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【最速レビュー】『The Last of Us Part II』前作を凌駕するビジュアルと圧倒的な没入感、“絶望と希望”の狭間に立たされる物語

The Last of Us Part II
©Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.

全世界で200以上のゲームアワードを受賞した、傑作サバイバルアクションの決定版『The Last of Us(ラスト・オブ・アス』のエンディングから5年後の物語を描く正当な続編『The Last of Us Part II』が、2020年6月19日に満を持して発売される。

THE RIVERでは、世界中の人々が夜も眠れぬ日々を過ごしながら待ち望んでいるであろう、続編『The Last of Us Part II』を一足先にプレイする機会に恵まれた。そのレビューをお届けしたい。

前作『The Last of Us』のおさらい

前作『The Last of Us』の物語に言及しています。

まずは、前作の物語を振り返るところから始めたい。『アンチャーテッド』シリーズなどの開発会社Naughty Dogが2013年に発表した『The Last of Us』は、人間を凶暴化させる謎の感染爆発によって荒廃したアメリカが舞台となる。かつて娘を失った主人公ジョエルと、孤独な少女エリーの危険な旅路を描いた作品だ。

感染爆発から20年、未だ有効なワクチンが開発されていない状況だ。感染者には様々な形態があって、かろうじて人間の姿を留めたものから、完全に怪物化したものまでいる。しかし、生存者にとっての敵対勢力は決して感染者だけではない。秩序が崩壊した世界で、食料や武器を手に入れるため、手段を選ばずに行動する人間こそが恐るべき脅威なのだ。

ある日、ジョエルはワクチン開発のために、寄生菌の免疫を持っているエリーをレジスタンス組織「ファイヤーフライ」に送り届けるという任務に繰り出すことになる。最初こそ、一定の距離を保ちながらエリーと接していたジョエルだが、危険に満ちたアメリカ横断の長旅を乗り越えていく中で、 次第に亡くなった娘の姿をエリーと重ねるようになり、 実の親子のような関係へと絆を深めていく。ところが、そんなジョエルの前に、ある苦渋の決断が待ち受けていた……。

復讐のため、エリーの旅が再び始まる

The Last of Us Part II
©Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.

『The Last of Us Part II』は前作から5年後が舞台。逞しく成長したエリーはジョエルと共に、ワイオミング州ジャクソンの安全なコミュニティで、パトロール隊として献身的に活躍しながら、新しい仲間たちと共に平穏な日々を過ごしている。

しかし、自警団によって守られているコミュニティの外では、今も変わらず様々な危険が存在。脅威の収まらない寄生菌によって更に凶暴化が進んだ恐ろしい感染者や、対立する生存者たちの激しい闘争だ。そんな中、ようやく取り戻したエリーの平和を一瞬にして崩壊させる凄惨な出来事が起こる。エリーは人生を狂わせた者たちに復讐を果たすため、シアトルへと旅立っていく。

ジャクソンからシアトルへ

The Last of Us Part II
©Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.

ストーリーは基本的に、元隔離地域のシアトルの残存部で展開される。高層ビルが連なる都市から、美しい郊外や荒れた海岸まで、実に様々な景観のある場所だ。ここでは感染拡大と隔離地域の崩壊で領土と資源を巡って、二つの勢力が争っている。その一つが、軍隊的な規律で働く「WLF(ワシントン解放戦線)」という武装集団。シアトル大半を占拠しており、侵入者は子供であっても容赦なく抹殺するような熾烈な組織だ。

一方、「WLF」と対立しているのが「セラファイト」と呼ばれる民族集団で、顔に深い傷が刻まれている特徴から「スカー」とも呼ばれている。身を潜めたプレイヤーの匂いを感知する番犬や近代兵器を装備して戦う「WLF」に対して、「セラファイト」は口笛で敵の居場所を仲間に知らせながら、弓矢で侵入者を追い詰めていく。そんな危険な集団が治める地域を、エリーは必死に掻い潜らなければならない……。

圧倒的な疑似体験

The Last of Us Part II
©Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.

『The Last of Us』シリーズを語る上で何よりも欠かせないのが、プレイヤーの没入感を最大限にまで高める緊張感あふれる映画的なストーリーを、ゲームとして成立させている秀逸な演出力だ。従来の映画的なゲームでは、重要な展開がイベントムービー内で行われる傾向が強く、その度に操作までも阻まれてしまう。

一方、本作は基本的に自分の意思で「戦うか、逃げるか」を判断しながらゲームを進められるだけでなく、プレイヤーの手を止めることなく、シームレスにストーリーが流れていく。例えば、実際にキャラクターを操作している最中にも、登場人物たちの会話や戦闘を通して、ストーリーは止まらず進行。映画の主人公にでもなったかのような疑似体験が味わえるわけだ。また、イベントムービーを終えて、プレイヤーの視点に移り変わる時のカメラワークが実に滑らかで、ゲームとの一体感を感じさせられる。

徹底的に追求されたリアリティで没入感が更に高まっていく。敵に見つからないよう背後に付くことが出来れば、相手に不意打ちを仕掛けて、一気に仕留めることが可能。また、ナイフや弾薬などのアイテム所持数には制限が設けられているため、無闇に使わないよう細心の注意を払いたいところだ。

The Last of Us Part II
©Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.

