逞しすぎる主人公 『オデッセイ』感想レビュー

『オデッセイ』
予告やCMで皆様ご存知の通り、火星にひとり取り残されてしまう男の話だ。

ひとり取り残され 生き残るために行動を起こすワトニー(マット・デイモン)、生存を知り 救出のために動くNASA、その果てにワトニーが助かるのか助からないのか。


ラストの二択がどうなるかを除いて、ストーリーの大筋が事前に読めてしまうタイプの作品だ。
この類の作品で肝心なのは そのラストに至るまでをどれだけ魅力的に描けるか。

そういった意味では十分に楽しめるものでした。

冒頭 事が起きてひとり火星に取り残されるワトニー。

その状況に陥ってからの彼のスタートが「火星に取り残されてしまった絶望」から始まるのではなく、腹部に刺さったアンテナの破片によって「生きるか死ぬか」の状態から始まるのが導入として上手いと思った。

実際に宇宙空間に それも地球以外の大地に足を運んだことのある人間はほんの一握りだろう。
火星に取り残されるというリアリティよりも 腹部に何かが刺さるという「傷み」によるリアリティから始まるため、火星という非現実の中でも 十分に彼に寄り添ってストーリーを追っていける。

  • 火星に残されたワトニー
  • ワトニーの生存に気付かず火星を離脱してしまった仲間達
  • ワトニー救出のために奮闘するNASA

この3つの軸でストーリーは進み、気付けばワトニー自身に 仲間のひとりに NASAの一員のような気持ちになってストーリーを追っていた。

ワトニーは記録用にビデオを撮る。
通信アンテナが壊れているため、それは今すぐ誰かに送るためのものではない。

自分が死んだ時のためのものだ。
それと同時に 自分を鼓舞するためのものでもある。

ビデオを撮る時はジョークを交え 常に陽気に努めているのが伝わってくる。

希望とは程遠い絶望に身を置きながらも、あきらめることなく生きていくための行動だ。

植物学者としての知識をフル活用して対処していくワトニーの姿は逞しいが、もう少し彼の弱さを分かりやすく描いたシーンが 葛藤があっても良かった気がする。

どんな事態に陥ってもあきらめることなく最善を尽くす男の姿は魅力的であるが、打ちひしがれ慄き その果てに一歩を踏み出すような描き方の方が より一層ワトニーに引き込まれていたように思う。

地球と火星の途方もない距離が絶望を生むのに一役買ってはいるが、その時間経過を「○ヶ月後」などで済ましてしまうのも少し勿体無い気がした。

劇中 往年の名曲の数々が流れるのだが、ワトニー救出のために皆が一丸となり シーン的にも最も高ぶってる際にデヴィッド・ボウイの「Starman」が流れる。
歌詞とストーリーにおける一致性からの選曲なのだろう。
人によっては感動もするだろう。

しかし ぼくには現実に起きたデヴィッド・ボウイについてのインパクトが強く、それまでワトニーの生き死にについてのストーリーを追っていたのに 現実の「デヴィッド・ボウイの死」というストーリーとは無縁の情報が頭に入ってきて NASAの一員のようになっていた気持ちが冷めた。

終盤 スリリングさに欠けるものもあったが、それまで着実に積み重ねてきたものがあるため最後までしっかり観られました。

IMAX 3Dで観たのですが、それが最も活かされるであろう宇宙空間のシーンがそう多くはないので 2Dでも良かったかもしれません。

ワトニーが逞し過ぎるので(良い意味で)激しく胸を揺さぶられるモノはありませんでしたが、十分に楽しめる作品でした。

4.4
総合評価:C

オデッセイ

原題  THE MARTIAN
製作年 2015年
製作国 アメリカ
配給  20世紀フォックス映画
上映時間  142分

青春
6
2
エロ
4
サスペンス
6
ファンタジー
4

About the author

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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