「ザ・ボーイズ」ホームランダー役、オーディションは砂漠から ─ 「彼はスラムダンクでした」と製作者

腐敗したヒーローのクズな姿が容赦なく描かれるドラマシリーズ「ザ・ボーイズ」の顔といえば、アメリカ国旗を肩から提げるブロンドヘアのヒーロー、ホームランダーだ。その好印象な見た目とは裏腹、国民や仲間の目を盗んで悪事を働いている。そんな前代未聞のスーパーヒーローを演じているのは、ニュージーランド出身の俳優アントニー・スター。ハリウッドでの知名度も今ほどでは無かったアントニーは、いかにしてホームランダー役を射止めたのだろうか。
このたび、米Deadlineの取材に応じた「ザ・ボーイズ」ショーランナーのエリック・クリプキが、ホームランダー役をめぐるオーディションについて言及。「キャスティングはたくさんの運に恵まれていました。どうなるか分からなかったですからね」と、2017年当時に行われたオーディションを振り返るクリプキは、アントニーについて「彼はどこかの高地の砂漠でインディ映画の撮影をしていて、トレーラー(控え室)から自撮りのオーディションビデオを撮ってました」と、印象的なエピソードを明かしている。
「しかも、彼はインターネットがある場所まで行かなきゃいけなくて、テープを送るのにもひと苦労だったと思います。彼はまるで火星にいるかのようでした。」
「ザ・ボーイズ」出演前、アントニーは「Tricky Business(原題)」や「バンシー 」(2013-2016)など、主にドラマ作品での活躍が目立っていた。オーディションテープを撮った時に参加していたのは、珍しくアントニーが主演を務めた2019年のコメディ映画『Gutterbee(原題)』だと思われる。撮影の合間を縫って撮った自撮り動画とはいえ、アントニーは的を得たアピールに成功したようだ。
「私が強く反応したのは、彼が最初から持っていたキャラクターへの解釈です。化けの皮を剥がすとソシオパスなアメリカのヒーローのことですが、彼は最初から、試合の時に浮かべるようなチャーミングなアメリカ人の笑顔を見せる一方で、目の端にはとっても危険でサイコなものを浮かべていました。」
そんなアントニーを、クリプキは「彼はスラムダンクでした」と表現。いわば、強烈なダンクシュートよろしく、ホームランダー役にふさわしい印象を植え付けたということだろう。「間違いなく(ホームランダーの)役に推した唯一の役者ですね」とクリプキ。「彼はどの俳優が挑むどんな事よりも真剣に取り組んでいます」と役に対するアントニーの姿勢を称賛した。
ところで、本編を観た方にとってホームランダーといえば、とんでもない悪党というイメージを持たれがちだが、クリプキいわく、これはアントニーが意図するものではないのだとか。「パネルイベントなどで、“あなたは最高のヴィランです”と言われると彼(アントニー)は腹を立てるんです」とクリプキ。「優れた俳優が言うことですが、彼は“僕はヴィランじゃないんですよ。これ何回言えば伝わるかな。まだ真価が認められていないみたいですね”って感じでした」。
確かにホームランダーの横暴ぶりを表面的に見ると悪党にしか映らないが、心に闇を抱えた彼の行動の真意を推し量ると、哀れにも思えてくる。こうしたキャラクターが持つ両義性を意識してみると、ホームランダーに感じることも変わってくるかもしれない。
▼「ザ・ボーイズ」 の記事
【ネタバレ】「ジェン・ブイ」シーズン2は亡くなったアンドレ役チャンス・パードモをいかに追悼したか ─ 「かけがえのない友人だった」と共演者 「アンドレを讃えるために」 「ジェン・ブイ」シーズン2は「ザ・ボーイズ」最終章への布石? ─ 「お互いに見事なダンスを踊っている」 両方観ればより楽しい 「ジェン・ブイ」シーズン2配信スケジュールまとめ ─ 「ザ・ボーイズ」最終シーズンに直接つながる ついに登場 亡くなったアンドレ役チャンス・パードモは「ジェン・ブイ」シーズン2にも「常に存在している」とショーランナー ─ 「彼がいなければ成り立たない」 しっかり、観よう 「ザ・ボーイズ:メキシコ編」制作中 ─ 「キャシアン・アンドー」ディエゴ・ルナが製作参加 ユニバース広がる
Source: Deadline