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ドラマ版「ウォッチメン」大胆新設定、アメリカの「人種と秩序の問題」描く ─ ロバート・レッドフォード、本人役で大統領として登場へ

ウォッチメン
https://www.youtube.com/watch?v=-33JCGEGzwU

アメコミ史上最高傑作のひとつとして名高いコミックを米HBOが映像化する、ドラマウォッチメン(邦題未定、原題:Watchmen)」について、新たな設定が明らかになった。米テレビ批評家協会のイベントにて、ショーランナーを担当するデイモン・リンデロフ氏が語っている。

アラン・ムーアが原作を執筆したコミックは、実在する歴史の陰にスーパーヒーローが実在したという“パラレルワールド”を舞台に展開する“歴史改変SF”で、ヒーローたちの多くは引退するか、政府のために活動を続けているという設定。ドラマ版は設定を現代に置き換えて、新たなキャラクターが登場する“新たな物語”として製作される

「非常に政治的な」ヒーロードラマ

いかに原作に敬意を払いつつ、現代の『ウォッチメン』を作り上げるか。デイモン氏がヒントにしたのは、原作コミックが「非常に政治的な作品だった」ことだ。

「(コミックは)イギリス人のアーティスト2人によって発表されたにもかかわらず、当時のアメリカ文化に起きていたことが描かれていました。そこで、“2019年にロシアとアメリカの冷戦に等しいものは何か”と考えたんです。そして、間違いなく、アメリカの人種や秩序の問題だと思いました。そのアイデアを『ウォッチメン』の世界に取り入れて、責任をもって描く必要がありました。」

あえて言い直す必要もなさそうだが、ドラマ版「ウォッチメン」は――原作がそうだったゆえに――非常に政治的なドラマシリーズとなる。物語の始まりは、1921年にオクラホマ州タルサで起こった暴動事件。“黒人のウォール街”と呼ばれていた、裕福な黒人たちが住む小さな街が白人暴徒によって破壊され、300人以上が殺害された事件だ。ひとりの黒人少年が白人を暴行したとされる事件をきっかけに、白人の差別感情が一気に噴き出し、ひとつの街が消える事態に至ったのである。

デイモン氏は、「白人至上主義は打ち倒されておらず、いまだ進展が見られていません」と述べる。「簡単な答えも、大胆な解決策もないんです。いわゆるスーパーヒーロー・サーガで描かれるように成功するものでもありません」

ドラマ版の「歴史改変」とは

では、このテーマにドラマ版「ウォッチメン」はいかに挑むのか。そこでカギを握りそうなのが、『ウォッチメン』ならではの“歴史改変”要素だ。デイモン氏は物語の舞台となる2019年のアメリカについて、「私たちが知っているはずの世界ではありません」と語る。そこでは、現実の歴史と、改変された歴史とが混ざり合っているのだ。

ひとつは、俳優のロバート・レッドフォードが、1992年から2019年の現在までアメリカ大統領を務めているという設定。リチャード・ニクソン大統領が死去したのち、ジェラルド・フォードが大統領を継ぐも、1992年の大統領選でフォードは敗北。選挙に勝利したレッドフォードが、その後ずっと大統領であり続けているのだ。デイモン氏いわく、狙いは「善意あふれる白人のリベラルが、あまりに長いあいだ大統領を務めていたら何が起こるのか」

なお米FOX NEWSによれば、本作には俳優引退を宣言したロバート・レッドフォード本人が登場するとのこと。ただし、どのような形での登場となるかは明かされていない。

そしてもうひとつのポイントは、インターネットやスマートフォン、SNSが存在しない2019年の世界だという点だ。レッドフォード政権は、激しいソーシャルメディアの状況を知り、ユーザーが絶えずお互いを罵らずに済むようにサービスを強制終了させたという設定なのである。原作とも史実とも異なる大胆な新設定をもとに、どんなストーリーが紡ぎ出されていくことになるのか……。

原作者アラン・ムーアの反応

ところで、原作コミックを執筆したアラン・ムーアは、自作の脚色や翻案には一貫して否定的な姿勢を示し続けているクリエイターだ。デイモン氏は「アラン・ムーアは天才です。コミックの世界で、あるいは史上もっとも優れた書き手の一人だと思います」と賞賛を贈りつつ、やはりムーアがドラマ版の製作に批判的であることを明かしている。

「彼は関わりたくないとはっきりおっしゃっています。だから僕たちも、みなさんに作品を観ていただくために彼のお名前を使うことはしません。敬意を払いたいと思います。個人的には、前もって彼に連絡を取り、自分たちの作品について説明させていただきました。ですが、彼自身は作品の存在を良いとは思われていません。そのことにも敬意を払いたいですね。」

なお、デイモン氏いわく、ムーアはドラマ版について「ファック・ユー、知ったこっちゃない」という姿勢とのこと。ただしデイモン氏は、あえて「アラン・ムーアに“ファック・ユー”と言うことで、彼のパンクロック的な精神性を継いでいきたい」との旨も語っている。

ドラマ「ウォッチメン(原題:Watchmen)」は2019年10月、米国にて放送開始。日本ではBS10 スターチャンネルでの放送が予定されている。

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Sources: Collider, IW, Deadline, CBR, FOX NEWS

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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