可愛いタイトルに騙されるな!最新作『子犬物語』の前に、とんでもブラックなトッド・ソロンズ監督作品を復習しよう
君はトッド・ソロンズ監督作品を観たか
ドン引きするほどブラックな登場人物の数々で、観客を人生の辛酸なめ子に変貌させる、笑うに笑えない、トッド・ソロンズ監督の最新作『子犬物語』が2017年1月14日に公開されます。

このほのぼの画像にタイトルが『子犬物語』とくれば、どれどれ観てみようかなと、女子や愛犬家の皆さんの期待も高まりそうではありますが、騙されてはいけません。タイトルに「トッド・ソロンズの」という冠が記してあるのですよ。『トッド・ソロンズの子犬物語』なんです。あー恐ろしい。
映画のストーリーは超シンプル。一匹のダックスフンドが、様々な飼い主のもとを転々とする話です。飼い主のほうも犬のほうも、一癖も二癖もあるキャラクターなわけですが……。

https://vaguevisages.com/2016/06/17/todd-solondz-offers-surprising-homages-to-french-filmmakers-in-wiener-dog/
個性豊かな名優たちが登場するのも、本作の見どころのひとつです。ティム・バートン監督の『バットマン・リターンズ』(1992年)でペンギン役を務めたダニー・デヴィートは、崖っぷちの映画学校講師兼脚本家を演じます。『エクソシスト』『レクイエム・フォー・ドリーム』などで不幸な女性役がハマりすぎたエレン・バースティンは偏屈な老女役で登場。

https://vaguevisages.com/2016/06/17/todd-solondz-offers-surprising-homages-to-french-filmmakers-in-wiener-dog/
上映時間88分の映画にもかかわらず、インターミッション(かつて長尺映画には休憩時間がありました)があり、その間はダックスフンドが世界中を歩き回る映像が流れるそうです。“ウィンナー・ドッグ♪、ウィンナー・ドッグ♪”のカントリー・ミュージックも耳に残るほのぼのぶりだとか。
トッド・ソロンズ監督作品の醍醐味は、そのユーモアとシニカルな視線が現実の急所を残酷に突くところ。これって自分にも当てはまるのでは……と背筋も凍り、笑顔も固まる。たとえ出演者が愛くるしい子供だろうが、動物だろうが、きっとソロンズ監督は容赦を知らないはずです。
『トッド・ソロンズの子犬物語』、是非ご覧ください。
一度観ると癖になる!ソロンズ監督の注目作を復習しよう
ブスでトホホな女子にくぎ付け、『ウェルカム・ドールハウス』(1995年)

ソロンズ監督のデビュー作にして、サンダンス映画祭のグランプリを受賞したこの作品を外すわけにはいきません。
主人公であるドーン・ウィーナー(ヘザー・マタラーゾ)は12歳の女の子。ブスの定番である、分厚い牛乳瓶の底厚めがねにもっさりした服装。 本人はかわいくおしゃれしてるつもりなんだろうけど、 カラフルすぎる服装は似合ってないし、センスがズレまくり。
もちろんブスの主人公は、ある日突然、さなぎから蝶が羽ばたくように変身を遂げ……ません。ずっとブスで、ずっといじめられっ子で、先生からも問題児扱いを受ける始末。 母親もかわいい妹を完全にえこひいきです。優秀でオタクな兄貴は別世界の人間だしね。

心はねじれきって、腹いせに妹の人形の首をちょん切るわ、 寝込みを襲って殺しかかるわのやりたい放題。それでも、この物語には陰湿さのかけらもないのです。どこか、スコーンと突き抜けてポップな明るさを醸し出しているから不思議です。彼女を執拗にいじめる男子との関係も、ちょっと奇妙だけれど、思わずニンマリできます。ちょっとうらやましかったりして。ドーン、めっちゃブスだけど、寒かわいい……!
同じくソロンズ監督の作品で、世代、人種、性別を超えた8人の俳優がひとりの少女を演じる『おわらない物語 アビバの場合』(2004年)には、ドーンが主人公アビバの従姉という設定で登場します。この映画の冒頭、葬儀シーンでは(ある意味象徴的に)葬られているのですが、『子犬物語』では心優しい獣医の助手ドーン・ウィーナーとして登場しているようです。

ちなみに、『子犬物語』に登場するドーンの恋人(ドラッグ依存症)の名前はブランドン(キーラン・カルキン)。『ウェルカム・ドールハウス』でドーンを執拗に苛めていた男子の名前と同じなのです。あの二人の未来がここに絡んでいるのかと思うと、二人の関係も気になるところです。
どこが幸せ?『ハピネス』(1998年)
アメリカのニュージャージーで育った三人姉妹。家庭を持ち、子供に恵まれて幸せ一杯のイヤミな長女、同じくイヤミな作家の次女、そして取り柄がなくヘンな男に引っかかるトホホな三女。それぞれの生活を風刺たっぷりに描いた、イタタタタな群像劇です。
小児性愛ほか、肝心の描写はなくても、かなりキワドい言葉に持っていた箸を落とすわ、目玉は飛び出るわのてんやわんやな人間模様が描かれます。それでも『ウェルカム・ドールハウス』と同じく、どこかさわやかな印象が残るのは監督の力量でしょう。

ちなみに、次女(ララ・フリン・ボイル)をストーキングして仕事中にイタ電をかけてくるという困った男を演じるフィリップ・シーモア・ホフマンの見事な変態ぶりには要注目です!
ひとまず、この年末年始にはトッド・ソロンズ監督の『ウェルカム・ドールハウス』と『ハピネス』をご覧ください。もしも勇気が出たら、年明けには『トッド・ソロンズの子犬物語』をお見逃しなく!
Eyecatch Image: http://www.comingsoon.net/movies/trailers/690737-wiener-dog-trailer#/slide/1