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【ネタバレなしレビュー】『トップガン マーヴェリック』続編映画としてあまりにも完璧 ─ ファンが求める要素と未体験の新要素が駆け抜ける

トップガン マーヴェリック
(C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

これまで、数々のハリウッド映画が、“時を超えた続編”を放ってきた。『トップガン マーヴェリック』は、そのいずれもが目指した“完璧な続編”を、限りなく完璧な形で実現している。続編映画として、屈指の出来である。

『トップガン マーヴェリック』は、トム・クルーズ主演による伝説のスカイアクション映画『トップガン』36年ぶりの続編。もともと2019年7月に公開されるはずだったが、コロナ禍などの影響で幾度となく延期を繰り返し、当初の予定からは実に3年も遅れての、ようやくの公開。それだけ長らく待たされた甲斐は……大アリだ。

海軍の訓練学校“トップガン”を舞台に、パイロットとして天賦の才を持ちながらも無鉄砲な性格で危険視される“マーヴェリック”と、温厚な相棒“グース”、冷静沈着なライバル“アイスマン”、そして教官であるシャーロットとの禁断の恋を描いた前作。還暦目前のトムが再び演じる今作のマーヴェリックは、教官として再びトップガンに帰還。亡き相棒グースの息子であるルースターを含む新世代のパイロットたちの教育に悩みながら、危険極まりないミッションに挑む熱いドラマが描かれる。

名作をリバイバルさせる続編映画は、時にファンが望むものを勿体ぶって隠したり、サプライズに回したりして、消化不良をもたらすこともある。しかし『マーヴェリック』は、ファンが『トップガン』の続編に望む要素を、惜しみなく乱射する。あなたが『トップガン』と聞いて思い描く要素……それが「画」であれ「音」であれ「雰囲気」であれ「シーン」であれ、そういう要素が2、3、4、5点と頭に浮かんだとしよう。おそらく『マーヴェリック』は、それらほぼ全てを提供しており、かつ、新たな要素を上品に提案している。

ただの懐古主義映画に留まらず、前作の“その後”のマーヴェリックをエネルギッシュに描いている。あれから30年以上たった今も現役のパイロットであるマーヴェリックは、相変わらず無鉄砲で型破りで、彼に教官が務まるものかと上官をヒヤヒヤさせる。前作では若く、青春も謳歌できたマーヴェリックだが、訓練生らの命を預かりながら、彼らの限界を押し上げる責任を背負った教官としての今は、これまで経験のしたことのない壁にぶつかっている。おまけに父グースを失った因縁を持つルースターは、マーヴェリックに対して敵意を剥き出しにする。マーヴェリックは、かつての盟友の生き写しのようであるこの反抗的な若者を、どう教育すべきかがわからない。上司という立場の苦悩を描く、オリジナル当時の観客のライフステージの変化に寄りそうストーリーだ。

トップガン マーヴェリック
(C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

本作のマーヴェリックには、前作から30余年の現場経験と、重ねた年月が顔の小ジワに刻まれている。予告編映像にもあったように、相変わらずのフライトジャケットとアビエイター・サングラスの姿で、カワサキのバイクに跨って走り抜ける。それは、マーヴェリックが30年経っても変わっていないことを象徴しており、そこには良い面も悪い面もある。

前作そのままのマーヴェリックに再会できることは、観客にとって良い面だ。一方、悪い面では、彼は時代に取り残された「化石」になりつつあるということであり、当時からのファンは驚かされるはず。軍の最前線にはドローン活用などによる「パイロットを必要としない時代」が迫っており、マーヴェリックはその対応を迫られる。

不可能を可能にしてきたマーヴェリックが、新たな時代にいかに向き合うのか、それがストーリーの鍵となる。もっとも、本作はトム・クルーズ主演の映画だ。いたずらに老いを感じさせるような悲壮感は一切なく、トーンは爽快感に満ちており、安心して鑑賞できる。

トップガン マーヴェリック
(C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

もちろん、往年のファンである中高年でないと楽しめない、ということは全くない。公開当時には生まれていなかった筆者にとっても、『トップガン マーヴェリック』は、オリジナル作を特別な作品に変えてくれるような力を持っている。なぜなら『トップガン マーヴェリック』には、全ての世代の胸を打つ普遍的な要素……、愛と友情、努力、信頼、そして感動が、非常に高いレベルで収められているからだ。続編が優れている時、そのオリジナル作はさらなる輝きを放つことを、『トップガン マーヴェリック』は堂々と実証している。

前作のあらゆる面に敬意を払いつつ、それでいて前作に依存しすぎていない。新世代のエースパイロットたちには新たなドラマが用意されており、現代的なアップデート描写も程よく練り込まれた。前作では見られなかったアクションもあり、オリジナルの伝統を逸脱しない範囲内で新たなことに挑む心意義をしっかりと感じられる。マーヴェリックの恋人は前作のシャーロット役ケリー・マクギリスから、新たに登場するベニー役ジェニファー・コネリーに交代しているが、本作で初めて語られるにも関わらず、長年の付き合いをきちんと想像させる仕上がりになっている。

本作を劇場で鑑賞すれば、コロナ禍での制限的な公開を断固拒否したトム・クルーズの熱い想いがよくわかる。とりわけ本作は、絶対にIMAXで観て欲しいと強く推奨したい。IMAX上映前のデモ映像を観たことがあるだろうか?「針が落ちる小さな音も、 ジェットエンジンの大轟音も」という、アレである。IMAXシアターで映画を観る度にさんざんシミュレートしてきた「ジェットエンジンの大轟音」、これがついに本領を発揮するのが本作だ。戦闘機に直接IMAXカメラを複数台積み込んだという、近年稀に見るクレイジーな撮影で作られた臨場感たっぷりのど迫力スカイアクションは、絶対に大画面・大音量の劇場で。

「時を超えた続編」を最大限楽しむには、過去のシリーズ作を復習しなくてはならないが、『トップガン マーヴェリック』の場合は、『トップガン』1作だけを観れば完了だ。必ず、前作を観直してから劇場に出かけることをオススメしたい。「『トップガン』を観ておいて良かった」「『トップガン マーヴェリック』を観に来て良かった」を、同時に実感できるはずだ。

リピート鑑賞必至の出来である『トップガン マーヴェリック』は、2022年5月27日、“胸アツ”公開

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。