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「主演俳優はヴェノムというCGキャラクター」VFXスーパーバイザーに聞いた『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』製作秘話

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
©2021 CTMG. © & TM 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

スパイダーマン最凶の宿敵を描く『ヴェノム』の続編『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』が、2021年12月3日よりついに日本公開となる。

THE RIVERでは、この作品でヴェノムやカーネイジといったCGキャラクターのVFXを監修したシーナ・デュガルにメールインタビューを敢行。『ヴェノム』の他にも、マーベル作品をはじめ様々なハリウッド大作のVFXを手掛けている人物だ。

VFXスーパーバイザーの視点から『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を紐解くと、他では得難い、興味深いインサイトが得られた。映画を観る前でも、観た後でもお楽しみいただきたい。

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』VFXスーパーバイザー シーナ・デュガル インタビュー

──シンビオートの動きを表現するにあたって、実際の動物など、実在の物を参考にすることはありますか?

自然界は素晴らしい参考資料になりました。クリーチャーはオーガニックに見せたかったので、自然界ではどういう動きをするものがあるかなと観察しましたよ。

非ニュートン流体や変形菌、クラゲのような深海生物、アメーバのような微生物、タコの皮膚、サイマティクス……カーネイジのために沢山参考にしました。シンビオートやシュリークの叫びと構造的に共通するレファレンスを見つけることができました。

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
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──前作『ヴェノム』から進歩したところはどこですか?

VFXの視点ですと、ヴェノムのキャラクター性が豊かになって、彼の登場シーンが増えています。例えば、エディの朝食を作るために複数の触手を伸ばすシーンや、エディとフィジカルに格闘するシーンがあります。1作目では大々的に作らなかったものですが、今作ではこういったシーンでのコメディ性を重視しています。キャラクターの演技が間抜けなものになりすぎないよう、常に絶妙なラインを保っていました。

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
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大きな進歩といえば、エディの身体からヴェノムの触手が出てくる時の、衣服とのインラタクション表現です。考え方としては、ヴェノムのシンビオートが毛穴から滲み出てきて、それが膨れて服の糸を突き破り、小さな触手をいくつも作って、やがて巨大な触手として結合するという流れです。

それから彼のフードの下(編注:エディがヴェノムの中から素顔の半分だけ露出している状態)、筋肉組織、フェイシャル・リグもアップグレードしました。私にとって重要だった改善点は、彼が呼吸をしているように見せたことです。1作目にはありませんでした。おかげで、彼の生物らしさが表現できたと思います。

──ヴェノムもカーネイジも同じシンビオートから誕生しますが、その動きや恐ろしさにどんな違いがありますか?

ヴェノムやカーネイジが他のVFXキャラクターと異なる能力といえば、状況に応じて変容する能力です。これによって宿主を守るだけでなく、人間の宿主と繋がり、変形・変身でき、触れた相手の力を吸収することができます。彼らは実際の役者の演技と共生するCGキャラクターなのです。

カーネイジはヴェノムよりも複雑なキャラクターで、デザインの面で言えばもっと難しい挑戦でした。武器化した触手が何本もあって、体から投射する能力や、バイオマスを利用してどんな大きさにも巨大化できるとった、さらなる変身能力を持っていますからね。

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
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ヴェノムを宿したエディと違って、カーネイジを生み出したのはクレタスです。そこにはクレタスのDNAが共有されているので、私たちも変身シーンにそれを活かしたかった。そこで、複雑で解剖学的に変身させ、そこで解剖学的な構造が壊れていったり、引き裂かれていく様子を描きました。

これは素晴らしく無害で恐ろしくて、カーネイジをより怖くさせ、そしてヴェノムとはまた違う、ユニークで独創的な一線を保っていると思います。私は誕生と再生をテーマにしようとしましたが、サイコパスにおける誕生と再生とは、えてして歪んだものになるのです。ですから、クレタスからカーネイジへの変身は、ヴェノムとエディの共生関係とは全く異なる、ちょっと不穏なものにする必要がありました。

カーネイジをどう動かすかは、パフォーマンス・アーティストと共に探求しました。現場ではクリーチャー・パフォーマーという方にキャラクターを演じてもらい、動きの基礎を作りました。最終的にはThird Floor(編注:プリビズと呼ばれるシミュレーション映像の制作会社)とプリビズを行い、DNEGやイメージエンジン(編注:共にVFX制作会社)がカーネイジの動きをシミュレーションして、本体の動きや、それに付随する触手の動きに新たな次元を加えました。

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
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──シーナさんは2007年の『スパイダーマン3』にも携わっていらっしゃったと思います。2007年版のヴェノムとはどのような違いがありますか?

『スパイダーマン3』では、ラバースーツを着た役者を起用しました。今回私たちが作ったCGのヴェノムは、命を吹き込まれたエイリアン生物として、もっと面白いものになったと思います。

──おそらく元の素材映像では、トム・ハーディが1人芝居をしていたと思います。そこにVFXでヴェノムという相棒を加えていく過程はいかがでしたか?

トム・ハーディは“まっさら”なキャンパスとして素晴らしいものを作ってくださいました。彼のエディ役の演技のおかげで、コメディらしさや、ヴェノムの動きがより引き立ちましたね。

今作ではCGキャラクターが“主演俳優”になります。トム・ハーディもそのことをよく理解されていました。彼は、ヴェノムとのやりとりをエディとしてどのように感じ、どのように考えているかを説明してくれて、非常に助かりました。

最終的に、私たちのアニメーションが引き立ったのはトムの演技のおかげです。ですから、彼が頭で何を考えているのか、ヴェノムの動きをどう想像していたかを把握しておくことが、ものすごく重要でした。彼はイヤフォンを装着して、自分の声で予め収録したヴェノムの声を聴きながら、エディ役とヴェノム役の一人二役をこなしていたんですよ。

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ
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──シーナさんは、映画の完成版をスクリーンで観るまで不安を覚えますか?

いえ、全く。制作の過程で映画を見て改良しているわけですから、完成前に何度も何度も観ているんです。お客さんと一緒に観る時は、いつもワクワクしていますよ。

──『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』について、知っておくと面白い豆知識はありますか?

新型コロナのロックダウン期間中、イギリスとニューヨーク、トロントで追加撮影を行ったんですが、実は同じシーンにいるはずの役者たちがそれぞれ別の国で演技をしているんですよ。その繋ぎ目が感じられないように、プリビズとテックビズ(techviz)で入念に調整していました。


『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は、2021年12月3日公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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