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『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』レイア・オーガナ、有終の美へ ― キャリー・フィッシャーが魅せた、自立したヒロインの姿

©Walt Disney Studios Motion Pictures ©2017 & TM Lucasfilm Ltd. 写真:ゼータ イメージ

2016年12月27日、信じがたいニュースが飛び込んできた。『スター・ウォーズ』シリーズの顔、レイア・オーガナ役の女優キャリー・フィッシャーが急逝したのである。ロンドンからロサンゼルスへと向かう飛行機内にて、心臓発作によって倒れてから4日後のことだった。

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)で32年ぶりにレイア・オーガナを演じ、その続編である『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の撮影を同年夏に終えていたキャリーにとって、同作は最後の『スター・ウォーズ』、そして最後の映画作品となる。またレイア・オーガナにとっても、この映画は『スター・ウォーズ』メイン・サーガにおいて最後の登場作品だ。ルーカスフィルムは2019年公開『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で代役やCGなどの処置をとらない、すなわちレイアを登場させない方針を固めたのである。

本記事では故キャリー・フィッシャーを偲びながら、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』に至るまでの、実写映画におけるレイア・オーガナの足跡をたどっていきたい。

注意

この記事には、『スター・ウォーズ』実写映画各作品の内容が含まれています。

自立するヒロイン、レイア・オーガナの来た道

レイア・オーガナが誕生したのは、『エピソード3/シスの復讐』(2005)で、ダークサイドに堕ちてしまったジェダイの騎士アナキン・スカイウォーカーが師匠のオビ=ワン・ケノービに倒されたのちのことだ。アナキンの妻であるパドメ・アミダラは、夫との子供であるルーク・スカイウォーカーとレイアの双子を出産したのち息絶える。
しかしジェダイの血を引くルークとレイアは、ジェダイ騎士団をほぼ全滅に追い込み、根絶やしにしようと目論む銀河帝国の皇帝パルパティーンによって追われる身となってしまった。そこでオビ=ワンとジェダイ・マスターのヨーダは、ルークとレイアを別々の場所で育てることにしたのだった。レイアは惑星オルデランの王室に預けられ、そこで「オーガナ」の名を授かる。

その後、レイアは18歳でオルデランの女王に選出され、帝国元老院の議員となった。帝国に批判的な態度をとることを厭わなかった彼女は、ひそかに共和国再建のため革命を志す者たちを支援。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)のラストでは反乱軍によって奪取された帝国軍の秘密兵器「デス・スター」の設計図を手にすることになる。
ところが『エピソード4/新たなる希望』(1977)の冒頭でダース・ベイダー/アナキン・スカイウォーカーに追いつかれてしまったレイアは、デス・スターの設計図とオビ=ワンへのメッセージをR2-D2とC-3POに託すのだった。帝国軍の捕虜としてデス・スターにて拷問を受ける彼女は反乱軍の秘密基地について一切話さなかったが、あろうことか帝国軍はデス・スターの性能を測るためと称し、彼女の故郷であるオルデランを滅ぼしてしまう。
その後、レイアのメッセージを受け取ったオビ=ワンとルーク、ハン・ソロもデス・スターに捕らえられるが、帝国軍との戦いの末にレイアを救出することに成功する。その後、反乱軍の作戦は成就してデス・スターは破壊されるのだった。

その後、勢力を回復した帝国軍によって反乱軍は厳しい戦いを強いられるようになる。そんな中、ハンと惹かれあっていったレイアが次に大きな活躍を見せるのは、『エピソード5/帝国の逆襲』(1980)で帝国軍によってカーボン冷凍されたハンを、『エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)で犯罪組織の首領ジャバ・ザ・ハットのもとから救出しようとするエピソードだ。救出に失敗して奴隷となってしまうレイアだったが、のちにルークがジャバの屋敷を訪れた際には、自らを繋いでいる鎖でジャバを絞め殺している。そしてルークと双子の兄妹であること、ダース・ベイダーが父親であることを知るのだった。

エンドアの戦いで皇帝パルパティーンとダース・ベイダーが命を落とし、帝国の力が失われたあと、反乱軍の手によって新共和国が誕生する。レイアはハンと結ばれて息子ベンを出産するが、フォースの能力に恵まれたベンはダークサイドに心惹かれ、帝国軍の残党からなるファースト・オーダーに執心するようになる。そしてベン/カイロ・レンは、師匠であるルークの弟子を虐殺することでジェダイ再興の道を閉ざしてしまうのだった。こののち、レイアは反乱軍の後継にあたる私設軍隊レジスタンスの将軍に就任し、ファースト・オーダーの監視を始めるようになる。

『フォースの覚醒』で、レイアはベンの事件から姿を消していたハンと再会するが、ハンが宣言通り息子を連れて帰ることはなかった。レジスタンスはファースト・オーダーの新兵器「スターキラー基地」を破壊することに成功するが、あろうことかハンは自らの息子によって身体を貫かれ、底の見えない深い光の中へと落ちてしまったのである。その後レイアは、フォースの力に目覚めた若きヒロイン、レイと出会うことになる……。

