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なぜ『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』は世界中の観客に“刺さる”のか?

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
(C) 2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights (C) J.K. Rowling

小説『ハリー・ポッターと賢者の石』(静山社刊)がイギリスにて刊行された1997年から21年。同名の映画版が公開された2001年から17年。当時まだ生を受けていなかった子どもが成人を迎えるほど、あるいは高校を卒業するほど長い期間にわたって『ハリー・ポッター』は世界中の観客に愛されてきた。小説の完結後も性別や年齢を問わずに人気は高まりつづけ、映画版シリーズが『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2011)で完結したあともメディアミックスは積極的に実施されてきたのである。

“ハリー・ポッター魔法ワールド”は、のちに『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)としてスクリーンに戻ってきた。『ハリー・ポッター』の前日譚としての『ファンタスティック・ビースト』はファンの心をわしづかみにし、新たなファンを獲得して、2年後の今年(2018年)、第2弾『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』でさらなる展開を見せる。

しかし、なぜ『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』はこれほどまでに世界中の、しかも幅広い層の観客に“刺さる”のか。小説の原作者であり、『ファンタスティック・ビースト』の脚本を手がけるJ・K・ローリングは何を描いてきたのか。映画シリーズのプロデューサーであるデヴィッド・ハイマン氏がその核心を明かした。

ハリー・ポッター
『ハリー・ポッターと賢者の石』Blu-ray&DVD発売中 TM & © 2001 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights © J.K.R.

よそ者(アウトサイダー)という感覚

LRMのインタビューにて、デヴィッド氏は「世界中にいるファンのみなさんを素晴らしいと思っています」と述べている。そして、かつて映画版『ハリー・ポッター』の完結編『死の秘宝 PART2』がお披露目された際のエピソードをこう振り返った。

「あの作品はトラファルガー広場(編注:イギリス・ロンドンの有名な広場)でワールドプレミアを行ったんですが、世界中からファンのみなさんが集まってくださいました。なかには一週間も野宿してくださった方もいて。J・K・ローリングの生んだ世界、彼女の書いたキャラクターは人々と通じ合って、深く心に響くんですよね。」

その理由について、デヴィッド氏は、J・K・ローリング作品の登場人物に共通するポイントを挙げた。いわく、『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』に登場するキャラクターは「ある意味で全員が“よそ者(アウトサイダー)”」だというのだ。

私たちはみんな幸せな結婚をするかもしれない、人との間に幸せな関係を築くかもしれない。私たちはそこに大きな価値を置きながら、孤独だったり、まるで自分をよそ者のように感じていると思います。彼女はそのことを描いてきました。
彼女の描く人物には真実があります。みなさんがイギリス人でもアメリカ人でも、イギリス系アメリカ人でも、日本人でもブラジル人でも、また異性愛者でも同性愛者でも、男性でも女性にも、若くても年をとっていても、彼女(ローリング)と通じ合ってきたのは、彼女が真実を語っているからです。私たち全員に語りかけているから、世界中のみなさんが飽きずに楽しんでくださるんですよ。」

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
©2017 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights © JKR.

“よそ者(アウトサイダー)”という共通点は、両シリーズにおいて非常に重要な指摘といえるだろう。たとえばハリー・ポッターは伯父伯母たちにはまぎれもない邪魔者として扱われ、ホグワーツに入学したあとも「選ばれし者」ゆえの孤独にさいなまれ、ときには試練と向き合ってきた。『ファンタスティック・ビースト』の主人公ニュート・スキャマンダーも、魔法動物をこよなく愛する性格などから「変わり者」と呼ばれている。二人の主人公以外にも、多くの登場人物には必ずしも安定しないアイデンティティが描かれており、それは社会や周囲との関係性のなかであらわになってくる。それは物語の悪役ですら同じなのである。

J・K・ローリングが描いているのは“他者との関係性を求めながらもどこかに孤独を抱えた人々”であり、それこそが国籍や性別、世代や指向性を超えて人々の心に“刺さって”きた……。このように理性的に分析するデヴィッド氏は、シリーズを愛するファンの姿勢について、このように付け加えている。

「みなさんの感覚は鋭くて、『ハリー・ポッター』に忠実です。私たちが原作に変更を加えると、いつも連絡をいただきます。素晴らしいファンの方々ですよ、非常に寛容、かつ情熱的で。」

最新作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は、果たして2018年を生きる私たちにどのように刺さるのか。約20年にわたって時代と併走してきた、現代ポップカルチャーを代表する人気シリーズの最新形がまもなく日本に上陸する。

映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は、2018年11月23日(金・祝)より全国ロードショー

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/fantasticbeasts/

Source: LRM

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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