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「THE LAST OF US」残酷表現はゲームより控えめに ─ それでも「史上最もゲームに忠実」と製作者が豪語する理由

THE LAST OF US
©2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

いよいよ2023年1月16日(月)より配信開始となるHBOオリジナルドラマ「THE LAST OF US」は、世界的人気を誇るサバイバル・アクションゲームの実写化作品。原作ゲームを手がけたニール・ドラックマンが自ら監督・脚本・製作総指揮を務め、ドラマ「チェルノブイリ」(2019)のクレイグ・メイジンとタッグを組んだ。

「『The Last of Us』は常にストーリーありきだった」というニールは、ビデオゲームという“プレイヤーが能動的に関わるメディア”から、テレビドラマという“視聴者が受動的なメディア”への移植にあたり、それぞれの特徴を吟味したことを英SFX Magazineにて明かしている。結果として選んだのは、ゲームよりも残酷描写を抑えるという発想だった。

「(ゲームでは)一定量のアクションや暴力表現が必要でした。プレイヤーが(主人公の)ジョエルと繋がり、しっかりと没入できるための仕組みとして使っていたのです。そうすることで画面上のキャラクターとひとつになり、彼の視点で世界を見ているように感じられる。(テレビドラマのような)受動的なメディアではできないことです。」

本作は人体に寄生する菌類の感染症により、文明が崩壊した世界で、生存者のひとり・ジョエルが身元不明の少女・エリーを隔離地域から脱出させる物語。ふたりは生き残りを懸け、感染者がはびこるアメリカ全土を横断することになるのだ。荒廃した土地や、菌類に寄生されて凶暴化した“クリッカー”など感染者の描写は原作を完全に再現しているという。

しかし企画の初期段階から、ニール&クレイグとHBOは「本当に必要不可欠なものを除き、暴力表現をすべてなくしてしまおう」という共通見解を得ていた。「そうすることで暴力がゲームより印象的なものになります。恐怖をなかなか見せずに、人々の反応を描くことで、より恐怖が高まる。すると感染者やクリッカーが登場した時、人間性を失った存在や、人々が恐れていた理由を知ることができます」。

もちろん、これはレーティングの事情から残酷描写を避けたことの弁明ではない。「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011-2019)などを例に挙げるまでもなく、HBOドラマは振り切った映像表現が魅力のひとつであり、それゆえに大きな支持を得てきた。「THE LAST OF US」における判断は、あくまでもメディアとストーリーテリングの関係に基づくものだ。

The Last of Us

The New Yorkerでは、本作の暴力表現について異なる切り口も示されている。ゲームのプレイヤーはいずれ暴力表現に慣れてしまうが、ドラマ版はそうした側面をなるべく排除しようとしたのだ。ニールは「(ゲームでは)死ぬとセーブポイントに戻ります。誰もが同じようにそうなる」と言い、ドラマでは別の重みを与えたかったと強調する。「人間の死を見るのは、(ディスプレイの)ピクセルが死ぬのを見ることとは別物でなければいけません」

こうした工夫は、ドラマ版のジョエルが原作よりも心身ともに弱くなったところにも表れている。この“弱さ”はクレイグの提案であり、ニールとの話し合いを重ねた末に「銃声で片耳が聞こえにくく、立ち上がるたびに膝が痛む」という設定となった。クレイグは「“トム・クルーズならなんでもできる”というような作風もあるけれど、僕は中年らしい中年がいいと思った」と述べている。

原作にさまざまな変更を加え、オリジナルの要素を組み込むことで、「LAST OF US」の物語は新たに生まれ変わる。けれども今、ニールは「史上最高の、そして史上もっともゲームに忠実な作品になる」と自信たっぷり。クレイグも「決して難しいことではありません。最高のストーリーがある作品を使っているんだから」と口を揃えた。

HBOオリジナル「THE LAST OF US」は2023年1月16日(月)11:00よりU-NEXTにて独占配信。

Sources: SFX Magazine, The New Yorker

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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