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やる気が出ない、挑戦が怖い時に読む ─ 『天才たちの頭の中』監督に聞いた「クリエイティブ」になれる方法

天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~
(c) 2018 Emotional Network

スランプを抜け出すには「全く関係ないことをやる」

それで、スランプの話を持ち出してみた。きっと何かを一生懸命やっていれば、誰もがスランプに陥ることはあるはずだ。監督も、大きなスランプにハマっちゃったことはありますか?「もちろんですよ」と言う。「それは自然なことです。そういう場面では、この作品の中でフランク・ゲーリー(建築家)が教えてくれた助言を思い出すんです。煮詰まってどうしようもない時は、美術館に出かけて絵を観るんですよ。霧が晴れて、調子も良くなる。」

監督が教えてくれた脱スランプのコツは、「Let loose」、つまり力を抜きなさいってこと。「毎日毎日、問題に直面して、解決方法が分からなくなったなら、全く関係のないことをやってみるんです。シャワーを浴びたり運動してみたり。そうすると突然、パッと何かが繋がることがある。アハ体験というやつですね。アハ!って、新しいことが思いつく。」

なるほどね。でも現実は、そんなのんびり悩んでいる暇はないでしょう。だってほら、あの仕事の納期が迫ってるし、まだ返せてないメールが山程溜まってるし……。そもそもクリエイティブになる以前に、非クリエイティブな“作業”が沢山ある場合はどうするの?切羽詰まっていて、クリエイティブになっている場合じゃないときは?

「まぁ、やることがいっぱいなのは悪いことじゃないですよ。だって、何かが何かに影響を与えることがあるでしょう。さっき言ったみたいに、関係のない別のところから相互作用的にアイデアが降りてくることもある。」

うーん、そうなんだけど。と考え込んでいると、「君の場合、大事なのはスペースを作ることだね。」このスペースって、おそらく場所的な意味合いも、時間的な意味合いも、そして精神的な意味合いもあるのだろう。

創造性(クリエイティビティ)を殺してしまう最大の敵は、破壊ですよ」と監督は続ける。「我々の創造性は、SNSや電話、メール、その他もろもろに破壊されている。みんな、何でもかんでもすぐに反応しすぎなんです。」監督の言っている“破壊”って、たぶん、邪魔とか雑念が入ることを指すのだと思う。「自分のためのスペースがあると、創造性が破壊されるところから逃れることができる。作家さんとかが良く言いますよね。朝の2時間は邪魔のされない特別な時間だって。彼らは早起きして、日々のルーティンを始める前に集中する時間を作っているんです。ルーティンも、創造性を殺します。

なるほど。じゃぁ、自分のスペースを作る方法は自分で考えるとしよう。例えば、まさに話にあるようにちょっと早起きしてみるのも定番だし、一旦すべて忘れて数十分か数時間だけオフラインになるのも良さそう。もしくは、何かタスクをこなすときに、自分の頭の中に空間を広げて、余裕をもって取り組む意識を持つのも、この場合は「スペースを作る」と言えるだろう。うん、言ってる間にクリエイティブになってきた気がする。

天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~
(c) 2018 Emotional Network

「出る杭は打たれる」を恐れず、「無謀でいい」

それから筆者は、大嫌いな日本のことわざを監督に紹介してみた。「出る杭は打たれる」というやつ。「つまり、目立ったことはやるなって言うんですよ」と苦笑いしながら意味を伝えると、監督は頷いて、「美術家のダミアン・ハーストがね、」とエピソードを引き出す。

「昔ある記者に自分の作品を指さされて”あれだったら私でも出来た”なんて言われたんですって。で、彼は”だけど作らなかったんですね“と言い返したんですよ。”あれだったら私でも出来たシンドローム”があるんですね。

プチブル(=プチ・ブルジョア、小市民)が言うんですよ。“目立ったことをやるな、やめとけ、そんなことしたらメディアやご近所さんに何て言われるか”うんぬんかんぬん。“Don’t”ばっかりで、リスクなんて冒すなって。」

どの国でも同じなんだな。「あんたには無理だから、そんなの止めときなさい」って笑うやつ。

でも結局の所、“やめとけやめとけ”って言うのは非クリエイターだけで、スーパークリエイティブな人は“やれ、いいからやれ”と言うんです。恐れは、自己検閲(周囲の反応を気にして意見を表明しないこと)に繋がる。自分の意見がなくなって、“やめとこう”となってしまう。だから、恐れに打ち勝つことです。

私はこのことを、早い段階で学びました。MoMAでも作品が展示されるジョージ・ロイス(アートディレクター)に、こんな本を頂いたんです。『George, Be Careful(ジョージ、気をつけて)』。なぜ“Be Careful”なのかと言うと、子供の頃親からずっと言われていたことなんですって。完全に『出る杭は打たれる』と同じ意味ですよ(笑)。

ジョージはこの本を開くと、ペンでこの一文を書いてくれたんです。“We’re reckless, Herman(俺たちは無謀だ、ハーマン)”。素晴らしい助言です。無謀でいいんです。」

無謀でいいんです、と言った監督の目は澄んでいた。確かに、30年かけて、偉人たちにひたすら「なぜあなたはクリエイティブなんですか」って聞いて回るなんてアイデア、無謀としか言いようがない。これが杭だったら、ニョキニョキ出まくっている。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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