよ。勢いとインパクトがあるし、自分たちが作った人工知能に人類が滅ぼされるというテーマも込められています。」

『ターミネーター2』では、1作目でサラ・コナーの命を狙う恐怖のアンドロイドだったT-800(と同モデル)が味方に転じ、少年ジョン・コナーと戦う展開に。ブラッドは「ある意味で、あたたかくなる」と『ターミネーター2』の作風を理解。「いきなり子供が出てきて、ターミネーターがヒーローになる。(1作目とは)違ったフィーリングがありますよね。」1作目と2作目で、テーマ曲に違いがあるのはそのためだ。

それにしても興味深いのは、人間が作った機械と人間との戦いを描いた『ターミネーター』の主題歌は、人間(作曲者)の意図通りには演奏できなかった機械(シンセサイザー)との偶然的なコラボレーションによって作られていたということ。「私の想像力は、いつもその当時の技術の限界を超えていたので、いつも無茶をしましたよ。」(ブラッド)

Source:Den of Geek,Regenmag,Slate,Redbull

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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