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『君の名は。』ハリウッド版、西洋の視点で物語を再解釈へ ─ 日本側のオーダーに『メッセージ』脚本家が挑む

君の名は。
(C)2016「君の名は。」製作委員会

新海誠監督によるアニメ映画『君の名は。』(2016)のハリウッド実写映画化企画について、脚本家が現在の方針を明かした。

『君の名は。』は、日本の東京と岐阜県飛騨地方を舞台に、高校生の“身体の入れ替わり”をモチーフにしたSFラブストーリー。ハリウッドでの実写映画化企画は2017年9月に発表されたもので、プロデューサーには『スター・ウォーズ』新3部作のJ・J・エイブラムスが就任。脚本は『メッセージ』(2016)のエリック・ハイセラーが執筆する。

『君の名は。』ハリウッド実写化、日本側のオーダーとは

このたび米/Filmのインタビューで、ハイセラーは実写版『君の名は。』の進捗状況を語っている。原作となるアニメ版を「大好きな映画」だと語るハイセラーは、権利者である東宝から受けたオーダーについて述べた。

「脚色にあたっては、日本の権利者から求められていることを興味深いチャレンジだと思っているんです。アメリカでの実写映画が求められているという事実から、最高のストーリーを見つけ出さなければなりません。彼ら(東宝)は、“日本での実写映画が必要ならば自分たちで作るだろう”と言っていました。西洋の視点を通した『君の名は。』が求められているんです。」

『君の名は。』の物語は、日本の都市と地方との関係や田舎に伝わる伝承、歴史を背景にしながら、2011年に発生した東日本大震災の影響をも含んだ内容となっている。現に新海監督は、ハリウッドでの実写化が発表された際、『君の名は。』という作品について「日本に暮らす僕たちのローカルな想像力」で組み立てた映画だと述べていた。

すでにハイセラー氏をはじめとする実写版の製作チームは、ストーリーの大胆な読み替えに挑むこととなっている。すなわちそれは、“何が残っていれば『君の名は。』だと呼べるのか?”という課題が与えられているのと同じだろう。

日本の漫画・アニメ作品をハリウッドで実写映画化したケースでは、『攻殻機動隊』を原作とした『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)、同名コミックを原作とする『Death Note/デスノート』(2017)が記憶に新しい。ただしこれらの2作は、ホワイトウォッシングの問題も含めて仕上がりに賛否が激しく分かれた。ハイセラー氏による『君の名は。』は、一体どんなアプローチになるのだろうか。

(『君の名は。』の実写化には)20~30人が自分の構想を提案していたと思います。ですから、彼らにはたくさんの選択肢がありました。言えるのは、僕の構想は『ゴースト・イン・ザ・シェル』のようなものではなかったということですね。」

かつて、ハイセラーはSF短編小説の名作『あなたの人生の物語』(テッド・チャン著)を長編映画『メッセージ』として見事に脚色してみせた。またプロデューサーのJ・J・エイブラムスも、小説の映像化やシリーズの続編企画、名作映画のリメイクなどを数々成功に導いてきた人物である。おそらく凡百のリメイク企画にはならないと思われるが、果たして……。

なおハイセラーは、Netflixオリジナル映画『バード・ボックス』(2018)の配信がスタートしたほか、今後も多数の企画が待機中。脚本作業に携わったヒーロー映画『Bloodshot(原題)』は2020年2月の米国公開が予定されており、自身の手がけたホラー映画『ライト/オフ』(2015)の続編も執筆済み。さらに2018年12月時点では発表されていない長編映画2作品の脚本も完成しているほか、テレビドラマのパイロット版2作品の開発にも関わっているという。いまやハリウッドで最も忙しい脚本家の一人といってよさそうだ。

ハリウッド実写映画版『君の名は。』の撮影・公開時期は不明。監督の発表も待たれる。

Source: /Film

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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