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『ヴェノム』はこうして生み出された ─ トッド・マクファーレンが語るスパイダーマン裏話、映画『スポーン』近況も

『ヴェノム』トッド・マクファーレン/ "Venom"  Todd McFarlane

スパイダーマン最大の宿敵として人気のダークヒーロー『ヴェノム』は、単独映画の成功で今やワールドクラスの人気者となった。怪物のように恐ろしい風貌と、衝動(と食欲)にまかせた破壊的なキャラクターながら、まったく憎めないキャラクターが人気を呼び、映画は日本、全米、中国などで初登場1位の大ヒット作となり、世界中でヴェノム旋風を巻き起こした。

ヴェノム
©&TM 2018 MARVEL

THE RIVERでは、1988年のコミック「The Amazing Spider-Man #300」で本格初登場を果たしたヴェノムを創り上げた生みの親のひとりであり、偉大なコミック・アーティストとして尊敬を集めるトッド・マクファーレン氏への貴重な特別インタビューに成功。なぜヴェノムは生み出されたのか?トッドは、ヴェノム生みの親として映画をどう観たのか?ファンからマニアまで必読のエピソードをたっぷり引き出した。

また、トッドと言えば、同じく原作を手がける大人気シリーズ『スポーン』再実写化の動きで世界中から熱い視線を浴びているところだ。未だ闇の中で復活の時を待つ『スポーン』の近況についても聞き出しているので、お見逃しなく。

『ヴェノム』トッド・マクファーレン/ "Venom"  Todd McFarlane
トッド・マクファーレン。

ヴェノム誕生のキッカケは、トッドのワガママだった?

── そもそも、原作コミックのヴェノムはどのようにして生まれたのでしょうか?

ヴェノムは、コミック『Amazing Spider-Man』のヴィランとして産声を上げました。僕がスパイダーマンのアーティストとしてマーベル・コミックスに参加したころ、ピーター・パーカーはブラックコスチュームを着ていたんですね。でも、僕は描きたくなかった。黒いスパイダーマンなんて、スパイダーマンじゃないと思っていたから。スパイダーマンといえば、やっぱり赤と青のコスチューム。だからマーベルに、ブラックコスチュームじゃなくてもいいなら描きたい、と伝えたんです。でも彼らはブラックコスチュームを気に入っていたみたいで。だから、”じゃぁピーター・パーカーからブラックコスチュームを外して、別のキャラクターを作りますよ。そうしたらブラックコスチュームも存続するし、ピーター・パーカーは赤と青のコスチュームになりますよね”って提案したんですね。マーベル・コミックスも賛成しました。

僕はスケッチに取り掛かり、ブラックコスチュームを大きなモンスターの様に描きました。エイリアンや、クリーチャーのようにしたかった。目は大きく、姿勢は猫背で、爪と大きな口がある。舌は、最初の頃は今みたいに分厚くなかったですね。

そのデザインをライターに渡して、ヴェノムという名前が出てきました。後になって、ヴェノムの中にエディ・ブロックが入るから、これはモンスターというわけではないと言われまして。”いや、デザインしたときはモンスターのつもりだったんですけど”って。デザインの変更はしたくなかったので、”じゃぁ、エディ・ブロックを呑み込むっていう設定にしましょう”と。そうすれば、ヴェノムの身体をデカいままにできる。インクレディブル・ハルクみたいな感じですね。ブルース・バナーが巨大化するような。マーベルも”いいですね”と。それに、ヴェノムを大きくしたのには狙いもありました。ピーター・パーカー/スパイダーマンが拳で倒せないような、やっつけるには知恵も必要になるようなキャラクターにしたかったんです。

つまり、もしもトッド・マクファーレンという若きアーティストがそのままブラックコスチュームのピーター・パーカーを描いていたら、ヴェノムは存在していなかったかもしれません。僕がワガママで(黒いスパイダーマンを)描きたくなかったから、ヴェノムというクールなキャラクターが生まれたというわけです。

『ヴェノム』トッド・マクファーレン/ "Venom"  Todd McFarlane
若き頃のトッド・マクファーレン。

── 最初にヴェノムのデザインを描き上げた際、どんなことを意識していたのですか?

