【レビュー】『ホリデイ』『アパートの鍵貸します』で気づく、失恋の意味と「自分を大切にすること」って?

今回ご紹介する映画は、恋をしたいと思っている方々、または現在恋している方々にお薦めの、心が温かくなる冬の定番映画です。本当はクリスマスに観たい映画なのですが、未見の方はお正月にでもゆっくりまったりとご覧になって、ぜひハッピーな気分になってくださいね。
皆さん、恋を成就させるためには“駆け引き”が必要だと思っていませんか? 実は、本当に必要なのは駆け引きではなく自分を好きにさせる相手への“配慮”なのです。好きになることは簡単ですが、好きにさせることは難しい。それでも人は恋したいし、傷つくことを恐れていても誰かと繋がりたいものです。胸をキュンキュンさせたい、ハグしたい、恋人つなぎをしたい、キスしたい、セックスしたい……。
今回は、恋愛映画の定番『ホリデイ』から普遍的なテーマである“失恋”を、名作『アパートの鍵貸します』から失恋とは表裏一体の“自分を大切にすること”を、(私自身の恋愛観も交えながら)考察したいと思います。
『ホリデイ』(2007年)
失恋したふたりの女性同士が、家や車を交換する“ホーム・エクスチェンジ”を試みて人生を切り拓いていくラブストーリー。音楽、脚本、配役と3拍子そろった映画です。キャメロン・ディアス本人の、キュートでユーモア溢れる底抜けに明るい人柄がそのままアマンダ役に生かされています。そして、ジュード・ロウ扮するグレアムの表情、横顔、唇の噛み締め方、流し目、優しくて繊細な眼差し……。キスシーンでは思わず胸がドキドキしますよね。
そんな魅力的な彼だから、失恋して傷つきたくないと思うアマンダ。深入りしないようにと守りに入ってしまい、休暇を終え家に戻ろうとします。ただの独身のプレイボーイかと思っていたグレアムには二人の娘がいたのです。彼の立場からすれば、二人の娘の存在ゆえに恋愛にも慎重にならざるを得ず、「すぐに去ってしまう女性を娘たちには会わせたくない」と言います。グレアムの娘たちへの愛情の深さは理解できますが……。アマンダが泣きながらグレアムの元へ引き返した時、彼も涙を流していました。実はアマンダと同じように、グレアムも傷ついていたのです。好きならアマンダを追いかけてほしかった、のですが、これってもしかして男性脳ならではの考え方なのかもしれませんね。
失恋から立ち直るために、旅に出たり、新しい環境に身をおくことは大切なことです。ホーム・エクスチェンジは、実際あるようですが大胆な発想ですね! 家に閉じこもったままだと、次の出会いのチャンスが来ないもの。この映画のように旅行やホーム・エクスチェンジができないとしても、たとえば外出するだけでもいいかもしれませんね。
この映画から気づいたことは、失恋は幸せになるために必要な試練、本当の愛に出会うための大切な経験だということです。「失恋の苦しみは辛いけれど、恐れずに前に進みましょう。失恋は、いつか本当に愛し合える人と巡り逢うための新たなスタートなのだから」……って言うのは簡単ですが、中々そう思えないのが失恋ですよね!
『アパートの鍵貸します』(1960年)
出世をかけて、上役の情事のためにせっせと自分のアパートを貸している会社員バド(ジャック・レモン)。だが人事部長のシェルドレイク(マクマレイ)が連れ込んだエレベーターガールのフラン(シャーリー・マクレーン)は、バドの意中の人だった……。
古き良き時代のアメリカ。主人公バドのアパートの部屋やバーの美術のほか、点鼻薬、グラス、帽子、シャンパン、手鏡などの小道具も効果的に使われていて、目に映るもの全てが興味深く、画面に釘付けになります。
バドはお調子者で人が良く、想いを寄せるフランが不倫をして、自分の部屋でとんでもないことをしでかしても、ひたすら優しい男です。たとえ誤解されても彼女をかばいます。彼も同じような経験をしているので、人の痛みが解るんですね。しかし、好きな女性相手にはどこか落ち着きがなかったり、単純だったり、まめで気を使うわりには気のない女性には冷たかったりと、独身男性の心理(ここ大事)を表す描写が見事!
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