トム・ハーディ&オースティン・バトラー『THE BIKERIDERS』60年代アウトローの世界をエンジン音全開で描く【先取りレビュー】

(カナダ・トロントから現地レポート)『ヴェノム』シリーズなどで知られるトム・ハーディと『エルヴィス』が話題となったオースティン・バトラーが共演する『The Bikeriders(原題)』が、北米公開を迎えた(2024年6月21日)。実在するシカゴ・アウトローズ・モーターサイクル・クラブを4年間にわたり記録した写真家ダニー・ライアンによる同名写真集(1967年刊行)にインスパイアされた一本。60年代を舞台に、架空のモーターサイクルクラブ「Vandals(ヴァンダルス)」の約10年にわたる変遷を描いている。
トム・ハーディがクラブのリーダーを演じ、オースティンはジェームズ・ディーンを彷彿とさせるルックスの喧嘩っ早いバイカーを演じる。脇を固めるのはマイケル・シャノンやノーマン・リーダスら実力派俳優。オースティン演じるバイカーの妻キャシーは、『フリー・ガイ』などのジョディ・カマーが好演。独特なアクセントを披露している。
本作は、とあるバーにてベニー(オースティン・バトラー)の後ろ姿を映し出すシーンからスタート。まるで写真を切り取ったようなインパクトのあるシーンだが、そこでベニーは2人の男に絡まれてしまう。ヴァンダルスを象徴するジャケットを脱ぐよう要求されたベニーは「脱がしたければ先に俺を殺せ」と吐いたことで喧嘩に発展。そしてベニーがシャベルで頭を殴られる寸前、突如、写真家ダニーによるキャシーへのインタビューシーンに切り替わる。これまでバイカーとは無縁だったキャシーは、ベニーと出会って5週間後に結婚したことをインタビューで語り、「いろんなことに巻き込まれてしまった側」の彼女視点で、ヴァンダルズの物語が明かされていく。
ヴァンダルスを作ったのは、映画『乱暴者』(1953年)のマーロン・ブランドに憧れたジョニー(トム・ハーディ)だ。当初はアウトサイダーたちの“居場所”だったヴァンダルスだが、拡大するにつれ、犯罪や暴力と常に隣り合わせのギャングへと変貌。これまで兄弟のように構築されたクラブ内の人間関係にも危機が迫る。また、夫との将来に大きな不安を抱えるキャシーと、ベニーを弟のように可愛がるジョニーが対立、その一方でベニーは、自由に対する欲望が高まっていく。このように何層も積み重なったストーリーはどの関係性を切り取っても興味深いものになっている。
監督を務めたのは『ミッドナイト・スペシャル』(2016年)などのジェフ・ニコルズ。米Esquireによると彼がダニー・ライアンの写真集に出会ったのは20年前で、それ以来ずっと夢中になっていたという。「今まで出会った中で最もクールな本」と話すニコルズ監督は、ライアンが感じたものをしっかりと捉え、「多くの観客に伝える」ことを望んでいるとコメントしている。ストーリーはフィクションだが、キャラクターは写真集に収録されたインタビューから着想を得ている。
本記事時点で、本作は、Rotten Tomatoes批評家スコアで81%を獲得。観客スコアも74%と高い数字を記録している。「最初から最後まで引き込まれる作品」などのコメントのほか、特にオースティンの演技には「タイムトラベルが存在すると信じさせられる稀な俳優」など、多くの賞賛の声が寄せられている。
劇場では、迫力満点のサウンドシステムによるバイクのエンジン音や臨場感に存分に味わえ、自宅では得られない「映画体験」が楽しめる。日本公開された際は、劇場での鑑賞をお勧めしたい。映画『THE BIKERIDERS(原題)』は2024年秋、日本公開。
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