とにかく身体が大きいキャラクターにすることにはこだわりました。なぜなら、スパイダーマンがスイングして蹴り飛ばしたり、クモ糸で縛り上げて牢屋送りにできるようなキャラクターにはしたくなかったからです。それではヤワすぎる。だから身体をデカくしたんです。僕たちがサイと対峙した時と同じですよ。押そうとしても、デカすぎて、重すぎて無理ですよね。もし押そうと思ったら、知恵を使って上手いやり方を考えなくちゃいけない。ヴェノムの創造も同じです。ピーター・パーカーが頭を使わないと敵わない、パンチも通用しないような相手です。

僕は『ヴェノム』のストーリーを執筆しているのではなく、(絵を)描いているわけなので、アートの見た目を面白いものにする必要がある。小さくて細身のスパイダーマンという男が、ヴェノムという巨大な怪物の前で”さて、どうやって倒せばいいんだ”と立っている画は面白いだろうと思いました。その展開の答えをライターに委ねるのは楽しかったですね。上手い倒し方を考えるのはライターの仕事で、僕はただ描くだけ。

トッド版スパイダーマン裏話

── トッドさんがスパイダーマンのコミックスを描かれていたときのことを、詳しく教えてください。

スパイダーマンのコミックスを描いていたときは、先程もお話したように赤と青コスチュームのクラシックなスパイダーマンを描きたかったんですね。でも同時に、これまでに他の方がやったことの繰り返しはやりたくなかった。

あまり理解されていないと思うんですが、アーティストやライターって、ずっと部屋にひとりで座っているわけですよ。誰とも話さないし。だから机の上で仕事をするときは、自分で自分を楽しませなきゃいけない。スパイダーマンに取り掛かるときも、”どうすれば、締切を守って楽しく描けるかな?”って考えるわけです。で、簡潔に言うと、いままではスパイダーマンの〈マン〉の要素が押し出されていたなと思って、”いやいや、僕は〈スパイダー〉の要素を押し出そう”って。僕は、コスチュームを着た途端にもう彼は〈マン〉(=人間)じゃないものだと考えました。だから不思議なポーズを取らせてみたり、目のデザインを大きくして虫のような見た目にしてみたんです。クモ糸もたっぷり使って、より〈スパイダー〉っぽく。そうしたら自分でも楽しくなってきて。

でも、ちょっとトラブルもありましたよ(笑)。マーベル・コミックスは、このアイコニックなキャラクターに手を加えて欲しくなかったんです。まぁ、僕はただ楽しく描きたかっただけで。しかし幸運にも、コミックスの売上も右肩上がりになりまして。ファンの皆さんのおかげで、僕が望む形のままでスパイダーマンとの仕事に携わり続けることができたんです。

でも残念ながら、しばらくしてからマーベル・コミックスに止められてしまいました。そこまでクリエイティブになるのは止めて欲しいって。僕も疲れちゃって、退くことにしたんです。残念でした。描いていて楽しいキャラクターですし、今でも恋しいです。

── 最近はどのような活躍をされているのですか?

忙しくしていますよ。キャリアの初期とはずいぶん変わりましたね。『Amazing Spider-Man』や『ヴェノム』を描いていた頃は、自分の描いたものがそのまま世に出ていましたけど、今は違う。コンセプトアートを描くようになりました。最近は僕の作品が世に出ないから、もう描かなくなったんだと思われているみたいですけど、今でも描きまくっていますよ。これから、もっといろいろなアートワークがお見せできるようになると思います。

『ヴェノム』トッド・マクファーレン/ "Venom"  Todd McFarlane

『ヴェノム』が持つ「誰もが10歳に戻って夢中になる」魅力

── 映画『ヴェノム』はどうご覧になりましたか?

