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「ワンダヴィジョン」は「マーベル映画6本ぶんのシットコム」 ─ 伝説的コメディへの敬意と革新の融合

ワンダヴィジョン
© 2020 Marvel

長い恋愛の末、ついに結ばれたスカーレット・ウィッチ/ワンダ・マキシモフとヴィジョン。ふたりは60年代を思わせる服装を身にまとい、夢の新婚生活を送っている……。マーべル・シネマティック・ユニバース(MCU)初のシットコムとなる「ワンダヴィジョン」は、テレビ黄金期への敬意をたっぷりと詰め込んだ野心作になっているという。米Entertainment Weeklyでは、製作陣からの貴重な証言がいくつも飛び出した。

「ワンダヴィジョン」の物語は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)ののち、ワンダとヴィジョンが郊外の町で穏やかに暮らしているところから始まる。マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は幼少期からシットコムの大ファンであり、本作に至るまでの数年間、「シットコムが社会や私個人にどれほどの影響を与えたか、忙しい毎日の息抜きとして、いかに自分がシットコムの30分間を使ってきたか」を考えたという。

ファイギ社長は「ワンダヴィジョン」に、脚本家として『キャプテン・マーベル』(2019)のジャック・スカエファー、製作総指揮として『キャプテン・マーベル』制作管理のメアリー・リヴァノスを起用。「ゲーム・オブ・スローンズ」「ザ・ボーイズ」などを手がけてきたマット・シャクマン監督は、かつて子役としてシットコムに出演していたという異色のキャリアだ。

彼らが挑んだのは、古き良きシットコムと、マーベルらしいスーパーヒーロー・アクションの融合だった。「私たちはみんな、郊外の家族のシットコムを知り、愛し、理解するように作られているんです」とはリヴァノス氏のユーモアだが、「だから予想を裏切るのが面白い」。スカエファー氏いわく、穏やかで愉快な夫婦生活を送るワンダとヴィジョンは「自分たちの力を隠しておこうとしている」のだという。「アウトサイダー同士が惹かれ合うところに魅力があります。ワンダは深く傷ついているし、ヴィジョンは好奇心でいっぱいなんですよ」

Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/48469187077/ Remixed by THE RIVER

本物のシットコム同様、スタジオに観客を入れて撮影したという逸話が示すように、「ワンダヴィジョン」では懐かしのコメディ番組らしさが徹底的に追求された。2019年夏、シャクマン監督はシットコム界の伝説的スターであるディック・ヴァン・ダイクと面会し、ファイギ社長とともに、傑作シットコム「The Dick Van Dyke Show(原題)」(1961-1966)の話をたっぷりと聞いたという。

「(『The Dick Van Dyke Show』は)身体を使ったバカバカしいギャグもあれば、時に大がかりな作品でしたが、まったく嘘っぽくなかった。どうやって作ったんだろうと思ったら、答えはすごくシンプルだった。“現実で起こらないことは番組でも起こらない”とだけ言われたんです。」

また、本作では「奥さまは魔女」(1964-1972)や「パートリッジ・ファミリー」(1970-1974)などの名作シットコムが作られたワーナー・ブラザース・ランチのブロンディ・ストリートで一部シーンの撮影を敢行。シャクマン監督は子役時代、まさにその場所で「Just the Ten of Us(原題)」(1988-1990)を撮ったことを覚えていたという。「自分自身も含め、過去のテレビの幽霊に囲まれた思いでした。感慨深かったです」とは本人の談。「ブロンディ・ストリートのような本物のストリートはない。あの嘘っぽい雰囲気が必要なんです」

こうした取り組みの成果であろう、ヴィジョン役のポール・ベタニーはシットコムの撮影にすっかりはまってしまい、「自分の人生が台無しになった。ずっとシットコムをやっておくべきだった」と笑う。また、ファイギ社長もシットコム作品としての魅力をアピールし、MCUの過去作品を観ていなくても楽しめる作品だと強調している。

もっとも、これまでにもスーパーヒーロー映画を思わぬ形で刷新してきたのがマーベル・スタジオだ。脚本家のスカエファー氏は、「ワンダヴィジョン」を「テレビ黄金時代へのラブレター」だといい、「素晴らしい番組と先人たちに敬意を払いながら新たな領域へと進む」作品だと熱意をにじませた。そして、モニカ・ランボー役の女優テヨナ・パリスは「ちょっとした番組だと思ったら大間違いでした」と自身の誤解を訂正する。「マーベル映画6本ぶんがシットコムに入っているようなものだったんです」

ディズニープラス オリジナルドラマシリーズ「ワンダヴィジョン」は2021年1月15日(金)日米同時配信。

Source: Entertainment Weekly

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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