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新型コロナで撮影中断、日米対応の違い ─ 東京ロケの米ドラマ「アメリカのスタッフの方が日本のクルーよりも心配していた」

※写真はイメージです Photo by Basil Morin https://en.wikipedia.org/wiki/File:Kabukicho_red_gate_and_colorful_neon_street_signs_at_night,_Shinjuku,_Tokyo,_Japan.jpg Remixed by THE RIVER

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に対する、日米エンタメ業界の対応の違いとは。『ベイビー・ドライバー』(2017)のアンセル・エルゴートと渡辺謙が共演するドラマ「トウキョウ・バイス(原題:Tokyo Vice)」のプロデューサーが、日本国内における撮影の様子や、本国アメリカとのギャップについて語っている。

ジャーナリスト、ジェイク・エーデルスタイン氏の著書『トウキョウ・バイス: アメリカ人記者の警察回り体験記』を米HBO Maxが映像化する「トウキョウ・バイス」は、2020年3月5日(木)に東京にて撮影が開始されていた。もっともその時期には、すでに国内でも新型コロナウイルスの蔓延が十分に危惧されており、製作チームは約1週間後の13日(金)に撮影の中断を決定。アメリカのチームは翌週から随時帰国したという。

3月27日(金)、プロデューサーのアラン・プール氏は米The Hollywood Reporterの取材に応じた。3月中旬の東京を振り返り、プール氏は「信じられないかもしれませんが、割と普通でしたね。すごく落ち着いていました」と証言。家族からアメリカ国内の混乱ぶりを聞かされてはいたものの、プール氏は東京のレストランで食事をし、地下鉄に乗り、買い物をしていたという。

「トウキョウ・バイス」の撮影は6日間行われ、撮影には100人以上のエキストラが参加。スタッフやエキストラはマスクの着用が求められ、撮影現場には消毒剤も置かれていたというが、撮影時にエキストラはマスクを外さなければならない。そうした状況について、プール氏は「家族などから心配され、自国の様子を聞いていたアメリカのスタッフの方が、日本のクルーよりも心配していたように思います」と話している。実際のところ、高齢のスタッフや、体調が万全でないスタッフは何人か撮影を途中離脱したそうだ。

「免疫のない者は(撮影を)離れるよう薦められていましたし、実際に我々も、安心できない者は離れるようにと薦めていました。実際に数人はそうしていましたよ。それでも、もはや撮影を続けられないというところまで来ていたし、HBO Maxも非常に心配していたんです。」

プール氏は、映画やドラマの撮影について、一度始まってしまえば「誰もが“何があっても止めない”という意志で進むもの」だと語る。「障害は常にあります。だから、なにがなんでも前進しようとするのです」。しかしそれゆえに、今回の撮影中断は非常に厳しい決断だった。なにせ、パイロット版を手がけるマイケル・マン監督をはじめ、キャストやスタッフにとっては「勢いがすべて」。実際、日本側のスタッフも撮影継続に前向きだったという。

「(中断時点で)日本国内の企画はすべて撮影を続けていましたし、実際に撮影はまだ行われていますからね[※編注:3月27日時点]。つまり、日本で最初に中断を決めたのは私たちだったんです。しかしアメリカのテレビ局が出資する海外の作品としては、中断したのは我々が最後だった。(日本とアメリカの)違いはそれほど大きかったんですよ。」

日本国内では、その後4月1日(水)にTBSが「半沢直樹」などの放送延期を、NHKが連続テレビ小説「エール」と大河ドラマ「麒麟がくる」の撮影中断を発表。その後、日本テレビやテレビ朝日も撮影中断・放送延期を相次いで告知している。いずれも「トウキョウ・バイス」の撮影中断からは約3週間後の出来事だ。

今後、新型コロナウイルスの感染拡大が収束したのちに「トウキョウ・バイス」の撮影は再開される予定。「5月中旬に再開、6月中旬に再開、7月まで再開できない」という3つの可能性があるというが、情勢の見通しが立たない以上、7月に再開できるかどうかさえ未知数だ。プール氏は「きちんと安全が確保され、再開できるようになるのを待ちたい。その時期がいつなのかは誰にも分からないので、複数の計画を立てておかなければいけません」と語っている。

ちなみに「トウキョウ・バイス」は、2020年夏、オリンピック開催中の東京でも撮影が行われる予定だったとのこと。しかしながら、その東京オリンピックは2021年夏への延期が決定済み。残念ながら、そちらの計画は叶わなくなってしまったようだ。

シリーズは全10話構成で、出演者にはアンセル・エルゴートと渡辺謙のほか、菊地凛子、『アサシネーション・ネーション』(2018)オデッサ・ヤング、『RAW 少女のめざめ』(2016)エラ・ルンプフが出演。脚本はトニー賞に輝く劇作家J・T・ロジャースが執筆した。

Sources: The Hollywood Reporter(1, 2

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。