【考察】『ヴェノム:ザ・ラストダンス』予告編の謎ポイントについて

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の直後から始まる?
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』予告編映像の冒頭で、エディは『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』と同じ服装で暗い路地を歩いている。手前の壁には”NO TE PIERDAS”と落書きされているが、これはスペイン語で「見逃すな」という意味だ(ファンに対する何かのメッセージなのか?)。
この場所は、『レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の安宿から転送されるまでに見えていた雰囲気と似ている。おそらく元の世界に戻されたその足の場面だろう。
その後、チンピラたちを相手に戦うシーンでも同じ服装が続いている。エディはアース616からワケもわからず戻されたまま、チンピラたちに絡まれたという可能性がある。理解のできない事象に見舞われたばかりのエディは、いくらか苛立っていたかもしれない。
キウェテル・イジョフォーが訪れたバーはどこのユニバース?
続いて登場する研究施設の場面では、キウェテル・イジョフォーが演じる軍人が姿を見せる。イジョフォーといえばMCU(アース616)で、ドクター・ストレンジのライバルであるバロン・モルドを演じているが、今回の役は全く別キャラクターであると仮定しておこう。

最大の謎は次のシーンである。イジョフォーによる軍人は、『ノー・ウェイ・ホーム』おまけシーンに登場したバーでシンビオートを回収している。言わずもがな、このバーはアース616のはずだ。バーの店員も同一人物で服装も同じように見えるが、今回は髪が伸びている。
これが一体何を意味するのか、いくつかの仮説を考えてみよう。
まず、イジョフォー登場場面はアース616で起こっていることという可能性。つまり『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、ヴェノムのいるユニバースと、アース616での出来事が並行して描かれるということだ。ただし予告編では、イジョフォーがヴェノムに迫るような描写があるので、彼も二つのユニバースを跨ぐという展開が必要になる。また、アース616ではイジョフォーによる軍人とモルド、同じ顔をした二人が存在するということにもなるので、いずれにせよ非現実的だ。
次に考えられるのは、今回のバーが『ノー・ウェイ・ホーム』時とよく似た、しかしヴェノムの世界のバーであるということ。つまり、マルチバースの不思議によって二つのユニバースに偶然同じようなバーが存在しており、自分の世界に戻ったエディがそのバーを訪れたという可能性だ。「このバー、見覚えがあるぞ」とか、「兄ちゃん、石が好きな紫のエイリアンの話をしてくれたよな?え?俺に見覚えがない?」とか、エディはそんなことを言ったかもしれない。
あるいは、本作でマルチバースに関する新たな定義が提唱されるものと想像してみよう。彼らがアース616のバーを訪れた時、彼らの生き霊か、形状学的な概念のようなものが、同じようにヴェノム世界のバーにも現れていたという考え方だ。通常、ひとつの個体が複数のユニバースに同時に痕跡を残すことはないのだが、ヴェノムの場合、「800億光年の彼方の集合精神と知識」とリンクするシンビオート世界の生体なので、なんらかの不可思議によって元の世界にも肉体の一部が同時発生したのかもしれない。
別の説は ──悲しいかな、これが最もあり得そうなのだが──、単なる矛盾ということだ。今お話しした説は、どれもややこしすぎる。
そもそもソニー・ピクチャーズの『スパイダーマン』シリーズに、緻密なユニバース設計を期待しすぎない方が良い。『モービウス』の予告編にサム・ライミ版デザインのスパイダーマンのグラフィティが登場しながら本編では消えていたり、なぜか『モービウス』の世界にバルチャー/エイドリアン・トゥームスが転送されて打倒スパイダーマンが示唆されたり(その世界にスパイダーマンが存在するとは語られていない)、いくつかの設定矛盾もあるからだ。ソニー・ピクチャーズは、スパイダーマンとマルチバースというアイデアの周辺で弄んでいるようなのだ。