「観客はバカにされたくない、そんな時代は終わった」 ─ 『THE MONKEY/ザ・モンキー』オズグッド・パーキンス監督インタビュー

やっぱり、プールでスイマーが爆発するシーンですね。もちろん、この映画は僕1人だけで作っているわけではなく、100人規模のスタッフがベストを尽くし、知恵を絞って、組織して調整してくれています。おかげで、特撮と視覚効果を組み合わせられているんです。
あのシーンで目にするのは、ほとんどが特撮で撮られているんです。つまり、同じショットをプレートごとに撮ったんです。まずダイバーがプールに飛び込み、彼女が帰宅した後も、僕たちはその場に残って作業した。VFXと特殊効果のスタッフたちがブリッジから体のパーツを投げ散らかし、血の噴射装置を爆発させて、そのレイヤーをサンドイッチのように重ねていくんです。全てはリアルです。全部、実際にやっています。みんなで協力してジョークを作ったところでいうと、あのプールの場面が1番複雑だったと思います。
──タチアナ・マスラニーが演じたロイスがとても良かった。出番はそこまで多くはないものの、とても印象的で、兄弟についての見方を形作ってくれるキャラクターでした。
彼女はこの映画における良心ですね。みんなにとって、特に兄弟にとっての大きな存在です。それは、僕の人生、僕自身の喪失を反映しているから、映画の感情的な中心を置くのにふさわしいと思ったんです。
彼女は素晴らしい役者で、彼女のセリフは淡々としています。言うべきこととか、言っていいこととか、そういうことに染まっていない。彼女が死生観について話すところは、即興的で、思いやりが感じられるんです。ふざけていないし、裏もない。駆け引きもしていない。彼女は、ありのままを話しているだけ。でも多くの人はそうしません。大抵の場合、真実って、あまり愛を感じられるものではないですから。でも彼女がストーリーの中で「こういうものよ」と切り込んだのは、贈り物だと思います。

──あなたの作品では、タチアナ・マスラニーが繰り返し起用されていますね。
そうです。僕の次回作である『Keeper』が北米でこの11月に公開されるのですが、彼女はそちらでも主演を務めています。実は、本作よりも『Keeper』が先の撮影だったんです。『ロングレッグス』『Keeper』『THE MONKEY/ザ・モンキー』という順序で作ったんですが、『THE MONKEY/ザ・モンキー』が先の公開になって、『Keeper』がそれから仕上がった。だから彼女は2作で2役をお願いしています。彼女は本当になんでもできるから、お願いしやすかった。
──次回作『Keeper』はどんな作品ですか?
リレーションシップ・ホラー映画という感じで、ある男女が初めての週末旅行に、キャビンを訪れるんです。僕の他の作品同様、ある種の認識可能な形を取り入れつつ、期待感を錯乱する感じ。何が起こるかという予想を再構築するんです。それ以上は説明できませんが、また全く異なる形で制作しています。即興というわけではないのですが、撮影を進めながら練り上げていきました。『THE MONKEY/ザ・モンキー』はもっと意図的なアプローチでした。
──猿の人形はほとんど動かないわけですが、そのような制約下でも恐ろしさや力強さを感じました。「そこにいるだけで怖い」という演出にはどのようなこだわりが?
そもそも、この企画で最初から魅力に思っていたのは、世の中には不気味なものがあり、人がそれを見ると「何かがおかしい」と感じるという事実です。腹話術人形もそうだし、猿のおもちゃも同じです。見れば、誰もがどこか不安な感覚を覚えるものです。
そして、「動かないし、飛びかかってくるわけでもない」という事実も大事にしようと思いました。これはミーガン人形ではありませんからね。そいつのアクションで殺してくるわけではない。そうではなくて、偶像や、神のトーテムのようなもの。着座した神のようなものです。そういう宗教はこの世界にたくさんあります。一見すると受動的に見えるものが、世界を回しているといった考えです。今作の猿でもそういった力を描きたかったのです。

──今、ミーガンがチラッと話題に上がりましたが、実は、日本では続編『M3GAN/ミーガン 2.0』が公開直前になって中止になったんです。日本のファンはみんな悲しんでいて、ガッカリしています。近年のホラー映画は勢いに乗っているように見えましたが、もはや、これまでのようにうまくいくわけではないのでしょうか。あなたは、現在のホラー映画の状況や将来について、どのようにお考えですか?
僕は調子が良くて、今は勝ち組の方にいると思います。……