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【レビュー】映画『イエスタデイ』で感じた、『シング・ストリート』とは別の青春の在り方

映画『イエスタデイ』評価・感想

ノルウェーの作家 ラーシュ・ソービエ・クリステンセンのベストセラー小説「Beatles」の映画化。
1967年 ノルウェー オスロ
ビートルズに憧れる高校生 キム(ルイス・ウィリアムズ)は、楽器や機材などを持ち合わせていないため 友人達と4人でビートルズになりきりレコードを聴く日々を送っていた。
そんなある日、偶然映画館で出逢い 唇を重ねたニーナ(エッマ・ウェーゲ)に恋をするキム。
住所も連絡先も聞けぬまま別れてしまった彼女へ想いを募らせる中、転校生の美少女 セシリア(スサン・ブーシェ)をヘビから救ったことで 2人の距離は徐々に縮まっていく。
友情 恋 挫折、誰もが通ってきた青春時代の1ページを描いた作品だ。

高校生 バンド ボーイミーツガール
これらの要素から、今年大ヒットした「シング・ストリート 未来へのうた」が頭に浮かぶ人がいると思う。
ぼくはそうだった。

コナー達と比べたら、キム達の輝きは淡い
輝きと呼ぶには相応しくないかもしれない。

だが、ストーリーを追っていく内に気が付いたことがある。

シング・ストリートには、ありえそうだけどありえないことが ありえないけどありえそうなことが
ファンタジーの領域と紙一重にあるリアリティが描かれていた。

もしかしたら私にも!
あの時ああしていたらぼくにも!
そんな風に思えてしまう絶妙な匙加減のリアリティがあった。

自分が通ることのできなかった道に対する憧れや後悔
そこに絶対的な歌の力 家族の繋がり 恋 夢が加わることによって、今年度最強と言っても過言ではない青春映画となっていた。

今作にはそれらに匹敵する要素が欠けている。
彼らは至って普通の高校生で、飛び抜けた音楽センスも持ち合わせちゃいない
すべてをバンド活動に捧げるだけの覚悟を持って打ち込んでもいない。
運命的な恋だと思っていたのに、カンタンに別の誰かを好きになる。

上手くいかないことばかりで
それでも自分達は何でもできるような気がして
それなりに頑張っても やっぱり上手くいかないことの方が多くて
そんなんでも信頼できる友達がいたら意外とへっちゃらで

現実を打破できるようなセンセーショナルな出来事も
非現実の扉を開けてくれるようなミラクルな出来事も中々起こらない。

それは、あなたやぼくが送ってきた青春時代と似てはいないだろうか。

ごく普通の青春
好きなアーティストがいて
好きな人がいて
友達がいて
友達の兄ちゃんなんかがカッコよく見えて
悪いこともしてみたい

シング・ストリートとは別の青春の在り方を
観客がより身近に感じられる青春の在り方を描いていた。

だからこそ引き込まれ、彼らに寄り添うことができた。

ビートルズという実在したアーティストの存在が
ベトナム戦争という実際に起きた悲惨な戦争が
より一層この作品の世界観をリアリスティックなモノへと変えていく。

学生時代、L’Arc〜en〜Cielが大好きだった。
でも、hydeにはなれない なれっこなかった。
キムがポール・マッカートニーになれないのと同様、自分は至って普通で ちっぽけな人間でしかなかった。

ギターも弾けやしないし 歌も上手くないし 気になる娘がいてもまともに声すらかけられない。

オシャレを気にし出した高3の終わり頃、突如女子グループから遊びに誘われた。
童貞まっしぐらのぼくは、対処方法が分からず「車の免許を取るので忙しいから」と言って誘いを断ってしまった。

あの時もう少し勇気を出していたら、数ミリ位は違う世界を見ることが 違う自分になることができたのかもしれない。
今となっては知る由も無い。

劇中で彼らに訪れる選択も、きっとその程度の選択であった。

どちらかを選んだらもう一方は死ぬとか
大会に出て勝敗を決するとか
愛憎渦巻く恋愛劇だとか

そんなギラギラした葛藤などではなかった。
もっと個人的で 情けなくて みっともなくて どうしようもない想いであった。

大人になった今だからこそ、そう思えるのだと思う。
けれど、そんな小さな勇気を振り絞ることさえあの頃は困難だった。
少年 少女だった頃には、とてつもなく難しいことであった。

その勇気を一所懸命振り絞るキムに、きっと自らを重ねられる
かつての自分を重ねられる

彼を 自分を応援したくなってしまうはず。

絶賛公開中の「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years」を観た後であれば、より一層今作の時代背景を ビートルズに夢中な少年達の心を理解してストーリーを追えると思います。

ぜひ劇場でご覧ください。
あの頃のあなたがそこにいるはずです。

Writer

ミヤザキタケル
ミヤザキタケル

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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