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それは些細な大決闘…自主制作アニメ『東京コスモ』の、息吹を感じられる活き活きとした描写【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016上映作品】

一人暮らしの女性が繰り広げる小さくて大きな冒険物語。
ファンタジックでありながらも現実感あふれる生活描写が不可思議な感覚へと誘ってくれた。

目を引くのはリアルな”一人暮らし”描写だ。帰宅すると即ベットに倒れこんだり、台所に並ぶ瓶やペットボトルの数々……。
デフォルメされた、所謂アニメ調のキャラクターには不釣り合いにも思える徹底したリアルな生活描写に目を奪われる。
どこにでも居そうな一人暮らしの風景。片付けられずに積み重なった衣類の山など、まるで自身の生活模様を写すかのようだ。
そんなリアルさから物語は一変する。ブタのぬいぐるみに乗って空を飛びまわりはじめる。
部屋にゴキブリが現れた瞬間に、空想の冒険は大決闘へと変貌する。全ては彼女の想像で繰り広げられているのだが、その空想描写が素晴らしい。宝石のように光り輝く東京の街を飛び回り、目を宝石のように輝かせる彼女の表情は純粋無垢だ。筆者も思わず彼女と同じ表情になってしまった。音楽だけのサイレント作品なのだが、彼女の声や動作の動きまで伝わってきそうなほど生き生きしている。

『東京コスモ』			(C)TOKYO COSMO
『東京コスモ』 (C)TOKYO COSMO
そして、出現したゴキブリとの闘い。部屋にゴキブリがでるという些細な日常の風景。だが空想の世界ではゴキブリは大怪獣のように巨大な姿で現れる。
破壊される街並み、小石のように飛んでくる車両……。映像の攻勢は完全に怪獣映画のそれである。
意を決してゴキブリを始末しようとするも、直前で踏みとどまってしまうあたり、現実では小さな存在であるゴキブリは彼女にとっては大怪獣のように畏怖すべき存在なのだろう。
些細な出来事だが、人によっては一大事であり、大決闘でもあるのだ。

たった4分ほどの作品だが、世界の広がりは絶妙だ。キャラクターの動きも生き生きしており、まさに息吹を感じる。
壮大な世界観を用意しなくても壮大な世界は作れるという事をこの作品は教えてくれる。

『東京コスモ』 (C)TOKYO COSMO

Writer

Okugen

気になったものはなんでもみる雑食映画好き。

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