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『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』惑星オクトーの洞窟が象徴するもの ― 語られる『帝国の逆襲』との関係

スター・ウォーズ

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』には、本編では十分に説明されない要素がいくつか存在する。ルーク・スカイウォーカーが隠遁生活を送っている惑星オクトーにある洞窟も、そのうちのひとつといっていいだろう。
複数メディアのインタビューにて、ライアン・ジョンソン監督がその意図するところを語っている。もっとも、その謎がすべて解けるわけではないのだが……。

注意

この記事には、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のネタバレが含まれています。

https://www.youtube.com/watch?v=z9zxunCma0g

『帝国の逆襲』惑星ダゴバの洞窟

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』において、ルークの特訓を受けるレイは、イメージの中で島の地下にある真っ暗な洞窟へと引きずり込まれてしまう。ルークはその事実に怯えるわけだが、のちにレイは、自らこの洞窟へと足を踏み入れることになる。

Slash Filmのインタビューにて、ライアン監督は「島の頂上にジェダイの寺院があるならば、恐るべき闇が広がる場所でバランスが取られなくてはいけません。頂上に光があるなら、地下には闇があるんです」と語った。
シリーズのファンならば容易に連想しうることだろう、そのイメージは『エピソード5/帝国の逆襲』(1980)でルークがヨーダの特訓を受けた場所、惑星ダゴバの洞窟と重なっているのだ。そこでルークはダース・ベイダーの幻影と出会うが、斬ったマスクの下にはルーク自身の顔があった……。

ルークがダゴバの洞窟でダークサイドに直面したのと同じように、レイもオクトーの洞窟で、彼女にとって最大の脅威と向き合うことになる。監督は「彼女にとって一番恐ろしいのは、自分のアイデンティティを探す上で、頼れる人が自分しかいないことなんです」と説明するのだ。自分の出自を求めて、鏡に映したかのごとく無限に広がる自分を見つめたレイの前に現れるのは――ルークがベイダーのマスクの下に見たのと同じように――まぎれもなく自分自身の姿なのである。

しかし注目したいのは、米Entertainment Weekly誌にて、ライアン監督が「映画がお互いに韻を踏み合う(rhyme with each other)んですよ」と述べていることだろう。
確かに『最後のジェダイ』は、ルークによるレイの特訓をはじめとして、『帝国の逆襲』のストーリーをそのまま踏襲するかのようでいながら、人物の関係性を組み替えたり逆転させたり、あるいはまったく別の主題を際立たせたりすることで単純な反復を徹底的に回避しているのだ。現に、ルークとレイは同じように洞窟の中で自分自身の顔を見ることになるが、その意味するところはまるで別物なのである。

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は2017年12月15日より全国の映画館にて公開中。

Sources: http://www.slashfilm.com/rian-johnson-last-jedi-spoiler-interview/2/
http://ew.com/movies/2017/12/16/the-last-jedi-spoiler-rey-parents/2/
©THE RIVER

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。