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やる気が出ない、挑戦が怖い時に読む ─ 『天才たちの頭の中』監督に聞いた「クリエイティブ」になれる方法

天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~
(c) 2018 Emotional Network

はぁ。やる気が出ない。やらなくちゃいけないのは分かっているのに、どうにもやる気が出ない。

もしくは、やるのが怖い。失敗するんじゃないか。こんなことをやるって言ったら、周りの人になんて思われるか。実行に移すのは、もうちょっと準備をしてからにしよう。


分かってる。「やりたい」とか、「やる」とか、「やらなきゃ」と言ってから、もう随分と時間が経っている。時間が経てば経つほど、自分に対する罪悪感が沸いてくる。自己承認ができなくなる。やっぱり自分は出来ないやつだって、落ち込んだりもする。気晴らしにSNSを開く。タイムラインでは、他のヤツがまた華々しい成果を報告している。みんなが「いいね!」と言っている。

はぁ。ますますやる気が出ない……。

時々、シャイア・ラブーフが「Just Do It!」と叫んでいたのを思い出す。シャイアはあの珍妙なビデオを投稿して、みんなから笑われた。でも、彼の言っていることは真理だった。世界中のレジェンド級に凄い人たち、例えばデヴィッド・ボウイとか、スティーブン・ホーキング博士、ダライ・ラマ、ネルソン・マンデラ、それから北野武なんかにも、「なぜあなたはクリエイティブなんですか?」と30年間も執念と共に聞き続けた映画監督のハーマン・ヴァスケも、全く同じことを僕たちに教えてくれたのだから、間違いない。

なぜあなたはクリエイティブなんですか

天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~
ハーマン・ヴァスケ © 2018 Emotional Network

このハーマン・ヴァスケという人も、凄い人だ。ドイツ出身で、もともとはロンドンの名門広告代理店にいた。“クリエイティブ・ディレクター”の下で“クリエイティブな案件”を産み出す“クリエイティブ部門”で働いていたハーマンは、「BMW」とか「フォルクスワーゲン」みたいなナショクラ案件をバリバリこなしていた。でも、ハーマンにも悩みはあったらしい。「クリエイティブって結局なんやねん」と。

だから、さっき書いたようなレジェンド級の人たちに会いに行って、ただ一問「なぜあなたはクリエイティブなんですか?(“Why are you creative?”)」と聞いて回った。カメラとスケッチブックを担いで、世界中だ。時にアポなし、時にぶら下がり取材でアタックしたのは1000人以上。見上げた実行力だ。その集大成を、『Why Are You Creative?』という映画にまとめた。日本では『天才たちの頭の中 ~世界を面白くする107のヒント~』というタイトルで公開中だ。このポスターを観ただけでも、そのメンツの凄まじさは分かるだろう。

天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~
(c) 2018 Emotional Network

筆者は、ハーマン・ヴァスケに会いに行った。この映画を観て、頭の中の霧がすこし晴れたような気がしたからだ。だって、この映画に登場する人たちは、みんなそれぞれの立場から「クリエイティブとは」を教えてくれるんだけど、それぞれ言うことがやっぱり独特だし、言っている内容がバラバラだったりする。てっきり、こういう人たちは「クリエイティブとは」みたいな本質を崇高に語れるもので、その語りを集合させれば、すごく尊い真理みたいなものが浮かび上がると思っていた。でも、そういうわけでもない。クリエイティブの真理に対しては、これほどの人たちであってもショートカットなぞ存在しないのだと教えてくれるのだ。

もちろん、映画に登場する107人もの凄い人達が紡ぎ出す言葉の中には、誰にでも1つは「ハッ」とさせられる考え方が混じっている。ピンポイントで気付きを貰って、大局的に納得できる。クリエイティブな面で悩んでいる人なら、観ておいて損はないドキュメンタリー映画だ。

だから筆者は監督に会ったとき、まず始めに実直に伝えた。「この映画を観た時、僕は自分自身をクリエイティブに持っていくことが出来なくて悩んでいたんです」とか、「スランプだったと思います」と。「でも、この映画がヒントと安心をくれました」と。そうしたら監督は「そう思ってもらえるのは興味深い」と答えた。

なんでも、この映画をフランスやドイツ、オーストリアで上映した時、終映後に筆者みたいな人がやってきて「頭の中で何かが塞がっている気がしていたんです。何をしたら良いのか分からなくて。でも、この作品を観て、何をすべきかアイデアが得られました」というようなことを何度か言われたらしい。

スランプを抜け出すには「全く関係ないことをやる」

それで、スランプの話を持ち出してみた。きっと何かを一生懸命やっていれば、誰もがスランプに陥ることはあるはずだ。監督も、大きなスランプにハマっちゃったことはありますか?「もちろんですよ」と言う。「それは自然なことです。そういう場面では、この作品の中でフランク・ゲーリー(建築家)が教えてくれた助言を思い出すんです。煮詰まってどうしようもない時は、美術館に出かけて絵を観るんですよ。霧が晴れて、調子も良くなる。」

監督が教えてくれた脱スランプのコツは、「Let loose」、つまり力を抜きなさいってこと。「毎日毎日、問題に直面して、解決方法が分からなくなったなら、全く関係のないことをやってみるんです。シャワーを浴びたり運動してみたり。そうすると突然、パッと何かが繋がることがある。アハ体験というやつですね。アハ!って、新しいことが思いつく。」

なるほどね。でも現実は、そんなのんびり悩んでいる暇はないでしょう。だってほら、あの仕事の納期が迫ってるし、まだ返せてないメールが山程溜まってるし……。そもそもクリエイティブになる以前に、非クリエイティブな“作業”が沢山ある場合はどうするの?切羽詰まっていて、クリエイティブになっている場合じゃないときは?

