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『ヴェノム』R指定版は存在せず ― 当初からPG-13を想定、「できるだけハードな映画に」

ヴェノム
©&TM 2018 MARVEL

マーベル・コミックのダークヒーロー、ヴェノムを主人公とする初めての単独映画『ヴェノム』に、少なくない観客から期待されていた“R指定版”が存在しないことがわかった。ルーベン・フライシャー監督やプロデューサー陣は、もとより本作がPG-13指定の映画として企画・制作されていたことを明かしている。

PG-13指定の中で「できるかぎりハードな映画に」

人間に寄生し、鋭い牙を剥き、人間を文字通り“喰う”。そんなヴェノムの実写映画化にあたって、世界中のファンは『ヴェノム』に、『LOGAN/ローガン』(2017)や『デッドプール』シリーズに近いR指定をいとわない残酷描写、暴力描写を期待していた。しかし米国において、本作はPG-13指定(13歳未満の鑑賞には保護者の指導が望ましい)を受けている。これを受けてファンの間では、“スタジオの意向で残酷描写がカットされたのではないか”との推測も生じていた。

このたび米Comicbook.comの取材にて、『ヴェノム』のプロデューサーであるマット・トルマック氏は、「みなさんに“R指定版は存在するんですか”とお尋ねいただくんですが、存在しないんです」と明言。同じくプロデューサーのアヴィ・アラッド氏、そしてルーベン・フライシャー監督は、本作をR指定作品にすることは検討すらしていなかったことを明かしている。

サム・ライミ監督による『スパイダーマン』3部作や『アメイジング・スパイダーマン』2部作、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)に携わった重鎮プロデューサー、アヴィ・アラッド氏は、R指定を回避して多くの観客が楽しめる映画にすることを意図したと語った。

「R指定は検討する対象にもなりませんでした。R指定でなければ、そのほかの観客や若い観客も(映画を)観られますよね。1994年にアニメ版(スパイダーマン)を作った時、ヴェノムをたくさん登場させました。(当時)暴力描写を入れる理由はありませんでしたね。[中略]現在では、CGなどでヴェノムが人の頭を食いちぎる場面を作ることはできます。でも、(食いちぎった頭を)あちこち飛ばして“ああ、美味かった”みたいな場面を見せる必要はないですよね。それとこれとは別問題ですから。大事なのは、“悪い奴だよね”ってことを最終的に理解してもらうことなので。」

ヴェノム
©&TM 2018 MARVEL

アラッド氏と非常によく似たメッセージを発しているのは、『ヴェノム』の監督を務めたルーベン・フライシャーだ。

「この映画について、PG-13にする以外の話はしませんでした。以前、とことん暴力的にしたかったとお話ししましたが、僕は個人的に、“PG-13指定でどこまでできるのか”という点で『ダークナイト』を大きな参考にしていたんです。あの映画では鉛筆が男の額に刺さるでしょう。そこで、PG-13の映画でも頭を食いちぎることはできると思ったんですよ。」

こうした発言から推察されるのは、『ヴェノム』がPG-13指定というレーティングの中で“限界を攻める”アプローチになっていることだろう。R指定版の存在を否定したトルマック氏は、映画『ヴェノム』を「コミックやキャラクターに忠実な映画にしたい、同時に13, 14歳でも観られる映画にしたかった」と述べている。

「(コミックに忠実かつレーティングを下げるということに)私たちは適切に向き合わねばなりませんでした。イングランドでは15指定(編注:15歳未満鑑賞禁止)になったんですが、それはファミリー映画を作りたかったわけではないからです。できるかぎりハードな作品にしたかったですし、見やすい作品にもしたかった。常にそういう目標があったんです。」

ちなみにフライシャー監督は、以前、本作のR指定版を含む“完全版”が追って登場することについては「どんな可能性も否定しません」と述べていた。しかしスタジオや監督がPG-13指定を前提としていた以上、劇場公開版から残酷描写が大幅に削除されたということは考えづらいだろう。果たしてどんな暴力表現が飛び出すのか、その創意工夫に注目したい…!

映画『ヴェノム』は2018年11月2日(金)より全国ロードショー

『ヴェノム』公式サイト:http://www.venom-movie.jp/

Source: Comicbook.com

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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