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『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』ローズ役女優がインスタグラムの全投稿を削除、差別や攻撃受け ― 監督がコメントを発表

ケリー・マリー・トラン ライアン・ジョンソン
Disney/Image Group LA https://www.flickr.com/photos/disneyabc/35559685240/

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)でローズ役を演じたケリー・マリー・トランが、Instagramの全投稿を削除、事実上のページ閉鎖を行っていたことがわかった。
ケリーはアジア系の女優として、史上初めて「スター・ウォーズ」シリーズで主要キャラクターを演じた人物。2018年3月には第90回アカデミー賞の授賞式に、ルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルやポー・ダメロン役のオスカー・アイザックとともにプレゼンターとして登壇していた。

2018年6月6日(日本時間)現在、ケリーのページにはプロフィール写真と「怖い、でもやるしかない(Afraid, but doing it anyway.)」という言葉だけが残されている。

https://www.instagram.com/kellymarietran/ スクリーンショット(2018年6月6日14時現在)

ケリーは投稿を削除した理由を自ら明らかにしていないが、ファンの間では、ケリーに対する差別発言が収まらなかったことが原因だとする声が非常に有力だ。

衝撃の展開によって大きく賛否が分かれた『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』においては、ローズというキャラクターや演じるケリーについても観客の間ではさまざまな意見が飛び交っていた。本編でローズが担った役割や人物造形、展開についてはオンラインでも議論が繰り広げられていたわけだが、問題は、それにかこつけてケリーの人種や性別にまつわる差別発言が繰り返された点にあったのである。「スター・ウォーズ」という超人気シリーズの最新作であるがゆえだろう、こうした問題は世界的に発生し、SNSには日本語の差別発言も散見された。

ケリーがInstagramを事実上閉鎖したことが判明したのち、『最後のジェダイ』の劇場公開以来、ケリーの投稿には差別的なコメントが日常的に寄せられていたことが指摘されている。投稿はすべて削除されているため、現在コメントの内容を確認することはできないが、いかにひどい状況が続いていたか、ファンはそのスクリーンショットを一部公開した。

投稿がすべて削除される以前、ケリーはInstagramにて明るくポジティブな様子をファンに届けつづけていたという。米BuzzFeedがケリーのファン・アカウントに取材したところ、運営者は「ケリーはできるかぎり前向きであろうとしていました。インターネットが常に彼女を攻撃して、ついに彼女は去ってしまったんです」とコメント。なおファン・アカウントにすら、ケリーに対する攻撃は少なからず行われていたという。

この事態を受けて、ケリーのファンが悲しみの声をあげているほか、「スター・ウォーズ」ファンも攻撃者を激しく非難している。これまで過激なファンの言動がジェイク・ロイドやヘイデン・クリステンセン(ともにアナキン・スカイウォーカー役)を追い詰め、ジョージ・ルーカスから映画を撮る意欲を奪い、レイ役デイジー・リドリーのInstagramを終了させてきたのだと指摘する声もあるほどだ。

ケリーがInstagramの全投稿を削除したあと、『最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督はTwitterでコメントを発表した。

「ソーシャルメディアでは、たった数人の悪意が壁面に大きな影を落とすことになります。ただしこれまでの4年間、私は本物のスター・ウォーズ・ファンにたくさん出会ってきました。映画が好きであってもそうでなくても、私たちにはユーモアや愛情、リスペクトがあります。楽しみ、そして良いふるまいをする、私たちこそが多数派なのです。」

ただし監督は、「批評や不満の表明を荒らし扱いするんですか?」というコメントが寄せられると、一転して断固とした態度を示している。

「悪意あるたわごとはそう扱われるものです。映画が好きでないことと、憎しみをもって女性にひどい嫌がらせをし、ソーシャルメディアから追い出すことが別物であることは誰にだってわかります。私たちが話題にしているのが、そのどちらかはわかりますよね。」

作品への正当な批評や感想と本件を混同するのは危険だろう。なぜならケリーをめぐる差別発言は、『最後のジェダイ』という映画が実際どんな作品で、ファンがどう受け止めたかとは本質的に無関係だからだ。もちろん、作品の内容が出演者への攻撃を招いたのだとしてクリエイターに責任を問うのも筋が違うように思われる。問題は、悪意をもって許されない差別発言を繰り返した人々がいること、その言動で傷ついた人物がいることのみ。責任をすべて問われるべきは、ただ差別発言の当事者だけだろう。

Sources: Kelly Marie Tran, Rian Johnson(1, 2), BuzzFeed
Eyecatch Image: Disney/Image Group LA

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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