キャリー・フィッシャーという女優

Photo by Riccardo Ghilardi photographer ( https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Actress_Carrie_Fisher_%C2%A9_Riccardo_Ghilardi_photographer.jpg )

『スター・ウォーズ』シリーズを改めてたどり直すと気付かされるのは、ジョージ・ルーカスをはじめとしたオリジナル3部作の製作陣が、ひたすらレイア・オーガナという人物を自立した存在として描いていることだ。自らの境遇や置かれた状況の中で、思考することをやめず、大胆に行動し、自らの意志で状況を切り拓いていくヒロイン像は、もともと40年前に造形されたキャラクターだとは思えないほどである。ハン・ソロとのロマンスにおいてもその側面は決して失われていないし、新3部作の第1作となった『フォースの覚醒』でもそうした性格は色濃く現れている。

もちろん特筆すべきは、“豪胆”とすらいっていい存在感でオリジナル3部作を引っ張り、ほかに類を見ない魅力を存分に体現したキャリー・フィッシャーという女優だろう。
1956年10月21日、歌手エディ・フィッシャーと女優デビー・レイノルズの娘として生まれた彼女は、いわばスターのサラブレッド。彼女が女優デビューを果たしたのは、母親デビーが主演したブロードウェイ・ミュージカル『アイリーン』(1973)だった。映画『シャンプー』(1975年)で銀幕へのデビューを飾り、その2年後に『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる帰還』のレイア・オーガナ役に抜擢されているのである。

ただし、キャリーのフィルモグラフィにおいて最も重要な作品である『スター・ウォーズ』は、その人生にある影を落とすことにもなっている。彼女は『ブルース・ブラザーズ』(1980)や『恋人たちの予感』(1989)など多くの映画やテレビドラマに出演しているが、『スター・ウォーズ』の成功ゆえか、早くからドラッグやアルコールへの依存を発症するようになっていたのだ。プライベートのスキャンダルも多く取り沙汰されたため、必ずしも良い印象だけが周知される女優でなかったことも事実だろう。1990年代からはコメディ映画などへのカメオ出演やドキュメンタリー作品への登場をはじめ、レイア・オーガナとはまるで違う魅力を各方面で発揮している。

作家・脚本家として

キャリー・フィッシャーという人物を語る上で見落とせないのは、その作家・脚本家としての才能だ。
1987年、自身のドラッグ依存症と双極性障害を扱った自伝的小説『崖っぷちからのはがき』を刊行し、この作品は1990年に『ハリウッドにくちづけ』というタイトルで映画化された(キャリーは脚本を自ら担当)。彼女は自伝的小説やノンフィクション作品をいくつも執筆しており、急逝する直前の2016年秋にも回顧録『ザ・プリンセス・ダイアリスト(The Princess Diarist)』を発表している。この本では『スター・ウォーズ』撮影中のハリソン・フォードとの不倫が暴露され、日本でも大きな話題を呼んだ。

キャリーは自分自身について書くかたわら、映画のスクリプト・ドクター(脚本の手直しや助言を担当する職業)としてその才能を職人的に活かしている。『スター・ウォーズ』を手がけたジョージ・ルーカスとはプリクエル3部作でもタッグを組み、女優ではなく脚本家として本編のリライトを担当しているのだ。ほかにも『フック』(1991)、『ウェディング・シンガー』(1998)、『Mr.&Mrs. スミス』(2005)などに携わったほか、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でもライアン・ジョンソン監督との脚本作業に参加していたという。

『最後のジェダイ』はキャリー・フィッシャーを「送り出す」

もちろんルーカスフィルムやライアン・ジョンソン監督をはじめとしたキャスト・スタッフにとって、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』がキャリー・フィッシャーの最後の作品になることは想定外だった。『フォースの覚醒』でハン・ソロが、『最後のジェダイ』でルークが物語の中核を担っているように、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』ではレイアがキーパーソンになる予定だったともいわれているのである。

2016年末にキャリーが急逝したことによって、本作の再撮影や再編集に大きな影響が生じることはなかったという。ただしライアン監督は「(レイアのストーリーに)幕を下ろすことなんて考えていなかった」とも述べているため、その物語に本編でどんな決着がつけられているのかはわからない。

その一方でルーク役のマーク・ハミルは、本作におけるレイア・オーガナ=キャリー・フィッシャーについて「みんな、彼女のことが本当に大好きになりますよ」話している。ライアン監督も劇中のレイアについて「とてもエモーショナルな反応が起こると思います」とコメントしているほか、フィン役のジョン・ボイエガはこのように述べているのだ。

この映画は、すばらしい形…最高の形で彼女を送り出す映画です。でも彼女は、このシリーズの中でまだ生きています。これが良いところで、ある意味で彼女は永遠に生きつづけるんですよ。」

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は2017年12月15日よりロードショー

©Walt Disney Studios Motion Pictures ©2017 & TM Lucasfilm Ltd. 写真:ゼータ イメージ

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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