ラッキーなことにワールド・プレミアに参加できたので、一般の皆さんと同じように鑑賞しました。このキャラクターを創造したアーティストとしては、とにかくこの巨大なキャラクターをスクリーンで観たかった。共同ライターは映画のストーリー要素を気にかけていましたね。僕もストーリーは気になっていたけど、とにかくカッコいい映像が観たかった。バカでかいヴェノムをスクリーンで観られればいいなって。『スパイダーマン™3』(2007)のヴェノムはデカくなかったでしょ?クリエイターとしての個人的な気持ちとしては、あれはちょっとガッカリしたんですよね。でも、トム・ハーディ版は”よっしゃぁー!僕が描いたやつにずっと近いぞ!”って。トッドとしてはハッピーですよ。

ヴェノム
©&TM 2018 MARVEL

── 『ヴェノム』は、ヴィラン(悪役)を主役に据えた初めてのアメコミ映画です。ヴィランを主とした物語において、重要なポイントとは何ですか?

ふたつありますね。まずひとつは、キャラクターの見た目がカッコいいこと。ヴェノムは最高にカッコいいでしょう?黒い姿に、大きな歯。誰もが10歳に戻って夢中になっちゃう。

それからもうひとつは、ゾッとするようなところ。礼儀なんて知らないし。平気でルールを破っちゃうようなキャラクターは愛されるんですよ。パニッシャーやバットマン、ウルヴァリンが人気者になったのも同じ理由。ヴェノムもやりたい放題だけど、自分にとっての正義を尽くしているんです。でも、周りがメチャクチャになっても気にしない。そこが他のお利口なスーパーヒーローと違うところです。そういうキャラクターは好みが分かれると思いますが、子どもたちは大好きですよね。だって、『X-MEN』でウルヴァリンが一番人気な理由も、彼が一番荒くれ者だからでしょう。ヴェノムは、ピーター・パーカー/スパイダーマンにはできないことをやる。ピーター・パーカーは、ちょっとお利口さんすぎるんだよなぁ。ヴェノムは”何だ?首をへし折ってやるぞ”って感じでしょ?そんなところが子どもたちに楽しまれるんだと思いますね。

映画『ヴェノム』大ヒットは当たり前!

── 『ヴェノム』は早くも続編が期待されていますが、続編に求めるものは?

まだ正式に決まったのかは分からないですけど、ドル箱映画になったわけですから、そりゃあ続編にも期待したいですよね。僕が観たいのは、今作の最後の方に登場したアイツです。◯◯ですよ。あのキャラクターを使うのは大正解。『ヴェノム』の次章としてカンペキです。しかも演じるのは◯◯、いい役者を捕まえましたね。◯◯とトム・ハーディの会話劇も観たいですもん。
編註:ネタバレに配慮し、伏せ字とさせていただきました。既に鑑賞された方なら、誰のことか分かるよね!

だいたい、スーパーヒーロー映画の第一作目って、オリジン(ヒーローになるまでの物語)が描かれるでしょ?映画の大部分で、キャラクターの成り立ちを描かなくちゃいけない。でも続編では、もう下準備要らずで、観客は冒頭から彼がヴェノムなんだと分かっている。だからスタートした瞬間からカッコいいことがやれますよね。みんなキャラクターについてもっと詳しくなっているし、スクリーン上での魅せ方も会得しているから。続編はさらに良いものになるだろうから、期待していますよ。

── 映画『ヴェノム』の大ヒットで、日本にもヴェノム・ファンが急増しています。ヴェノムのコスプレを楽しむ日本のファンも多いんですよ。

日本の皆さんも、世界中の人々と変わりませんよ。人間は、みんな同じものに反応する。日本でヴェノムが好かれているのも、世界中の人々が好いている理由と同じです。だって、ヴェノムはカッコいいもん!巨大な怪物がそこらじゅうを荒らして、相手をボコボコにして、圧勝する。大きな目をしていて、ビルをよじ登って、鉄もへし曲げちゃう。そんなの、12歳の大好物でしょ。だからヴェノムが日本で人気と聞いても驚きません。ヴェノムに魅力がありすぎるもん。

『スポーン』も待ってます!

