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『トイ・ストーリー4』何故あのエンディングでなければいけなかったのか ─ ウッディの決断、試行錯誤の製作現場

トイ・ストーリー4
©2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

映画『トイ・ストーリー4』は、ディズニー&ピクサー屈指の名作『トイ・ストーリー3』(2010)とはまた違うテーマを掲げながら、感動のエンディングを演出した。心優しく明るい少年アンディのお気に入りのおもちゃとして、大変だけど常に前向きな毎日を送ってきたカウボーイのウッディは、観客の意表を突く大きな決断を最後に下した。

それでも、1990年代に誕生した『トイ・ストーリー』と共に育ってきたファンの中には、なぜあのエンディングでなければいけなかったのか、と感じた方もいるのではないだろうか。人に遊んでもらって始めて生まれるおもちゃの存在意義については、シリーズを通して語られてきたことだ。しかし、プロデューサーのマーク・ニールセンによると、ウッディにフォーカスされた『トイ・ストーリー4』の物語では、どうしてもあのエンディングでなければいけなかったのだという。

この記事には、『トイ・ストーリー4』のネタバレが含まれています。

トイ・ストーリー4
©2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

ウッディが家に帰る案、なぜ上手くいかなかった

大学生となったアンディから幼稚園生のボニーの下で暮らすことになったおもちゃたち。しかし、アンディの時ほどは可愛がってもらえず、ボニーはフォーキーという新しいおもちゃまで作り出してしまう。ボニーから飽きられてしまったウッディは、自分をゴミだと勘違いしているフォーキーをまるで親のように世話し、おもちゃとしての手本を見せようとする。

そうした中、ボニーのお供としてバズたちとドライブ旅行に出かけることになったウッディは、かつて突然別れることになってしまったボー・ピープと再会する。しかし、久しぶりのボーは「おもちゃに持ち主なんて必要ない」ときっぱり。ウッディとは正反対の考え方を持っていた。

物語のエンディング、ミッションを無事終えたウッディはボーに別れを告げ、早く来いと手招きするバズの下へ向かおうとする。ただウッディには迷いがあった。持ち主のボニーの下に帰るべきなのか。それとも、前を向くボーと持ち主のいない外の世界へ踏み出すのか。そんな親友の葛藤を察したバズは、「彼女は大丈夫。ボニーは大丈夫だ」と声をかけ、ウッディの背中をそっと押したのだった。ウッディは、苦楽を共にした仲間一人ひとりとハグをして、ついに新たな冒険をスタートさせた。

公開から約4ヶ月後の2019年10月、プロデューサーのマーク・ニールセンは、『トイ・ストーリー4』のエンディングについて米Digital Spyに演出意図を説明している。ニールセンによると、企画の当初から物語はウッディのものだと決まっていたという。これは同じく『トイ・ストーリー4』でプロデューサーを務めたジョナス・リヴェラも語っていたことだが、物語開発の段階では色々なエンディング案が検討されていた。その一つが、ウッディがボニーの家に帰る選択をするというもの。しかし、ニールセンら製作陣は、この締めくくりでは『トイ・ストーリー4』が存在意義を持たないことを悟ったのだ。

最後にはウッディがボニーの家に帰るという案ではどれも、彼がさほど変わっていないではないかと感じました。映画の始まりと同じ場所に戻ってしまう。こうした考えが、おもちゃの少し楽しい冒険につながったんです。」

作品のエンディングが決定されるや、物語の方向性はすぐに固められていった。「一度そうと決めたら、エンディングをもっともっと感動的なものにしようとワクワクし始めたんです」とニールセン。「ウッディに、アンディやボニーの部屋にいた時よりもずっと大きな目的を見つけるためのセカンドチャンスを持ってもらうという、そんな幕引きになる方法を考えました」。

そこで大役を任されたのが、ウッディとは良き仲間でありライバルでもあったバズ・ライトイヤーだった。ニールセンいわく、エンディング決定前のバズは完成版よりも活躍が小さかったといい、「ウッディとバズが道を違い、お別れするあのエンディングに決めた時」に、バズの役割が確定したそう。『トイ・ストーリー4』では、前シリーズで一足早く自分の運命を受け入れていたバズが「内なる声」に従う様子が強調されていた。それは最終的に、ウッディの決断につながる伏線として大きく機能した。

ウッディ役を担当してきたトム・ハンクスも、『トイ・ストーリー4』のエンディングについてこう語っている。「生きるということは、絶え間ない変化にあるということ。まさか、こうしたおもちゃの映画が、人間らしくいるということを教えてくれるなんて。とても素晴らしいことです。これを実現させてくれたピクサーのイマジニアの皆さんには脱帽です」。

『トイ・ストーリー4』ではハンクスの言う通り、人間の生き方にも通じる普遍的なテーマが描かれた。『トイ・ストーリー』全4作を通して、奇しくも立ち位置を逆転させたウッディとバズ。この2人をめぐる対照的な始まりと終わりがあったからこそ、最大限の感動が生まれたのではないだろうか。

Source: Digital Spy,USA Today

Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。