三世代の女たちの理想と現実を淡々と描く『幸せを追いかけて』レビュー【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016上映作品】

埋めようとしても埋らない理想と現実とのギャップ

 

誰だって、理想と現実の狭間で悩み、揺れ動くものだ。

年齢とともにギャップは飛び越せないほど大きく深くなり、
理想は遠くかなたへ消え去るばかり。しがない現実を受け入れることになる。

この作品に登場する三人の女性もしかり。

まだまだ夢見る夢子ちゃんな文学を学ぶ女子大生シグリ
著名な年上の作家と出会い、夢想は広がるばかり。

方や、弾丸前衛アーティストのトリーネは出産間近にもかかわらず、住む場所すらない
崖っぷち状態。しかし、たとえ現実は厳しくても、理想の追求はあきらめない
そのタフネスぶりはあっけに取られるほど。

困窮のトリーネを救ったのは、老いをひしひしと感じる中年女性アグネス
梱包会社で働く日々に追われ、作家になる夢もどこへやら。

そんな世代の違う三人の女性たちの姿を描くことで、
理想と現実のギャップの差をまざまざと突きつける。
自分に照らし合わせてみて、痛いなぁと感じる人もいることだろう。

 

 

おっぱいはかく語りき

シグリの若き美乳を朝のまばゆい光から隠すのは男物のダボシャツ。
トリーネのおっぱいがデカいのは赤ん坊のため。肝心の乳は出なくても、ゲージュツには一役買う。
まさかのアグネスのおっぱいの強烈パンチにノックアウト!目が点。参りました。

たかがおっぱいと言うなかれ。女性の象徴であるおっぱいが女の人生を語っているのだから。

映画の語り部となるシグリのシーンは幻想的な映像を織り交ぜているのに対して、
トリーネは住居や金銭問題、子供の養育と頭を悩ませる現実を露にし、
アグネスにいたっては、トイレットペーパーについた血を見て
「ガンだわ」と嘆かせる。避けようのない現実だ。

 

現実と夢想を交錯させる映像の美しさ

おとぎの国のような雰囲気をかもし出しているノルウェーの街並み。
まるでカラフルなマッチ箱を並べたみたいにカワイイ。
文字のデザイン、色使い、絵画の使い方、浮遊するクラゲ、蝶の孵化、
アニメーションで作った小鳥がさりげに画面を飛ぶ。
隅々まで抜かりなく巧みな構成の映像は瑞々しく美しい。

監督はノルウェー・テレビ賞を獲得したことのある、
テレビ畑出身のイングヴィル・スヴェー・フリッケ。
本作が初長編監督作品となる。

 

原題は Women in Oversized Men’s Shirts

幸せを追いかけて_sub

『幸せを追いかけて』 (C)Motlys AS

 

『ダボダボの男物のシャツを着ている女性たち』
それが、どんな状況なのかは想像すれば分かるはず。

これはシグリの書く詩のテーマであり、彼女の現実でもある。

語り口は淡々。なのに随所でクスリと笑える。
女たちの背後にある現実はピリリと辛いが、愛おしさも隠せない。

「世界の人の半分は女性なのよ」と赤ん坊をあやしながら言うアグネス

男性にも、見てもらいたい作品。

 

 

『幸せを追いかけて』 (C)Motlys AS

About the author

マイ・ベストは中年ロックンローラが再起する『スティル・クレイジー』SF・ミステリー・英国・カルト映画。ホラー狂。酔狂。

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