── 原作を手がける『スポーン』の再映画化の方はどうですか?今はどのような状況なのでしょう?

現在は資金調達に動いています。それからスタジオ・パートナー探し。『ヴェノム』のヒットが追い風になると良いんですけどね。だって、『スポーン』の予告編に”『ヴェノム』共同クリエイターが贈る…”って出せますから(笑)。

できたら、『スポーン』もソニー・ピクチャーズ配給になると良いなぁ。そうしたら、スポーンとヴェノムが共演できるかもしれないでしょ。いつかこの2大キャラクターが出会うかもしれないんですよ。僕も監督が出来るということが証明できれば、監督もやれるかも。それが夢ですね。『スポーン』が上手くいったら、既に成功している『ヴェノム』とクロスオーバーもありえる。まぁ、10年かかるかもしれないし、有り得ないかもしれないけど、実現したら最高でしょ?

『ヴェノム』トッド・マクファーレン/ "Venom"  Todd McFarlane

── ところでトッドさん、近く来日の予定はございますか?

日本には行きたいですよ。理想は、『スポーン』を完成させて、カッコいいものを沢山お見せしたいな。出演者も引き連れてね。別に、今すぐ来日してコミックにサインすることもできるけど、もっとデカいことをやりたい。日本のためには、そっちの方がもっとワクワクするから。だから、『スポーン』が完成したら日本でプレミアをやるって約束しましょう。『スポーン』はインターナショナルにしたいから、5、6ヶ国くらい周りたいですね。


ヴェノムへの愛や、期待の新作『スポーン』の最新情報までたっぷり語ってくれたトッド氏。「最後にもうひとつ!」として、『ヴェノム』ブルーレイ&DVDの注目ポイントもこっそり教えてくれた。

「『ヴェノム』は映像特典も要チェックですよ。映画を観た方には、原作コミックを読んだことがないという方もかなりいると思います。ブルーレイ/DVDには、ヴェノムの歴史を紐解く特別映像が収録されています。これを観れば、僕トッド・マクファーレン並みにヴェノムに詳しくなれますよ!」

ヴェノム
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『ヴェノム』視覚効果ポール・フランクリンがこだわり語る

『ヴェノム』ブルーレイ&DVDは、2019年3月6日(水)発売、同時レンタル開始。2019年2月6日(水)より順次デジタル先行配信。
日本限定の完全数量限定となるプレミアム・スチールブック・エディションには、劇場公開時に話題を呼んだ特典グッズを新カラーにした「オリジナル・ミニフィギュア(巻き付くベロ付き)」クリアカラーバージョンほか特典もたっぷり。限定ブックレットには、日本屈指のアメコミライターである杉山すぴ豊氏と、当メディア「THE RIVER」の編集長・中谷直登による特別コラムも収録される。

ブルーレイ&DVDには、アクションシーンやVFXなどの撮影の舞台裏を描いたメイキング、未公開シーン集、エミネムによる主題歌「Venom」のミュージック・ビデオや、本編再生中にトリビア情報が表示される『ヴェノム』ポップアップトリビアや、実写化までをミニドキュメンタリー仕立てに描いたメイキング映像「スクリーンに飛び出したシンビオート」。ほか、2019年3月8日に日本劇場公開となる話題作『スパイダーマン:スパイダーバース』の先取り映像も楽しむことができる。

■ブルーレイ&DVDセット 4,743円+税(2枚組)
■4K ULTRA HD & ブルーレイセット【初回生産限定】 6,800円+税(2枚組)
■日本限定プレミアム・スチールブック・エディション【完全数量限定】 9,200円+税(3枚組)
発売元・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式ホームページ:http://www.venom-movie.jp/
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Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。