「まぁ、やることがいっぱいなのは悪いことじゃないですよ。だって、何かが何かに影響を与えることがあるでしょう。さっき言ったみたいに、関係のない別のところから相互作用的にアイデアが降りてくることもある。」

うーん、そうなんだけど。と考え込んでいると、「君の場合、大事なのはスペースを作ることだね。」このスペースって、おそらく場所的な意味合いも、時間的な意味合いも、そして精神的な意味合いもあるのだろう。

創造性(クリエイティビティ)を殺してしまう最大の敵は、破壊ですよ」と監督は続ける。「我々の創造性は、SNSや電話、メール、その他もろもろに破壊されている。みんな、何でもかんでもすぐに反応しすぎなんです。」監督の言っている“破壊”って、たぶん、邪魔とか雑念が入ることを指すのだと思う。「自分のためのスペースがあると、創造性が破壊されるところから逃れることができる。作家さんとかが良く言いますよね。朝の2時間は邪魔のされない特別な時間だって。彼らは早起きして、日々のルーティンを始める前に集中する時間を作っているんです。ルーティンも、創造性を殺します。

なるほど。じゃぁ、自分のスペースを作る方法は自分で考えるとしよう。例えば、まさに話にあるようにちょっと早起きしてみるのも定番だし、一旦すべて忘れて数十分か数時間だけオフラインになるのも良さそう。もしくは、何かタスクをこなすときに、自分の頭の中に空間を広げて、余裕をもって取り組む意識を持つのも、この場合は「スペースを作る」と言えるだろう。うん、言ってる間にクリエイティブになってきた気がする。

天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~
(c) 2018 Emotional Network

「出る杭は打たれる」を恐れず、「無謀でいい」

それから筆者は、大嫌いな日本のことわざを監督に紹介してみた。「出る杭は打たれる」というやつ。「つまり、目立ったことはやるなって言うんですよ」と苦笑いしながら意味を伝えると、監督は頷いて、「美術家のダミアン・ハーストがね、」とエピソードを引き出す。

「昔ある記者に自分の作品を指さされて”あれだったら私でも出来た”なんて言われたんですって。で、彼は”だけど作らなかったんですね“と言い返したんですよ。”あれだったら私でも出来たシンドローム”があるんですね。

プチブル(=プチ・ブルジョア、小市民)が言うんですよ。“目立ったことをやるな、やめとけ、そんなことしたらメディアやご近所さんに何て言われるか”うんぬんかんぬん。“Don’t”ばっかりで、リスクなんて冒すなって。」

どの国でも同じなんだな。「あんたには無理だから、そんなの止めときなさい」って笑うやつ。

でも結局の所、“やめとけやめとけ”って言うのは非クリエイターだけで、スーパークリエイティブな人は“やれ、いいからやれ”と言うんです。恐れは、自己検閲(周囲の反応を気にして意見を表明しないこと)に繋がる。自分の意見がなくなって、“やめとこう”となってしまう。だから、恐れに打ち勝つことです。

私はこのことを、早い段階で学びました。MoMAでも作品が展示されるジョージ・ロイス(アートディレクター)に、こんな本を頂いたんです。『George, Be Careful(ジョージ、気をつけて)』。なぜ“Be Careful”なのかと言うと、子供の頃親からずっと言われていたことなんですって。完全に『出る杭は打たれる』と同じ意味ですよ(笑)。

ジョージはこの本を開くと、ペンでこの一文を書いてくれたんです。“We’re reckless, Herman(俺たちは無謀だ、ハーマン)”。素晴らしい助言です。無謀でいいんです。」

無謀でいいんです、と言った監督の目は澄んでいた。確かに、30年かけて、偉人たちにひたすら「なぜあなたはクリエイティブなんですか」って聞いて回るなんてアイデア、無謀としか言いようがない。これが杭だったら、ニョキニョキ出まくっている。

天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~
デヴィッド・ボウイにもインタビューしている。 (c) 2018 Emotional Network

そんな監督は、『出る杭は打たれる』という言葉を「絵が浮かぶような分かりやすいメタファーですね」と笑う。「出る杭になる恐れが、自己検閲に繋がる。自分は自分なんだから、違いを恐れないことです。誰の承認もいらないんです。

ここまで話して、「どんな人でも、クリエイティブになれますか。クリエイティブって言葉は、特権ではないですよね」と筆者が確かめると、「特権ではないと思います。それ以外(クリエイティブな人以外)は切り捨てられる、ということはない」と答えてくれた。「クリエイティビティは、誰にとっても財産です。ただ、使い切ることのできる人はそういない。例えば、さっきの話ですよ。人は何かを考えたり、色々と言ったりする。ところが行動に移すのを恐れる。でも、クリエイティブな人ってのは、とにかくやるんですよ。

「だからこそ、この映画は人々を勇気づける。誰でもクリエイティブになれるんです。」監督はこう結んだ。とにかくやる。行動に移す。実際、監督はこの来日を使って、既に次の企画のために動いているらしい。きっと監督自身も、この映画を通じてクリエイティブになる大きなヒントを得たのだろう。

映画『天才たちの頭の中 ~世界を面白くする107のヒント~』は、新宿武蔵野館ほか公開中。全国順次ロードショー。今すぐヒントが欲しい、すべての人へ。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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