Menu
(0)

Search

『死霊館』シリーズ成功の鍵は? ─「実話は心に響く」、製作者が語る10年間の歩みとこれから

アナベル 死霊博物館
©2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

実話から生まれた『死霊館』ユニバースが誕生10周年を迎えた。シリーズはこの間、『アナベル』『死霊館のシスター』シリーズや『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』(2019)で縦にも横にも拡大。2023年10月13日(金)には最新作『死霊館のシスター 呪いの秘密』が日本公開を迎える。

“ホラーの天才”ジェームズ・ワン監督とともにユニバース拡大に貢献してきたのが、プロデューサーのピーター・サフラン。2022年にはジェームズ・ガンと共にDCスタジオのトップに就任し、ユニバースの一新を担う映画界の重要人物だ。

THE RIVERでは、『死霊館のシスター 呪いの秘密』公開に先がけて、『死霊館』シリーズを導いてきたサフランのオフィシャル・インタビューを入手した。誕生のきっかけから大ヒットの理由まで、濃く深く語るサフランの言葉から、10年間の歩みを振り返ってみよう。

「マンダロリアン シーズン3」「アソーカ」解説

『死霊館』ユニバース10周年、製作ピーター・サフラン 公式インタビュー

 死霊館のシスター 呪いの秘密
© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

── 『死霊館』の公開から10年、この圧倒的人気を誇る映画ユニバースの売上は20億ドルを超えています。その始まりを振り返ってみて、実話に基づく超常現象研究家のウォーレン夫妻の物語に引き込まれたきっかけを教えて下さい。

昔から怖い話の実話が好きでした。そのなかでも『エクソシスト』が頂点でした。ペロン一家とウォーレン夫妻の調査の話を聞いた時、「父親は家族を守るためにどうするか?」について掘り下げるというアイデアに惹かれました。当時私はまだ若い父親でしたから、そのアイデアが自分にすごく響きました。

ペロン一家は発生している事象に一貫性があったのが良かったですし、その事件はウォーレン夫妻が調査した中でもよく知られたものでした。私がその事件に惹かれたのは、それが実話だったこと、そして父親が娘たちを守るという家族の話であったことからだと思います。加えて私は長い間、超常現象スリラーの映画をやる機会を模索していました。『エクソシスト』(1973)『オーメン』(1976)『ホーンティング』(1999)などを観て育ちましたが、そのジャンルの映画を製作する機会はありませんでした。これだと思える物語を積極的に探していて、ペロン一家の事件がまさにそれでした。

そこで私はすぐに脚本家たちに声をかけ、チャド・ヘイズとケイリー・ヘイズという兄弟と手を組みました。私たちは企画資料をつくり、入札を求めてあらゆるところでプレゼンしました。最終的には良き友であるニューライン・シネマでやることになりました。

死霊館
©Warner Bros. Entertainment Inc.

── そこからジェームズ・ワンとのすばらしいパートナーシップが始まるわけですね。

その通りです。『死霊館』の数年前、私はホラー系で有名な監督たちにコメディー系の作品を製作してもらうという企画をやり、ジェームズとXbox向けの短編映画を製作しました。以前から彼の作品が好きでしたが、この短編作品の製作を通じて彼のことを知ることができました。彼との仕事はとても楽しかったです。ヘイズ兄弟が書いた脚本の草案を読み、この映画は絶対にやりたいと思いました。監督をオファーしたのはジェームズだけでした。彼ならこの映画を作るのにパーフェクトな監督かつパーフェクトな仕事仲間になると分かっていました。彼は今でもパーフェクトな監督で仕事仲間です。

── 『死霊館』は爆発的なヒット作になりました。振り返ってみて、あなたとジェームズは同作がこのようなかたちで反響を呼ぶことは想像していましたか?また、空を突き抜けるほどの大ヒットとなった要因は?

要因はたくさんあると思います。最初の試写会のときから、「この映画には何か特別なものがある」と感じていました。脚本がすばらしいこと、物語がうまく機能していることを実感していました。実話は観客の心に響く傾向があることも知っていました。俳優陣もすばらしい演技をしてくれました。そして最初の試写会で、観客が本当にのめり込んでいるのを目の当たりにしました。『死霊館』は少し懐かしい感じのある映画です。流血やグロさはないし、登場人物が次々と殺されるわけでもないです。ファストカットを使った映画でもないです。急に驚かせるシーンばかりの映画でもないです。非常に上品につくり込まれた物語です。ジェームズはいつも「超常現象スリラーの家族ドラマを作りたい」と言っていました。『死霊館』の核にあるのは家族ドラマです。登場人物がすばらしかったので、彼らが直面する窮状を見た観客は、その世界にのめり込んだんだと思います。

死霊館 エンフィールド事件
©Warner Bros. Entertainment Inc.

最初の試写会から「この映画には何か特別なものがある」と感じていましたが、公開された週末はほかにも多くの公開作品がありました。多くのメジャーなタイトルと競わなければならず、トラッキングでのオープニング興行収入予想は2,000万ドル程度でした。それが金曜夜には「2,300万、2,400万になりそうだ」となり、土曜朝には「もしかすると2,600万、2,700万になるかも」と。日曜朝には「2,900万、3,000万かも」という、聞いたことも無いような数字に膨れ上がりました。そして月曜朝には公開週末の興行収入が4,000万ドルだったと判明し、トラッキングでの予想の倍になりました。まさに『死霊館』がすばらしい映画製作、魅力的な物語、そして美しく作り込まれた独自のホラーシーンの賜物であることが証明されました。ほかに類を見ない創造的かつ巧みなホラーシーンこそ、「死霊館」ユニバースの醍醐味になったと思います。

──すばらしい仕事仲間と言えば、ウォーレン夫妻を演じるベラ・ファーミガとパトリック・ウィルソンという見事なキャスティングです。それぞれ、またペアとして、彼らが適役だと感じた理由は?

