【インタビュー】『WAVES/ウェイブス』トレイ・エドワード・シュルツ監督が語る音楽と家族 ─ 「登場人物と一体化して欲しい」

フランク・オーシャン、ケンドリック・ラマー、カニエ・ウェストなど豪華アーティストによる、現代を映す楽曲が全編を彩る『WAVES/ウェイブス』が7月10日(金)より公開となった。
監督・脚本を務めたのは『クリシャ』(2014)で全米のインディペンデント映画界の話題を集めた、トレイ・エドワード・シュルツ。『イット・カムズ・アット・ナイト』(2017)でも批評家から高い評価を獲得して、世界が最も注目する監督の一人だ。この度、THE RIVERはシュルツ監督に単独インタビューを実施。本作に込めた音楽やテーマなどについて尋ねてみた。

シュルツ監督作品に共通する「家族」のテーマ
──前作『イット・カムズ・アット・ナイト』に引き続き、ケルヴィン・ハリソン・Jr.を起用した理由は何故でしょうか?
自然の流れでしたね。ケルヴィンとは『イット・カムズ・アット・ナイト』で出会い、そこから少しずつ仲良くなりました。彼は本当に素晴らしい俳優で、お互いにまた仕事をしたいと思ったんです。なので、次回作でも必ず演じられる役があると確信してましたよ。どんな役になるのかまでは決まっていませんでしたけど、ケルヴィンには事前に伝えていました。そこからポスト・プロダクションやプロモーション活動を重ねて、さらに仲を深めることになったんです。それで、実際に『WAVES/ウェイブス』の脚本を執筆することになった時、彼を起用したいと思う気持ちが強くなったんですよ。
脚本を執筆する前にケルヴィンとカウンセリングのようなことを何度か行いました。お互いがどこでどのように育ったのか、もしくは友人・家族・恋人について。そこで、ケルヴィンとタイラーの共通点が見つかって、私の中でキャラクターが確立されたんです。ケルヴィンはタイラーにもルークにも成り得たでしょうね。ただ、彼が話してくれたことがタイラーというキャラクターに繋がったんですよ。
その後も、話し合いを重ねながら脚本を執筆して、完成した初稿を彼に渡したら、とても気に入ってくれました。絶対にタイラー役をやりたいとも言ってくれたんです。それで、撮影開始の1年前ごろにケルヴィンと再び仕事をすることに決まりました。

──本作の物語を思い付いたきっかけについて詳しく教えてください。
脚本を書き始める前までは、基本的に私の高校時代の個人的なことだったり、愛する人たちのことだったりを織り交ぜながら物語を構築しました。それと、ケルヴィンが教えてくれたことも反映してます。ただ、基本的には前々から自分の頭の中にあったものですね。とにかく、いつかは必ず作りたいと思ってました。そこから次々と描きたいことが増えて、今がその時だと最終的に考えるようになったというわけです。
──白人監督として黒人家族について描くにあたり、役者陣からの助言はありましたか?
この映画では、出来る限り詳細に物事を描く必要がありました。私が白人監督なので、本作で描かれる黒人家族が誰が見ても本物らしく見えるように、ケルヴィンから助言を貰いましたよ。例えば、「僕の父親だったら、こんな感じの喋り方をします」みたいなことですね。
あと、出演者の全員が納得するような黒人家族像を描きたかったので、間違っていると感じたり、違和感を芽生えたりする要素が含まれていないかなどはその都度、撮影前に話し合いました。私はそういう風に作品を作り上げていくのが好きなんですよ。

──シュルツ監督は一貫して「家族」に焦点を当てた作品を手掛けている印象があるのですが、それは意識されているのでしょうか?
私にも正直わかりません。自然と導かれてしまうんです。作品を重ねるごとに、「家族」について深く考えるようになって。家族は私にとって何よりも大切で、誰にとっても身近な存在ですよね。これまでに手掛けた作品は全て個人的な内容で、それこそ私の身近な出来事や人から着想を得ています。なので、「家族」という存在に魅了されて、自然と導かれていくのでしょうね。この先も「家族」に焦点を当てた作品を作り続けたいですね。