『トイ・ストーリー3』ウッディのラスト、「過去作のセリフの再定義」だった ─ 脚本家が明かす深い裏話

ディズニー&ピクサーの傑作映画『トイ・ストーリー3』(2010)のラストでは、ウッディが土壇場で見せた“悟り”が、物語を感動的なラストへと導いた。実はこの展開、当初は全く別の内容になる可能性があったという。シリーズ3作を通じて、ウッディが歩んだ“裏テーマ”とは。ウッディが心変わりをした理由とは。脚本家のマイケル・アーントがポッドキャスト番組で明らかにしている。
『トイ・ストーリー3』で、ウッディやバズ・ライトイヤーたちの持ち主であるアンディは大学進学のため家から引っ越そうとしていた。アンディが荷物の整理を終えて車に乗ろうというタイミングで、「サニーサイド保育園」とゴミ処理場から命からがら脱出したウッディたちはなんとか部屋に戻る。
バズたちは「屋根裏」行きの段ボールに入った一方、アンディの元を離れたくなかったウッディは「大学」行きの箱に入る。しかし最後の瞬間にウッディは何かを“悟り”、オモチャ一式を少女ボニーに譲ることを促すメモを咄嗟に書いて、自身もその中に加わる。
どうしてウッディは大学行きを諦め、アンディを行かせようと思い至ったのか?アートンは、その設定の裏に込めた深い思いを語っている。
「『トイ・ストーリー3』では難しいことをたくさんやりましたが、僕にとって一番難しかったのは、“ウッディは物語の流れの中で、何を学んでいったのか”を見出すことでした」とアートン。「僕はこう分析しています。『トイ・ストーリー1』で、ウッディはスポットライトをバズにも分け与えることを学んだ。『トイ・ストーリー2』では、自身の“有限の運命(mortality)”を受け入れることを学んだ。アンディはいつか大人になるが、自分たちはその時間を楽しむのだと。そして、ウッディが次に進むものは何か。これは非常に難しい事柄でした」。
アートンが最初に受け取った脚本概要では、ウッディは最後に次のようなことを言うことになっていたという。「俺はいつも、オモチャの役割は子どもを幸せにすることだって言ってきたよな。でも、今になってわかったよ。アンディはもう子どもじゃない。だから、彼を行かせよう。」
長年の友を諦めるような、無力感あるセリフだが、アートンも「ひどい悟り方ですよね!みんなのヒーローが、間抜け野郎になってしまう」と納得しなかった。そこからアートンは、「とても難しい、終わりなきプロセス」に突入し、ラストにつながるウッディの心境の変化を練った。
アートンが考えたのは、次のようなことだった。「どうすればウッディを前進させられるのか?どうすれば、物語のクライマックスで哲学的な双眼鏡をひっくり返せるか?どうすれば、彼の考えを変えられるか?そして何よりも、どうすれば彼に、“道を分つ”ことを受け入れさせられるか?彼がアンディと大学に行こうとしないようになる理由とは?なぜ彼はアンディを行かせることを受け入れるのか?」
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