ジェームズとパトリックは、『死霊館』を撮影した前の年に公開された『インシディアス』を通じて、お互いによく知った仲でした。パトリックについては「すごく良い人物だ」などと良い話をよく耳にしていたし、すばらしい俳優だと思っていました。パトリックとベラは友達同士で、ベラは誰もが尊敬し、愛する俳優です。人としても本当にすばらしいです。

あれは本当にベラとパトリックの「あなたやりたい?」「君がやるなら僕もやるよ」という感じのやりとりでした。そんな感じで始まって。ふたりの関係性は初日から本当にすばらしかったです。実際のエドとロレインは、長年愛にあふれる結婚生活を送ってきた夫婦でした。ベラとパトリックはそれを見事に、繊細に表現してくれました。

死霊館 悪魔のせいなら、無罪。
© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

── 第1作には、後に予想だにしないほど重要となるプロローグがありましたね。映画での再解釈を経て、今ではウォーレン夫妻が保管している品のなかで最も有名なものの1つとなり、自身が主役の映画まで作られたあの人形についてお話いただけますか。

あれはジェームズの案です。アナベルを起用したプロローグを入れるというアイデアは、彼が監督としてチームに加わった時に提案したものです。映画のオープニングとしてすごくインパクトがあります。ガラス製の目の超アップ映像で映画が始まるなんて、本当に飛び抜けています。アナベルは良く知られている事件で、メインストーリーのほかに、観客のために面白いものを加えただけのつもりでした。いざ上映すると、観客はすぐアナベルに魅了されました。『死霊館』が公開されてすぐ、私たちはお互いに「邪道だけど、独立系スタイルでアナベルの映画をつくらないか?」という話をしました。ニューラインが大きく支持してくれたので、信じられないくらいの低予算でその映画をつくることができました。

アナベル 死霊館の人形
©Warner Bros. Entertainment Inc.

撮影は短期間でした。ジョン・レオネッティは撮影監督として長い間ジェームズと仕事をしていたため、やり方を熟知していました。加えて彼は独立系の作品を多く手がけていたため、驚くほどハイペースで撮影ができました。あの映画をつくること、そして観客がそれを楽しみにしてくれていたことは最高の気分でした。500万ドルで製作された映画が2億6500万ドルもの全世界興行収入を叩き出したのは驚異的です。あの映画の成功は、よくできた超常現象系スリラーへの需要がしっかりあることを証明しました。あのプロローグを入れたジェームズは本当に称賛に値します。

── ジョン・リオネッティについて言及されていましたが、あなたは彼だけでなくゲイリー・ドーベルマン、デイビッド・サンドバーグ、コリン・ハーディ、マイケル・チャベスなど、才能あふれる人材のユニバースも生み出されていますよね。「死霊館」だけでなく、映画制作に携わる数々のクリエイティブ人材も育てようと思ったきっかけは何ですか?

私たちが大切にしたのは、内側から成長を促すこと。より大きな権限、当事者意識、映画制作スタイルの確立などに向けて、各々が異なる出発点から進歩していける才能ある人材で構成された中核的グループを築くこと。彼らはそういった才能ある人材だと思っていましたし、彼らならこれまで以上のものを生み出せると思いました。改めてジョンとはすばらしい仕事ができました。

死霊館 悪魔のせいなら、無罪。
© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『アナベル 死霊館の人形』(2014)は短期間で製作しようということで、ゲイリー・ドーベルマンは脚本を2週間で書き上げました。彼は超常現象・スリラー・ホラー系映画において史上最高の脚本家のひとりで、独自のスタイルを持つ優れた映画制作者でもあります。『死霊館 エンフィールド事件』ではドン・バージェスが撮影を務めましたが、『アナベル 死霊館の人形』では彼の息子のマイケル・バージェスが撮影を務めました。私たちは出来る限り内側から成長を促すよう努め、すぐれた人材の集団をつくり上げています。そしてそういった人材の次世代には、アケラ・クーパー、リチャード・ナイン、イアン・ゴールドバーグなどがいます。『死霊館 エンフィールド事件』(2016)の脚本を担当したデイビッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリックは『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(2021)『アクアマン』(2018)『アクアマン 失われた王国』(2023)の脚本も担当しており、現在は「死霊館」の次回作の脚本に取り組んでいます。

 死霊館のシスター 呪いの秘密
© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

私たちは彼らのような才能を早く見い出し、できるだけ一緒に仕事をしたいと考えています。そこにはお互いに信頼関係があるからできることです。「死霊館」シリーズの製作に関わるメンバーたちの間では、本当に家族のような雰囲気が育まれています。ニューライン・シネマのリチャード・ブレナーやデイブ・ノイスタッター、そしてあの気難しいクレイグ・アレクダンサーでも同様です(笑)。私たちは10年以上も一緒に映画をつくり、大きな成功を収めてきたファミリーです。困難に直面することもあったけれど、常に力を合わせて乗り越えてきました。

映画『死霊館のシスター 呪いの秘密』は、2023年10月13日(金)全国公開。

Writer

アバター画像
THE RIVER編集部THE RIVER

THE RIVER編集部スタッフが選りすぐりの情報をお届けします。お問い合わせは info@theriver.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly