米ワーナー・ブラザース、パラマウントと合併協議 ─ 配信サービスの一本化も視野

米国の大手メディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリーと、パラマウント・グローバルが合併する可能性が浮上してきた。現地時間の2023年12月19日、ワーナーCEOのデヴィッド・ザスラフ氏と、パラマウントCEOのボブ・バキッシュ氏が面会し、合併の可能性を協議したという。
米Axios、Varietyなどの報道によれば、合併協議は初期段階であり、実現性やその条件は不明。ワーナー・ブラザース・ディスカバリーは2022年4月にワーナー・ブラザースとディスカバリーの合併によって、またパラマウント・グローバルも2019年12月にCBSとViacomの合併によって誕生したもの。ワーナーは当時の契約上、2024年4月までは合併などに関する新たな契約を結ぶことができない。
ワーナーのザスラフCEOは、すでにパラマウント・グローバルの支配権を有するナショナル・アミューズメンツのシャリ・レッドストーン氏とも合併の可能性について協議したという。
2023年9月末の時点で、ワーナーは435億ドル、パラマウント社は156億ドルの負債を抱えている。しかし市場価値はワーナーの方が高く、時価総額はワーナーの284億ドルに対し、パラマウントは103億ドルにとどまった(12月20日時点)。ワーナーがパラマウントを吸収する可能性と、親会社のナショナル・アミューズメントごと吸収する可能性、その両方が現在は検討されているという。
ワーナーはアメリカ国内に放送網を持たず、両社の合併には相乗効果が見込まれるため、ほかの合併や事業統合よりも規制当局の監視は小さいとみられる。大きなポイントは、両社がともに保有する映画・TVスタジオの合併だ。映画部門のワーナー・ブラザース&パラマウント・ピクチャーズのほか、テレビ部門ではワーナー側にCNNやHBO、ディスカバリーチャンネル、カートゥーン・ネットワークなど、またパラマウント側にはCBSやMTV、ニコロデオンなどがある。
ワーナーには『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズやDC映画、パラマウントには『ミッション:インポッシブル』『トランスフォーマー』『トップガン』『スター・トレック』シリーズなど充実した映画群があり、さらにドラマやアニメ、スポーツ番組なども加えれば、合併の暁にはハリウッド屈指の巨大なライブラリができあがる。ライバルのNetflixやディズニープラスと戦うため、両社は配信サービス(Max、Paramount+)の一本化にも関心を抱いているようだ。
なお、今回の合併協議の背景には、ナショナル・アミューズメントのレッドストーン氏が、スカイダンス・メディアのデヴィッド・エリソンCEOに対し、自社株の売却を検討していると報じられたことがある。エリソン氏はパラマウント・グローバルを事実上解体し、スタジオ部門を分離する意志だというのだ。ただし、レッドストーン氏自身はパラマウントを解体せず、ひとつの企業として売却したい考え。こうした動きによって、ワーナー側は合併の検討を早めることになったとみられる。
Source: Axios, Variety(1, 2), The Hollywood Reporter