また、敵側はプレイヤーを察知した際に「ここにいたぞ!」 「近くにいるぞ!」と仲間を呼び寄せたり、居場所を知らせたりする。プレイヤーに侵入されたと気付いた途端、敵はこちらの行動に応じて、戦略を変えてくるようにもなるのだ。つまり、「どこが安全なのか、この先には誰が待ち構えているのか」と息の詰まるような状況をエリーと共に感じることが出来るようになる。ここまで細かく作り込まれたリアリティによって、圧倒的な説得力を生み出すことにも成功。実際に筆者は、目の前に立ちはだかる敵がAIではなく、人間そのものであるとまで錯覚させられたほどだ。

進化を遂げたアクションと息を呑むビジュアル

The Last of Us Part II
©Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.

前作をプレイした時、誰もがPS3のゲームとは思えないまでに研ぎ澄まされたビジュアルに圧倒されたことだろう。もちろん、筆者もその一人だ。言い換えれば、この先どれだけ進化しても、もはや驚く事はないとさえ思うほど。 ところが、続編『The Last of Us Part II』では、雄大に広がる景色・フィールドが息を呑むほど美しく、まるで実写映像を見ているかのようだった。緻密に構築された世界観からは、その場所の空気感さえも伝わってくる。そこで暮らしていた人々の生活を垣間見れる、遺品や手紙なども収集物として残されている。つまり、エリーだけでなく、他のキャラクターのストーリーまで堪能することが出来るというわけだ。

そして、前作には無かった新モーションが追加されたことによって、一層リアルな人間の動きや戦略の幅が広がっている。今回追加されたモーションは、車の下や草むらで隠れながら、敵を追い詰めることを可能とさせる「匍匐(ほふく)」、相手の攻撃をかわしながら、カウンターを繰り出せる「緊急回避」などがある。匍匐に関しては、敵に追い詰められた時に、一旦、戦略を立て直す時にも役立つアクションだ。とはいえ、「WLF」の番犬などに見つけられたり、背後から近づく敵に気づかず、逆に襲われたりすることもあるので、決して万能ではないことも覚えておきたい。

緊急回避は接近戦になった時に便利な技だが、相手の攻撃に上手く合わせてボタンを押さないといけないのだ。失敗すると、一気に攻撃を仕掛けられてしまうので、完璧に扱うためには多少の練習とコツを掴む必要がある。さらに、障害物などを乗り越えるための「ジャンプ」も追加されているので、状況に応じて様々なアクションを使い分けていこう。

何が正しく、何が間違っているのか

The Last of Us Part II
©Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.

エリーは心と身体を揺さぶる凄惨な出来事の連鎖の中、裁きを下し、全てに終止符を打つために、標的を一人ずつ追い詰めていくことになる。しかし、彼女の行動は、やがて自身に降り注がれた悲劇を遥かに上回るほどにまで過激化の一途を辿ることに。

「嫌悪感、罪悪感、屈辱感」など様々な感情がエリーの中を交錯するにつれて、怒りの矛先は無関係の人にまで及んでしまう。どちらが正義で、どちらが悪なのか。一瞬たりとも気を抜くことの出来ない極限状態の中、戦闘にて発生する無数の選択肢から状況に応じて、最良の判断を瞬時に下していかなければならない。その結果、プレイヤーの倫理観が問われていく。

混沌化した現実社会の行く先

The Last of Us Part II
©Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.

『The Last of Us Part II』をプレイしていると、思わず、新型コロナウイルスが感染拡大した現実社会を連想させられてしまうのは、筆者だけではないはずだ。もちろん、本作のように現実社会は壊滅状態というわけではない。ただし、仮にこのままワクチン開発の目処が立たず、感染爆発が起こった日には、ゲームのように規律や法律が崩壊し、無法状態となった領土や食料・資源を巡って、生存者同士の熾烈な争いが繰り広げられていくことも十分にあり得るだろう。

また、ゲームに登場する「WLF」や「セラファイト」のように異なる思想を掲げる集団が、お互いを無差別に傷つけ合う姿に、現実社会で起きている人種問題や領土問題を重ねずにはいられない。しかし、『The Last of Us Part II』ではエリーが仲間たちと温もり溢れる交流を重ねたり、同じパトロール隊に所属する女性ディーナと愛を育んだりする姿も描かれているのだ。つまり、どんな世界が訪れようとも、人の本質は変わらず、必ずどこかに希望は存在する……。本作を通して、筆者は作り手の思いをそのように受け止めている。

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Minami

THE RIVER編集部。「思わず誰かに話して足を運びたくなるような」「映像を見ているかのように読者が想像できるような」を基準に記事を執筆しています。映画のことばかり考えている“映画人間”です。どうぞ、宜しくお願い致します。

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